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時代の先読み
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日本の進むべき道
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我々の心構え
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11日に殺害されたロシャン氏の車
◆1月18日
イラン人科学者のモスタファ・アハマディ・ロシャン氏が11日に車に取り付けられた磁石爆弾で殺害されたことで、イランはアメリカやイスラエルを非難してきた。また最近ではタイムズ誌がイスラエルのモサドが犯人だ、とする記事を掲載したが、イギリスのサンデー・タイムズ紙もイスラエルのモサドの犯行だ、とする記事を掲載したという。
この元は、イスラエルの情報筋、としているが、どうもイスラエル人の情報分野で仕事をしている人々の中にも、さまざまな考え方をする者たちが出てきていることを窺わせるものである。
過去2年間の似たような暗殺事件の犯人はどうやらイスラエルのモサドである、というのが常識になりつつある。アメリカもこの種の暗殺事件の疑いを掛けられることを相当嫌っている風がある。こうして各種のテロ事件の背後には実はイスラエルがいた、ということが常識になる日も近いのかもしれない。勿論、2001年の9月11日同時多発テロ事件もだ。このことが国際社会で明らかになれば、イスラエルの生きる道は本当に閉ざされることになろう。そしてその日はそう遠くはないのだ。このままでは・・・
こうして、国際社会でイスラエルの傍若無人ぶりが徐々に明らかにされ、その狂気じみたやり方に嫌気と危険を感じて、アメリカもイギリスもじりじりとイスラエルから距離を置き始めている様子が伺える。
このことは既に1月16日号の「モサドがCIAを騙(かた)って工作員をリクルート」でも指摘したことで、イスラエルの守護神であったアメリカが、オバマ大統領の下で徐々にイスラエルと距離を置き始めていることを示した通りである。
従って今年はこのイスラエルにとっても一つのターニングポイントになる年となりそうだ。アメリカ内でもイスラエルに近い勢力(軍産複合体・キリスト教原理主義者etc)とイスラエルと距離を置くべきだ、とする勢力(アメリカの愛国者らetc)とがしのぎを削り、特にイラン攻撃を軸として、熾烈な内部闘争が進められそうである。
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●サンデー・タイムズ:モサドがイラン科学者の暗殺を実行した
http://www.presstv.ir/detail/221376.html
【1月16日 Press TV】
ロンドンに本社のある新聞が、イスラエルの情報機関のモサドの工作員が先週起きたイラン人科学者殺害事件の首謀者だと報じた。
サンデー・タイムズ紙は16日、モスタファ・アハマディ・ロシャン氏の暗殺は、数ヶ月に及ぶ監視と情報収集を行って実行するという「スパイ映画」に見られる作戦に似ていたと報じた。
この新聞は、殺害はイランの核施設への攻撃の前哨戦として行われたもので、施設への攻撃の代替攻撃ではないとする匿名のイスラエルの情報筋の言葉を引用した。このイランの核施設への攻撃を一度行えば、再びイランがその施設を再建することは困難になるようイスラエルは企図している。
この報告を元に、モサド工作員らはロシャンの暗殺に適当であると考えるテヘランのキーとなる地点を注意深く観察してきた。
「失敗は許されない。当然、あらゆる失敗は工作員らの命を危険にさらすだけでなく、国際的スキャンダルになってしまう」とこのイスラエルの情報筋は語った。
サンデー・タイムズ紙の記事は、ロシャン氏が仕事に出かける準備をする際、近くの安全な家屋内の急ごしらえのコントロール・ルームからモニターされていた、と報じた。
この記事で、ロシャン氏のボディー・ガードはナタンツのウラン濃縮施設まで車の運転をしていたという。そこでロシャン氏は副マーケッティング・マネージャーとして仕事をしていた。覆面をしたオートバイに乗った人物が彼の車に接近し、爆弾を車に設置した、と報じた。
この作戦の後、アメリカはすばやく動きこの暗殺事件に一切係わっていないことを主張した。
レオン・パネッタ国防長官は、「我々は今回の暗殺事件に関してはいかなる意味においても係わっていない」と語った。
