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手押し車一杯のマルクでパン一斤
アメリカ発の金融崩壊が全世界に経済問題を惹き起こしている。この対策として各国は救済と称して盛んに銀行などの金融機関に対する資金供給を続けてきている。
しかし最近とみに言及されだした、アメリカ国債の格下げなど、またインフレの可能性など、問題は一向に解決していない。
「Web of Debt(負債のくもの巣)」の著書のある、アメリカのエレン・ブラウン女史が、ワイマール共和国におけるハイパーインフレが生じた理由、またそれを見事に克服したヒトラーの経済・金融政策にスポットライトを当てた、この時代に適宜な論文が発表されたので、ほぼ全訳し掲載することにした。
政府発行紙幣の効能と私的な中央銀行の問題など、現代資本主義社会の課題・問題点などが浮き彫りにされている良質な論文である。
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●ワイマール・ハイパーインフレが再び起きるのか?
【5月19日 by Ellen Brown】
http://www.globalresearch.ca/index.php?context=va&aid=13673
「ひどいものだ。雷が落ちたみたいだ。誰も予想していなかった。店の棚は空っぽ。お金で買えるものは何もない。」フリードリッヒ・ケスラー、ハーバード大学法学教授のワイマール・ハイパーインフレについてのコメント(1993年インタビュー)
コメンテーターらは、1923年にワイマール共和国で起きたハイパーインフレーションのようなことが起きることを予想しているのではないか、と心配する向きがある。当時は、手押し車に札束を積んでもパン一斤を買うのがやっとだった。
4月29日のサンフランシスコ・エグゼミナー紙はこう警告している。
「2兆ドルに上るかつてない負債額と共に、オバマ大統領の提案する予算案はハイパー・インフレーションへの確実は処方箋になっている。だからすべての上院議員と下院議員の内、この3兆6千億ドルのモンスター予算に投票した者たちは、アメリカを2番目のワイマール共和国に突き落とすべく出費の馬鹿騒ぎにお墨付きを与えていることになるのだ」
4月9日号のマネー・モーニング紙(投資ニュースレター)の中で、マーティン・ハッチンソン氏は、現政府の通貨政策とワイマール・ドイツのそれとの気がかりな類似点を指摘している。つまり、政府出費の50%が特権、すなわちドルの印刷でまかなわれている点である。
しかしながら、データを見るとわけの分からないことがある。イギリス政府はワイマール共和国以上に、その特権(紙幣増刷)による資金作りで予算を賄っているのだ。
それにもかかわらず、ポンドは今も一定の位置を保っている。当時のドイツ・マルクはこの状況下で完全な崩壊を起こしたのだが。
ドイツ・マルクの崩壊には単に紙幣増刷以外の何か別の要因があったはずである。ではそれは何か?また今われわれは同様の脅威に晒されているのだろうか? 事態を詳細に見つめなおしていこう。
◆歴史は繰り返す? のだろうか?
ハッチントン氏は、その良く調査された論文で、ワイマール・ドイツは第1次世界大戦以降ずっとインフレで苦しめられていたと書いている。しかしハイパー・インフレが起きたのは1921年から23年までの間である。それが1923年11月に終息した時、マルクは1914年時の1兆分の1に下落していた、とハッチントン氏は述べる。
現在の政策は、1919年と1923年の間のドイツの政策を混同して反映している。ワイマール政府は戦後復興のため、および賠償金の資金作りに、増税することに消極的だった。それで財政赤字を抱えていた。
政府はインフレ率以下に金利を保っていた、と同時にマネーサプライを拡張し、紙幣増刷を政府出費の50%に増やした。
「恐ろしいのは、アメリカ、イギリス、日本は財政赤字を紙幣増刷で賄うという同じ方法を用いているということだ。アメリカでは、連邦準備銀行はT-ボンドを6ヶ月以上に渡って3000億ドル以上買い込んでいる。1年に6000億ドルとなり連邦準備銀行出費額である4兆ドルの15%分である。
イギリスでは、イギリス銀行は3ヶ月で、アメリカのT-ボンドと同じ意味を持つギルトを750億ポンド分買っている。1年で3000億ポンドでイギリス政府の出費4540億ポンドの65%となる。
このように、アメリカはワイマール・ドイツの政策(出費の50%)に近づき、イギリスはそれを既に超えている。
ここがデータが混乱するところだ。もしイギリスが財政赤字の大部分をワイマール・ドイツよりも多い紙幣増刷で賄っているとすれば、なぜポンドは9年前と同様のレベルにあるのか?
