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シリア騒乱の天王山と化したアレッポ

◆8月16日

 リビヤの戦車がよりによって対シリアの戦闘で使用されるとは、よくもよくもリビヤ問題が発生した時の、ロシアのメドベージェフ大統領(当時)の国連安保理に対する姿勢がここまで尾を引いてしまったか、という感を禁じえない。ロシアが拒否権を行使せず、棄権に回った為、NATOの戦闘参加が可能となり、リビヤは制空権を失い、カダフィ政権は転覆させられた。そして今や、そのリビヤの戦車がシリアで反アサド勢力の手中にあって、シリア軍に対して火を吹くことになったのだ。日本の将棋に似て、取られた味方の駒が敵に駒として利用されてしまったのだ。

 これで以下のデブカファイルが指摘しているように、シリアの戦闘の行方は分からなくなった。というより長期化することは避けられないだろう。相手は命知らずの聖戦主義者(ジハーディスト)の荒くれ者どもで、金に糸目をつけない湾岸君主アラブ国家がパトロンとして後ろ盾に付き、欲しいだけの武器が送られてくるし、後方は自分たちを支援してくれるトルコという中東でも強大な軍事力を有する国が控えている。

 昨日の記事で指摘された、クルド人と組んでトルコやそこから侵入する武装ゲリラに対処する、ということが考えられるが、クルド人にもやはり十分な火器が渡されることがなければ、効果は薄い。既に欧米・湾岸アラブ君主国家群・イスラエル・トルコ・アルカイダvsロシア・中国・イラン・ヒズボラ・シリアという構図の戦争であり、直接対決しているのは、この「アルカイダ系ゲリラ+亡命シリア兵士」vs「シリア正規軍・親政府民兵」である。

 この際、ロシアがシリアに対して最新兵器を供給し、大量破壊兵器の使用を抑えながら、多少時間がかかっても北方のトルコとの国境近くの反政府勢力側の安全地帯を奪還することが望ましいだろう。大量破壊兵器を使用すれば、欧米側が国連の枠外であってもシリアに対する軍事的制裁を科す口実となりうるからだ。そしてその間に、トルコ内のクルド労働者党のゲリラ活動を活発化させる戦略が対抗措置として有効だろう。サウジやカタールでの「アラブの春」運動の活発化も対抗措置として有効であるから、それを推進させるべきである。

 シリアのアサド政権が転覆するようなことがあれば、次は間違いなくイランであり、それは間違いなくロシア・中国も直接的に介入せざるを得ない事態となる。これは中東大戦争へと発展し、さらには世界大戦へと発展しかねないものになる。だからこそ、シリアの段階で欧米側の野望を頓挫させておくべきなのだ。

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●ロシア製T-62戦車で武装しだしたシリアの反政府勢力
http://www.debka.com/article/22273/Syrian-rebels-armed-with-first-T-62-tanks
【8月14日 DEBKAfile】

 シリアの反政府勢力に対する支援を行っている欧米と湾岸アラブ君主国群は軍事支援面でロシア製T-62戦車をリビヤから送ることで強化に乗り出した、とデブカファイルが報じた。アメリカのクリントン国務長官は最初の重火器の引渡しを8月13日にイスタンブールへの短い訪問時に了承した。カタールがこの戦車引渡しの費用の責任を持つ。

 オバマ政権は最初、自由シリア軍に対し、FIM-92対空スティンガー・ミサイルを供給することでトルコと合意した、と8月11日にデブカファイルは明らかにした。

 アサド政権に対する18ヶ月に及ぶ反乱で初めて8月13日、反政府勢力は肩に担げるスティンガー・ミサイルでシリア空軍の戦闘機であるMig-21をデイル・アルズール北東で撃ち落した。シリア政府は技術的問題で墜落したと主張したが、反政府勢力側は捕縛されたパイロットであるラフィク・モハメド・スレイマン大佐の写真を公開した。

 シリアの紛争はこのように序章としての新しい段階に入ったとし、デブカファイルの軍情報筋は、それはシリア領内に安全地帯を作り出すことで、これを自由シリア軍やその他のグループが防衛することになりそうだ、と報じている。

 アンカラの情報筋は、この安全地帯をシリア領内に5kmから25kmの幅でトルコとイラクとの国境沿いに作る計画をトルコが作成した、と報じている。トルコはこの安全地帯を軍事面よりも、紛争を避けて逃げてきた数万人のシリア人が難民としてトルコに侵入するのを防止することでトルコをこの難民という重荷から解放する面を重視している。

 この戦車とスティンガーは、今まで空と戦場で自由に動けたシリア政府軍の軍用機と戦車に対する防衛的聖域を生み出すことになった。 

 このリビヤからの20台のT-62戦車は先週、トルコのイスケンデルン港に陸揚げされ、自由シリア軍の標章が描かれた。これらの戦車はシリアの反政府勢力で戦車戦の訓練を受けた者たちに引き渡されシリア北方に送られた。

 デブカファイルの軍情報筋:アサドは決定的状況に直面している。シリアの反政府勢力に対する重火器の供給、スティンガー・ミサイルによるジェット戦闘機の撃墜、シリア領内にできつつある安全地帯などは、この戦闘の潮流が彼に不利になる変化をもたらす脅威となっている。

 彼があわてて逃げ出すことがなければ、彼が大量破壊兵器を使用する危険性はかつてないほど大きくなった。彼の軍が自分たちの戦闘機が敵のミサイルで撃墜され、世界のテレビ画面が空中爆発し燃え盛る破片が地上に落下する模様を映し出すのを見るという事態が続けば、アサドは戦争を継続できない。シリアが生物化学兵器を使用する可能性に備えて、イスラエル、トルコ、ヨルダンはアメリカ軍と一緒に作業するチームを作り、この大量破壊兵器による攻撃を受けるアメリカ軍の施設やこれら三国に対応策と緊急医療体制をしくようにした。

 時間が残されていないことを確認し、イスラエルのネタニヤフ首相とバラク国防相は13日の夜中から14日にかけて長い時間諮問を受け、14日の朝、元シン・ベイト長官で国内治安長官のアビ・ディヒターを自宅戦線大臣に指名した。

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