イギリスの外務省もまたイギリスは、「いかなる意味における係わりも持っていない」と述べた。
アハマディ・ロシャンはシャリフ技術大学化学工学部の卒業生でイランのナタンツ核施設のマーケッティング副部長として働いていた。
アメリカ、イスラエル、それに彼らの同盟国はイランが軍事的核計画を進めているとして非難し、繰り返しイラン政府に対して軍事的攻撃の「オプション」があると言って脅かしてきた。
2011年11月、アメリカの大統領選挙候補者の何人かは、イランの核科学者の暗殺からイランに対する軍事的攻撃、テヘランの核施設への破壊活動を含む秘密作戦を進めることを叫んでいた。
このように、暗殺を叫ぶということは、過去数年間で何人ものイラン人科学者が暗殺されてきたのを見ても、いい加減な脅しではない。
この記事によれば、ロシャン氏は最近、国際原子力機関 (IAEA) のインスペクターと会っていたという。この事実はIAEAがイランの核施設と科学者に関する情報を漏洩していたことを示唆している。
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シリアを取材したイギリス人ジャーナリスト
◆1月17日
去年の3月頃から始まったシリア内での武装勢力によるテロ活動で犠牲者が出ると、それを欧米やアル・ジャジーラなど欧米に近いメディアはシリアのアサド政権が政治改革を訴える平和的デモを急襲したためだ、とシリア政府があたかも血の弾圧を強行しているかのような報道をし続けてきた。
しかし、このブログでは、どのブログより先にそれは事実と反するということを指摘してきた。その間、エジプトのムバラク政権が倒れ、リビアのカダフィ政権が倒れ、カダフィは無残にも虐殺されてしまった。
下記は、あるイギリス人ジャーナリストのシリアでの感想が語られている記事であるが、これはダマスカスだけの話ではない。わずかにいくつかの町でテロリストの活動が活発な地域の町を除けば、シリア全土で似たような情況である。
今、シリアにはトルコとの国境線から、あるいはヨルダンとの国境線から武装勢力が浸透し武器も搬入されてきているので、シリアにおける武装テロ活動は収まるどころかますます活発化する可能性が高い。
それでもシリアの情況があのリビアのように、いやそれ以前にチュニジアやエジプトのように全面的な、一般国民が総出で政権を批判するようなデモの動きにならないのは、単に秘密警察が強いとかいうレベルの問題ではない。
本当に政権に対する強固な嫌悪感・拒否感が国民に充満していれば、あのチュニジアの一人の青年の死をきっかけに全土的な反政府デモに膨らんだようになったり、あるいはエジプトの例のようなことになるはずである。
それが去年の3月から既に一年近くになろうとしても、このイギリス人女性ジャーナリストが体験しているような実態がシリアのダマスカスにある、ということは、シリアの情況はチュニジアとかエジプトの情況とは相当違う、ということを示していることになるのである。
問題は、欧米メディアのもたらす嘘の報道であり、それを鵜呑みにする人々であり、欧米メディアの論調を真理として受け継ぐ日本のメディアの姿勢である。バイアスの掛かった見方しか出来ない情けない日本のメディアの上層部の者たちが問題である。以前も指摘したが、NHKもシリアの「政府支持デモ」を「反政府デモ」と偽って報道したことがあった。反省せよ。
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●イギリス人ジャーナリスト:シリアの情況はメディア報道と真逆
http://www.sana.sy/eng/21/2012/01/15/394292.htm
【1月15日 SANA】
イギリス人ジャーナリストのリジー・フェラン女史は、シリアで起きている出来事の情況はいくつかのメディアが報じようとしてきた内容と完璧に異なるものだ、と語った。
シリア訪問中のフェラン女史は、現地の情況を見るためシリアのダマスカスに6日前ジャーナリストとして到着してみて驚いたと語った。シリアは安全な場所ではなく混乱が支配している、また軍が道路上に配置され、反政府デモが毎日のようにあらゆる場所で行われている、というメディアによって知らされていたイメージを持っていたのだ。
彼女はシリアのテレビ番組で、この訪問で見聞したことを語り、生活が普段どおりに行われ、人々は多少の問題はあれども、いつもどおり仕事や学校に出かけている、ことを強調した。
ダマスカス市は自分が一人で夜遅く移動する際も非常に安全で、何らの問題にも遭うことはないし、大きな反政府デモも見ることは無かったと語った。