その間、米ドルは大幅な量的緩和が始まって以来、むしろ他の通貨より強くなった。政府ではなく中央銀行が増刷を行っているが、マネーサプライにおける効果は同じである。中央銀行が買い取った政府の負債が支払われることはなく、年々買い換えられていく。そして新しいお金がマネーサプライに組み込まれると、そこに留まり、通貨の希釈をすることになる。
ではなぜ我々の通貨がワイマール・ドイツで起きたように、1兆分の1の価値にならないのだろうか? 単に供給と需要の問題ならば、政府は1兆倍のマネーサプライ分を増刷しなければ1兆分の1に価値を減らすことができないだろうし、ドイツ政府もそれをしたわけではないのだ。
何か別の事態がワイマール共和国では進んでいたはずだ。ではそれは一体何か?
◆シャハトが秘密を暴く
この謎に光を当てたのはワイマール共和国の通貨全権委員のヒャルマル・シャハトだ。事実は、「失われたマネーの科学」(ステファン・ツァルレンガ)に詳しい。このツァルレンガは、シャハトは1967年のドイツ語で書いた「マネーのマジック」で、ハイパーインフレについて金融界で広まっていた従来の考え方を打ち壊すような注目すべき告白で秘密を暴いたと言っている。
戦争の時代、インフレをハイパーインフレに引っ張っていったものは、外国筋の投機であり、マルクの価値下落を予想して、空売りを行ったことにある、とシャハトは言っている。 空売りは、投資家が下落する価格から利益を得る技術だ。これはそのアセットを借りて売るということで、このアセットは後日買い戻され、元の所有者に戻されるという了解のもとに行われる。
投機家は、価格が下がるだろうということに賭け、利ざやを獲得することになる。ドイツマルクのは空売りは、私有銀行は、借り受けるための膨大な通貨を保有していたので可能であった。マルクは需要に応じて増刷され投資家に貸し出され、利率に応じて利益を銀行にもたらした。
最初は、投機は最近民営(私有)化されたライヒスバンク(ドイツ中央銀行)によって融通された、しかしライヒスバンクがそれ以上融通できなくなると、ほかの私有銀行が無からマルクを印刷する権利を譲り受け、利息をもって貸し出された。
◆皮肉なねじれ現象
もしシャハトの言うとおりならば、ドイツ政府がハイパーインフレを起こしたわけではないとなるが、しかし事態を沈静化したのは政府であった。ライヒスバンクには厳しい規制が課せられ、銀行が増刷した金をローンで簡単に借り受けて投機を行っていた外国筋を一掃するという正しい政策がすばやく採られた。
もっと興味深いことは、この話の結末である。ドイツを1930年代に元の状態に復帰させたものは、今日のコメンテーターらが、1920年代にドイツを悲惨な状態に陥らせたモノと言って非難しているその当のそのもので、政府の特権による紙幣の増刷なのだ。
エコノミストのヘンリー・C. K.リウは、この種の融資の型を「ソブリン・クレジット」と呼んでいる。彼はドイツの目を見張る変貌を書いた。
「ナチスは1933年、ドイツの権力を握るようになった。当時は破滅的な戦争賠償金支払いと、外国投資やあるいは信用貸しの見込みがない情勢の上、経済そのものが崩壊していた。しかしソブリン・クレジットという金融政策を通して、そして全雇用公共事業計画をもってして、4年間で第三帝国は、破産し植民地を剥奪されたドイツを復興させ、軍事支出をする前には既にヨーロッパでもっとも経済力のある国家へ変貌させたのだ。
ヒトラーは後になって行った非道さのゆえ当然のこと非難を受けるに値するが、彼は異常なくらい大衆の支持を、少なくとも一時期は受けていた。
これは当然のことで、彼は世界的不況からドイツを救出したし、それを政府自身が発行する通貨で支払う公共事業計画を通して行ったからだ。
プロジェクトはまず融資の割り当てから始まった。洪水対策、公共建物の修理、私有邸宅の修理、新しい建物の建設、道路、橋、運河、そして港湾施設だ。
この計画の経費は国の通貨の10億ユニットが充てられた。10億非インフレ国際手形、労働財務証券と呼ばれたものが発行されこの経費に充てられた。
何百万人という人々がこの計画で仕事にありつき、労働者らはこの財務証券で支払われた。そうすると労働者らはこの証券で商品やサービスを買い、それがより多くの人々の仕事を生み出した。この証券は非債務ではなく債務証券として発行されている。政府が持参人に利息を支払った。しかし、この証券は通貨として流通し、無期限に更新されるものだったので、事実上の通貨となっていた。そして、国際的な貸し手から借り受ける必要性、あるいは国際的負債の支払いの必要性を排除することとなった。
この財務証券は、外貨市場での取引はなされず、それで通貨投機家らの手の届かないところにあった。これは誰も売る者がいないので空売りされることがなく、価値を保持し続けた。