フェラン女史は、ウマヤド広場で大規模な政府支持デモを見てシリアの情況の現実に触れて驚いた、と指摘した。これは彼女にとっては、欧米その他の国々で知らされている情況と完全に異なるものだったと語った。
イギリス人ジャーナリストは、バシャール・アル・アサド大統領がウマヤド広場に来て人々に直接語るということは、「非常に興味深いこと」だという。それはBBCやアル・ジャジーラなどのテレビ局は、シリア人はアサド大統領を支持していない、としていたから、何万もの人々が広場に来て大統領を見て喜び彼に対する親愛の情と支持を表明しているのを目撃したからだ。
●シリア国民:外国の干渉を拒否しアサド政権を支持
http://www.sana.sy/eng/337/2012/01/16/394678.htm
【1月16日 SWEIDA/DEIR EZZOR, (SANA)】
政府の改革政策を支持するシャフバ市の人々の集会
スウェダ地区で南部のシャフバ市で武装勢力によりなされたテロ活動を非難し、シリアは人々が覚醒し指導部と一体となることでより強い国として興隆するだろうと叫ぶ政府支持デモが行われた。
デモの参加者はシリア国旗と横断幕を掲げ、軍を称える歌を歌い、シリアの安全保障を脅かし、シリア人の血を流した者たちを打倒するよう要請する歌を歌った。
参加者らは、誠実なシリア人は皆、一つになってシリアに対する陰謀と対決しており、彼らが集まったのはあらゆる陰謀に反対するためであり、シリアの強固な一体性を揺るがそうとする勢力に対する明確なメッセージを送るためだとしている。
彼らはまた、政府の改革プログラムを支持しており、国家の統一に対するコミットメントを表明し、シリア軍と犠牲となった一般市民に対する表敬、そしてシリアはいかなる犠牲もいとわない価値ある国家であることを表明した。
参加者らはアラブ連盟監視団が、事実を客観的に専門的に把握し、シリアの表通りの本当の雰囲気を伝えるよう要請した。
デイール・エゾールでは、シリアのブレードというグループが女性労働組合支部と共同で地区内の女性と母親たちの署名を集めるキャンペーンを実施している。
女性たちも積極的に署名活動
このキャンペーンは「シリアの母の願い」と名づけられ、独立した国家の決定を支持し、アサド大統領が指導する改革プログラムを支持し、外国の干渉を拒否するための署名を集めることを目的としている。
このキャンペーンのオーガナイザーは、この「意思」がシリア人に友好、保障、安全を維持しようとさせると語った。またこの活動は母親たちの間に、子供達が祖国を愛し対話の文化を彼らの中に植えつける必要性があるという覚醒を広めるためだ、としている。
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イスラエル兵士ら
◆1月16日
イランで核科学者らが暗殺される事件が相次ぐ中、イランがアメリカが絡んでいると言って非難している。しかし、以下の記事では、イスラエルがアメリカのCIAを騙って、イスラム系テロ組織のジュンダラから自分達の秘密作戦のため要員をリクルートし、それらを作戦に使用している、と報告されている。
アメリカとイスラエルが軍事面で協調して動く事は昔からあったが、イスラエルのモサドが自分達をCIAだと名乗って、あるいは振りをして、こともあろうにイスラム系急進派から作戦用の要員をリクルートして使っているとあっては、CIA側も黙って見過ごすわけには行かないだろう。この鉄面皮なイスラエルのやり方にさすがのアメリカ側も現場から怒りの声が上がってきている様子だ。
このブログでは既に、イスラエルが「やればやられる」のだから、気をつけるべきはイスラエルである、と指摘してきたが、彼らの守護神の立場に立っていたアメリカ様の逆鱗に触れだした感じがする。
2012年が決定的な年となろう、とイスラエルのガンツ参謀長が最近語ったが、それはイランばかりではなく、イスラエルもまたそうである、とこのブログで指摘したが、このように、イソップ童話のこうもりのような彼らの所業が明るみに出る事で、彼らの行き場が失われていくことになるのだ。アメリカのイスラエルに対する怒りがいつかは爆発する時がくるかもしれないのだから、心して待っているべきであろう。
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●モサドがCIAを騙(かた)って工作員をリクルート
http://www.foreignpolicy.com/articles/2012/01/13/false_flag?page=full
【1月13日 Mark Perry – Foreign Policy】
イスラエルのモサド要員がテロリスト・グルーの「ジュンダラ」からスパイをリクルートするのに、自分達をCIAの者だと偽ってリクルートをしていたことが明らかにされている、ブッシュ政権下の期間に書かれたメモがアメリカ情報機関内に埋もれていた。二人のアメリカの情報機関員によれば、モサド要員はアメリカ・ドルとアメリカのパスポートを示しながらCIA要員であるかのように装いジュンダラのスパイをリクルートしたという。これを通常は「偽旗作戦(false flag)」と呼ばれるものだ。
このメモを読んだ一人ともう一人この問題に詳しい者は、調査を進めホワイトハウスの指示でCIAがパキスタンのスンニー派急進派組織ジュンダラを秘密裏に支援してきた実態を暴き、それを非難している。ジュンダラは、アメリカ政府と公表された報告書によれば、イラン政府高官暗殺とイラン人女性と子供らの殺害の犯人である。
しかしこのメモは、ジュンダラと接触することをアメリカは禁止していることを示しているが、二人の情報部員らによれば、イスラエルのモサドにとってはそうではない、という。このメモはCIAの現場報告書の内容を詳しく書かれている。そこでは、イスラエルのリクルート活動は、アメリカの情報機関の鼻先で起きていたという。多くはロンドンである。そこはイスラエルの表向き同盟国の首府であり、そこでモサド要員はCIA要員と偽ってジュンダラ要員と会っていたのだ。
この二人は、イスラエルがジュンダラ要員をリクルートし利用するという計画が進められていることをしらなかった。いずれにしても彼らはこのモサドの大胆なやり口に驚いている。
「イスラエルがうまくやってのけられると考えていたことは驚くべきことだ」と情報機関員は語った。「この彼らのリクルート活動は最近は殆どおおっぴらに行われていた。彼らは明らかに我々が考えていることを気にしていなかった」と語った。
過去18ヶ月での6人の現役・退役の情報機関員とのインタビューはイスラエルの偽旗作戦の空白部分を埋めるのに役立った。二人の現役情報機関員に加えて、イスラエルの偽旗作戦は、CIA内で勤務した、ないしはイスラエルの情報機関をモニターした4人の退役機関員によって確認された。
ホワイトハウスとCIAはこの件での説明を求められている。この件が公表される時になっても、彼らからの回答はない。イスラエル情報機関のモサドもまたこの件を書状と電話で問われているが、回答を寄せていない。イスラエルはその政策として、情報作戦に関ったかどうかはっきりすることをしてこなかった。
1月11日に暗殺されたイラン人科学者のロシャン氏
イランの核計画を阻止せんとする秘密の血塗られた作戦が進められていることは隠しようもない事実である。と言って最近の破壊活動や殺人事件がジュンダラによるものである、という証拠は出ていない。多くの報告では、イスラエルがこの秘密作戦の企画者であり、イランで1月11日、核科学者のモスタファ・アハマディ・ロシャンの車の下にオートバイに乗った者により磁石爆弾がセットされた際の犠牲者もそのイスラエルによるものとしている。この爆破でロシャンは殺害され、過去2年間で彼は4人目のイラン人科学者の犠牲者となった。アメリカはこれらの事件の黒幕であることを強く否定した。
CIAの退役要員によれば、偽旗作戦の情報は、アメリカの情報機関の上層部へ報告されていたという。この情報はCIAの作戦部長であるスティーブン・キャップス、副部長であるマイケル・サリック、そして対諜報センター部長にまで届いていた。この3人は退役している。対諜報センターは、そのウェブサイトによれば、「外国の情報機関による脅威」を調査する任務を受けている、という。この報告書はアメリカ情報機関に務める要員によれば、ホワイトハウスにまで届いていた。この要員によれば、ブッシュ大統領はこの件での説明を受けた際、「本当に怒った」、という。
「この報告書は、イスラエルの計画がアメリカを危険に陥れているというホワイトハウスの懸念に火をつけた」と、情報機関員は語った。「イランに対し、アメリカはイスラエルと共同して情報収集作戦を進めてきたことは疑いないが、これは違う話だ。誰がどう考えようが、我々はイラン高官の暗殺やイランの一般人を殺害することはしていない」