2年間で、ドイツの失業問題は解消し、国は元のように自立できるようになった。この国は安定した通貨を持ち、インフレはなかったが、当時のアメリカや西欧では何百万もの失業者がおり、生活保護で生きていた。外国からの貸付は拒否され、経済的ボイコットに直面したものの、ドイツは外国貿易を復活させた。
この国はバーターシステムを利用したのだ。設備や商品は直接外国と交換され、国際的銀行は迂回された。この直接交換システムは、負債を生まず貿易赤字を生み出さなかった。ドイツの経済経験は短期ではあったが、この話はその成功でいくらかの、例えば有名なアウトバーンなどの業績を残したと言える、
◆歴史の教訓:外見と中身は異なることがある。
長引く負債を清算する、そして消滅しかけている経済を再活性化するドイツのやり方は、賢かったが、これはドイツのオリジナルなものではなかった。政府が自身で紙幣を印刷し資金を作れるという考え方は、最初アメリカの入植者が考案したものだ。
イギリスの労働者らが産業革命による貧窮化した状態の中で苦しんでいた時、ベンジャミン・フランクリンは植民地(アメリカ)の素晴らしい成長と豊かさが、入植者のユニークなシステムである政府発行通貨に起因すること認めた。 19世紀、ヘンリー・クレイ上院議員は、イギリス式のシステムである、私有銀行発行の銀行券とは異なるものであることを明らかにして、このシステムを「アメリカ・システム」と呼んだ。
アメリカ独立戦争後、アメリカ・システムは銀行発行通貨によって取って代わられたが、政府発行通貨は南北戦争中は復活し、エイブラハム・リンカーンは彼の政府を、政府発行通貨である「グリーンバック」で賄った。
ドイツの2つの通貨増刷経験の結果における劇的な違いは、金はどこに投入されるのかという、使用の仕方の直接的な結果である。
物価インフレは、需要(通貨)が供給(商品・サービス)より増大するところから生じる。これは価格を押し上げるが、1930年代の経験では、新しい通貨が創造され、生産力の向上に充てられたので、供給と需要は共に増大し、価格は安定したままで推移したのだ。
ヒトラーは、「マルクが発行されれば、我々はマルクに応じた仕事や商品の生産を行うようにした」と語っている。一方、1923年のハイパーインフレの破滅的状況の中で、通貨は単に投機家に支払うために印刷されていて、これが需要増を惹き起こし、その間、供給は変わらなかった。
結果は単なるインフレでなく、ハイパーインフレだったのは、投機が狂気じみてきて、チューリップ・バブル(オランダで1637年に起こった世界最初のバブル経済事件)式の狂騒とパニックを惹き起こしたからだ。
これは、ジンバブエにおいてはその通りだった。現代版の劇的暴走インフレの例である。・・・略
◆真のワイマール脅威とそれを避ける道
アメリカ合衆国は、量的緩和方式を利用しながらハイパーインフレの森の外にいるのか? 多分、いや多分そうではなかろう。新しく創造された通貨が実態経済の発展と成長に投入される限り、特権(紙幣増刷)による融通は価格上昇を招くことはないだろう、供給と需要が共に上昇するからだ。
オバマ大統領の経済刺激パッケージのように、インフラ建設とかその他の生産的プロジェクトに量的緩和を利用することは、ベンジャミン・フランクリンが報告したような豊かさを生み出して経済を再活性化することができるだろう。
しかし現在、まずいことに1923年のハイパーインフレと似た何か別のことが進行している。
ワイマール共和国のように、アメリカ合衆国では通貨創造は私有銀行である中央銀行の連邦準備銀行(FRB)によって行われている。そしてそれは多くが、何も経済的に価値ある物を生み出すことのない、私有銀行の投機的掛け金を相殺するために行われている。 金投資家のジェームズ・シンクラー氏が2年前に「本当の問題は、20兆ドルにのぼる崩壊しそうな過剰な信用貸しとデフォルトしているデリバティブだ。ワイマール共和国のケーススタディーを深く考えよ。日ごと、それは原因と結果の繰り返しに似てきている」と警告した。
投機的意味合いの強いCDSのためAIGを通してゴールドマン・サックスに支払われるため、注入された129億ドルの救済資金は、とんでもない例のひとつである。
「量的緩和」により創造された通貨は、ブラックホールである投機的デリバティブ掛け金の支払いに吸い込まれていくのだから、我々はワイマールの道を進んでいて、警告の本当の理由もここにある。
我々はウォール・ストリートのゾンビ的ビヒモス(怪獣=銀行)を下支えをするべきだと説得されたように思っていたが、それは真実ではない。
ここに実行可能な他の選択肢があり、それは唯一つの実行可能な選択肢であることが分かるだろう。
我々は公有(国有)銀行を作り、私的投機のためではなく公共のサービスのため、合衆国とその国民の利益のため、合衆国の信頼をもってクレジットを発行することで、ウォール・ストリートをそのゲームで打ち破ることができるのだ。
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