イスラエルとジュンダラの関係はブッシュ政権をその終了まで混乱させ続けた、と同じこの要員は語った。イスラエルの活動は、パキスタンとアメリカ政府の脆弱な関係を混乱させた。パキスタンはイランからジュンダラを取り締まるようアメリカから圧力を受けていた。これはまたテロに対してテロで応えるということはしないとするアメリカの主張を危うくさせていた。そして似たようなテロ攻撃をアメリカ人に対して起こさせていた。
「ブッシュがそれほど怒るのも当然だ」と、元情報部員だった人物が語った。「結局、自国民を殺害するという事を知っていてその外国政府と一緒に仕事をするということは困難だ」と言う。
アメリカの情報機関員によれば、政府高官の一人はイスラエルと対決する、と誓ったという。しかし、アメリカは何もしなかった。この結果をこの高官は、「政治的・官僚的無作為」のせいだとした。「結局、波風を立てるよりか何もしない方が簡単だったわけだ」と指摘した。「そうだとしても、少なくとも暫くの期間は、モサド作戦は、さまざまな議論をブッシュの国家安全保障チーム内に引き起こした。イスラエルは一体どっちの味方なんだ、という疑惑に陥る者と、敵の敵は味方だ、とする者とが対立した」というのだ。
このジュンダラに関する議論はブッシュが大統領職を去り、大統領としてオバマ大統領が対イランのアメリカ・イスラエル共同情報計画をその最初の数週間で根本的に削減することで収束した、という。
この決定で「いくつかの鍵となる情報集中作戦を停止せざるを得なくなった」CIA内部では物議をかもした、と最近CIAを退役した元要員が明言した。この活動は2010年11月、国務省がジュンダラを外国テロ組織に追加してから再開した。
現役の要員によれば、オバマの最初の命令以来、イランの核計画に関するいくつかの機密情報収集作戦でアメリカ情報機関はイスラエルと共同して行う許可を受けていた、という。こういった作戦は相当に高度な技術を要するもので、イランのインフラ、あるいは政治的・軍事的指導者らを絡ませる秘密の活動は含まない。
「我々はドンパチはやらない」と最近退役した情報機関員が語った。「我々は政治的暗殺もやらない」という。
イスラエルがいつもイラン人を標的にした秘密作戦を行うよう言ってくるが、いつもどおりそれは拒否される、という。「彼らは部屋にやってきては彼らの計画をぶち上げる。そして我々は頷いて聞く」と情報筋の高官は語った。「そこで我々は、そこには行くこともだめだ。我々の回答はノーだと彼らに告げる」、という。
ムジャヒディン・ハルクと違って、ジュンダラは比較的良くは知られてはいないが、ハルク同様暴力的組織だ。2009年5月、ジュンダラ・テロリストの一人がをパキスタン国境近くのイランのザへダンのモスク内部でシーア派の宗教フェスティバル期間中に自爆した。この爆弾事件で25人のイラン人が殺害されその他大勢が負傷した。この攻撃はイラン政府を怒らせ、犯人を辿ってパキスタン内で活動している分子まで摘発した。イラン政府はパキスタンにジュンダラの脅威を知らせ、イラン・パキスタン国境の彼らの基地を殲滅するよう要請した。パキスタンは国境地域でわずかに動いただけだったので、ジュンダラはパキスタンの情報機関によって保護されているのでは、というイランの疑惑を増す結果になった。
2009年のこの攻撃はこのジュンダラの仕業ではないか、と言われている多くのテロ攻撃の一つに過ぎない。2007年8月、ジュンダラは21名のイラン人トラック運転手を誘拐した。2008年12月、イラン人の国境警備兵16名を捕らえて処刑した。身の毛のよだつ処刑の様子は映像で記録された。2010年7月、ジュンダラはザヘダン郊外で二つの自爆攻撃を行った。この攻撃でイスラム革命防衛隊員を含む数十名の犠牲者を出した。
アメリカ国務省はジュンダラとの関係を強く否定した。「我々は繰り返し発表してきたが、今回も繰り返す。アメリカはジュンダラにいかなる支援もしていない」と、スポークスマンはジュンダラをテロ組織と指定した後、ウォール・ストリート・ジャーナル紙に電子メールで書いた。「アメリカはいかなる意味においてもテロリズムの支援はしていない。我々はテロ組織を支援する動きを減らすよう国際社会と共に働き、罪のない一般人を守る為暴力を阻止するよう努力する。我々は他の政府に対して、ジュンダラに対する類似の措置を取るよう促すものだ」
2007年と2008年の、ABCニュースとニューヨーカーの記事を含む話は、アメリカが秘密裏にジュンダラを支援していることを示唆している。この問題は、イラン人の核科学者暗殺事件の黒幕と共にスポットライトを浴びだしている。そしてイスラエルのスパイ作戦がアメリカ人の生命を危険に陥れているとして、現役・退役の情報機関員らの怒りを引き起こしている。
「これはこれが起きた最初ではない。ただし聞いた中では最悪のケースではある」と、中央軍(Centcom)元司令官で退役将軍のジョー・ホアーは、このイスラエルの作戦について語った。「しかし、偽旗作戦は新しくはないが、それは非常に危険である。つまり同盟国との自分たちの友好関係を自分たちの目的に利用することになる。イスラエルは火遊びをしている。これは我々の意思に関係なく彼らの秘密の戦争に我々が巻き込まれることになる」
このイスラエルの作戦は最近退役したCIA要員のフラストレーションをもたらした。「こういったことが起きれば、イスラエルがイラン人を攻撃することから我々アメリカが距離を置くことが困難になる」と一人の元CIA要員が語った。
ジュンダラの指導者であるアブドルマレク・リギは2010年2月、イランによって逮捕された。最初の報告では、この男がドバイからキルギスタンへ飛んでからイラン人によって逮捕されたとあったが、退役したCIA要員は、リギはパキスタンでパキスタンの情報将校らによって逮捕された、という。このリギはパキスタン政府がアメリカに連絡して後、イラン側に引き渡された、という。この元CIA要員が言うに、アメリカはそれに反対しなかったという。イラン側は、リギはCIAの見ている前で捕らえたと主張し、CIAが彼を支援していたことを示唆している。「それはどうでもいい」とイラン側の非難について元CIA要員は語った。「それはどうでもいいことだ、彼らは真実を知っているのだから」という。
リギは尋問され、裁判にかけられ、イランによって有罪とされ2010年6月20日に絞首刑にされた。この彼の処刑前に、リギはイランのメディアとのインタビューで、彼はアメリカが支援していると疑っていた、と語った。彼は彼が疑いを持った2007年のモスクワでの「NATO高官ら」との会合と言われるものを詳しく語った。
「我々がそのことを考えると、彼らはアメリカ人でNATOのあるいはイスラエルの下で仕事をしている者たちだという結論になった」と彼は語ったのだ。
ジュンダラに絡むイスラエルの動きの詳細の多くは知られているが、その他の多くはまだ謎のままだし、そのまま謎のままだろうと思われている。CIAのこのメモは「青枠」となっているが、これはアメリカの情報機関内の上層部および国務省高官らにまで行っていることを示す。
はっきりしていることは、イスラエルの行動について年季の入った情報部員らの怒りの大きさだ。「こいつは馬鹿げた事だし危険である」と最初にこの作戦について語った要員は語った。「イスラエルは我々と共に仕事をしていることになっている。我々に敵対して、ではない。もし彼らが血を流したいのならば、我々のではなく彼らの血ならば大いに助かる。お分かりか、彼らは戦略的アセットであるべきなのだ。で、考えてみたまえ。今や多くの人々が、お偉方が、そうではない、と考えているんだ」
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11日に暗殺されたロシャン氏の車
◆1月12日
イランでは核関連の科学者が暗殺に見舞われる事件が続いている。11日にも同様の事件が起きた。これに関連するかのように10日、イスラエルの参謀長がイランには2012年には「異常」な出来事がおきるだろう、とスピーチをしていた。
いくら公式には今回のイランでおきた爆弾テロ事件にイスラエルは関与していない、と言っても欧米・イスラエルがイランの核開発を阻止しようと躍起になっていることは世界中が知っており、そのための秘密工作作戦が何年も前から進められてきていることも知られているから、あまり説得力はない。
シリアでも自爆テロが起きたばかりであり、今回のイランの科学者暗殺事件などを見ると、イスラエルの参謀長が言っていた、2012年は決定的な年、というのは、シリアやイランばかりでなく、イスラエルもまた同様であろう、と思われる。
イスラエルはガザのハマスやレバノンのヒズボラをテロリストと呼んで国際世論を煽り、それを背景に戦車や爆撃機で大量虐殺をしてきたが、イスラエル独立以前のあのパレスチナではイスラエルのイルグンとかシュテルンなどのテロ組織が暴れまわっていた。要するにハマスやヒズボラの先輩がイスラエルなのだ。
殺せば殺される・・・これが世界の実相だ。だから、イランの科学者を殺せば、自分達にも似たようなことが起きることになる。警戒すべきは自国の方であろう。
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●イラン科学者の暗殺:イスラエル参謀長の先見の明なのか鉄面皮か?
http://www.thetruthseeker.co.uk/?p=41141
【1月11日 TruthSeeker】
イランは、再び核科学者を磁石爆弾で殺害するという秘密工作による戦争を仕掛けていると欧米を非難した、とデイリー・メール紙が報じた。
核施設で働いているイラン人の大学教授が車に設置された磁石爆弾で殺害されたと、同紙は報じている。
ファース通信によるとテヘランでのこの爆弾事件で、化学エキスパートでナタンツ・ウラン濃縮施設の部長のモスタファ・アハマディ・ロシャン氏が殺害されたという。これはイラン人科学者の似たような暗殺事件の最近のケースであり、イスラエルとアメリカがイランの核計画を阻止しようとしているとイランは非難した。
目撃者は二人の人物がオートバイに乗って車の脇で爆弾を設置していた、と述べた。ロシャン氏(32)はイランで組み立てられたプジョー405の車内に他の二人の人物といたところ、テヘラン北方のゴル・ナビ通り近くで爆破が起きた。この攻撃で歩行者の一人も死亡し、車に同乗していたもう一人の人物も重傷を負った。
ファース通信は、この爆破をテヘランのシャリフ技術大学卒業生であるロシャン氏を標的とした「テロリストの攻撃」と説明した。
サファラリ・バラトルー・テヘラン副知事は、「この爆弾は磁石爆弾で、以前やはり科学者が暗殺された時使用されたものと同じものである。シオニスト(イスラエル)の仕業だ」と述べた、と伝えられた。
2010年1月12日に起きた似たような爆弾攻撃で、テヘラン大学教授のマスード・アリ・モハマディ物理学教授が殺害された。
モハマディ教授は仕事に出かける際、彼の車近くで爆弾が仕掛けられたオートバイが爆発したことで殺害された。
2010年11月には、二つの爆弾攻撃で一人の核科学者が殺害され、もう一人が負傷した。
この攻撃で殺されたマジド・シャフリアリはテヘランのシャヒド・ベヘシュティ大学の核工学部のメンバーで、イランの原子エネルギー機関と共同研究をしていた人物だった。負傷した科学者であるフェレイドゥン・アバシはその後イランの原子力庁長官に任命された。
イランはナタンツ・ウラン濃縮施設部長のロシャン氏の死亡でイスラエルを非難している。
最近では、2011年7月、オートバイに乗った二人の銃を持ったテロリストが電子工学関連の学生であったダリウス・レザエイネジャドを殺害した。報道では、核兵器製造が試みられていると言われている動きに関係していた科学者であったと説明している。
レザエイネジャド氏は核弾頭炸裂を引き起こす爆発をセットする重要部品であるハイ・ボルテージ・スィッチ開発に参加していたと言われている。
欧米は、イランは核兵器技術を開発しようとしていると言って、その進展を阻止しようとしてイラン政権に対する制裁を強化してきた。
しかし、イランはこういった非難を一切否定し、イランの核計画は平和的目的を意図したものである、と主張している。
昨日、イスラエルの参謀長である、ベニー・ガンツ中将は、2012年にはイランは更に「異常」な出来事に遭遇するだろう、と語った。
「イランにとって2012年は、核化継続、指導部内の変化、”国際”社会からの増大する圧力、そして異常な出来事が起きることと関係して決定的な年になろう」と中将は語った。
先月、イラン革命防衛隊は、イスラム主義者が大規模な紛争を引き起こそうとしているという恐れがあるため戦闘準備体制を強化した。
この動きに、アメリカの無人機の撃墜、イギリス大使館への襲撃、核施設での爆発事件が続いた。
11月12日、ビド・カネフ革命防衛隊基地を大規模な爆発が揺るがし、イランの弾道ミサイル計画の創始者を含む17名が死亡した。
先月の爆破事件でイスファハンにあるウラン濃縮施設が大きなダメージを受けた。
またイラン核施設のコンピュータシステムがスタックスネット(Stuxnet worm)というウィルスに感染し大きなダメージを受けたと言う。この件でもイランは欧米を非難している。
続発する暗殺事件と明らかな破壊活動は、イランが核計画を達成するのを阻止しようとして、”秘密工作作戦”を欧米情報機関が行っていると多くの者たちが非難するようになった。
国際原子力機関(IAEA)が昨年、イランが核爆弾を製造する間際に来ているとする報告をしてからこの地域での緊張状態が続いている。
先月出版されたこの報告書は、イランの核計画が純粋に平和的目的のみを目指しているとは考えにくいとしている。
■イスラエル参謀長:イランにとって2012年は決定的な年
http://www.jpost.com/Defense/Article.aspx?id=252974
【1月10日 Jerusalem Post】
イスラエルのガンツ参謀長
イスラエル国防軍の参謀長であるベニー・ガンツ中将は10日、2012年はイランにとっては決定的な年になろう、と語った。またイランには更に「異常」な出来事が起きるだろうと述べた。
イスラエル国会外交防衛委員会で、ガンツは「2012年はイランの原子力の取得、指導部の変化、国際社会からの継続する圧力、そして異常な出来事が起きることで、イランにとっては決定的な年になろう」と語った。
ガンツは、イランに対する最近の国際的圧力は指導部に影響を与えているが、これで指導部が軍事的核計画を放棄することを決意するとは必ずしも言えない、と述べた。
イランに関する地域の懸念を強調し、トルコはイランの核開発が継続していることに特に神経を使っている、と語った。
シリアのアサド大統領がガンツに対する抗議のスピーチをした数時間後に、ガンツはシリアの指導者は彼の統治期間は長くないだろう」と語った。
「シリア政権が倒れる時、それはアラウィット派に対する衝撃となるが、我々はそのアラウィット派の避難民をゴラン高原に収容する準備をしている」とガンツは語った。
彼は、シリアでの出来事はアサドとシリアの指導部にとってイスラエルに敵対することを困難にしている、と語った。
しかしながら彼は同時に、シリア内の兵器システムは存在し、また良く維持されている、と警告した。
シリアは、SA-17対空ミサイルを含む最新のロシア兵器を所有し、これはイスラエルの空軍の優位性を脅かすものである、と語った。
ガンツは更に、レバノンからのイスラエルに対する脅威は最近増大しており、過去に比べて5倍強化されている、と語った。彼はまた、シリアからヒズボラに戦略的兵器が移送されているかもしれず、テロ組織がシリア内に兵器庫を持っていると警告した。
ガザ国境線の比較的平穏な情況についてガンツは、「我々はこのことで喜んでばかりしてはいられない」と語った。ガザから起きるいかなるテロ活動に対しても阻止すると誓約した。またそこのテロリストたちは増加し強化されていると警告した。
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緊張するホルムズ海峡
◆1月11日
昨年12月30日号の「イラン海軍はアメリカ戦闘部隊に勝てない」では、ロシアの軍人がイランを牽制するかのような表題のようなことを述べたのだが、以下の論文では、ことペルシャ湾・ホルムズ海峡に限っては、アメリカの方が部が悪く、イラン側が勝利する、とし、アメリカ・イスラエル側を牽制する内容となっている。
ロシアのカピタネッツ大将は、アメリカ海軍が大洋向けの大海軍であり、その力量はイランの沿岸用海軍に比肩するものではなく、問題にならない、としたのだが、以下のダリウス・ナゼムロアヤの論文は、逆にアメリカの海洋向けの大海軍のため、狭いホルムズ海峡やペルシャ湾内では動きがママならず、却って不利になるというのだ。
さて、戦争は見た目では判断できない部分が多分にあるから、そうかもしれない。部隊の大きさや強力さだけでは推し量れない要素があるものだから、細かく査定しなければならないだろう。その点、ミレニアム・チャレンジ2002(MC02)机上演習ではイラン側が勝利する、と出たというから、さすがにアメリカといえども実際に戦争を開始する決断は下せないだろう。そしてそれが正しい決断なのだ。
戦争屋に圧力を掛けられても、戦争をしてはならない。それがオバマ大統領が今、米大統領でいる大きな理由のはずだ。
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●ホルムズ海峡の地政学:米軍はイランに敗北するか?
http://www.globalresearch.ca/index.php?context=va&aid=28516
【1月8日 by Mahdi Darius Nazemroaya】
長年にわたるアメリカの恐喝の後、イランはホルムズ海峡封鎖の意思と能力を誇示し出した。2011年12月24日、イランはホルムズ海峡周辺と更にオマン湾からアデン湾、アラビア海までの海域で「ヴェラヤト90」海軍演習を開始した。この演習以来、アメリカとイランの間に脅し文句の論戦が高まっている。オバマ政府も国防総省も、イランの海軍演習を止めることは出来ないでいる。
■ホルムズ海峡の地政学的性格
世界的なエネルギー資源の航路であり、戦略的要衝であるという事実の他に、二つの問題点とそれのイランとの関係を挙げねばならない。
最初の点は、ホルムズ海峡の地政学的性格である。第二点は、国際法と国家主権に基づくイランのホルムズ海峡を取り扱う役割である。
ホルムズ海峡の海運は、イラン海軍との折衝の中で行われてきたが、主にイラン海軍とイラン革命防衛隊海軍によって構成されている。実際は、イラン海軍はホルムズ海峡をオマーンとムサンダムと共にモニターし警備活動をしている。更に重要なことはホルムズ海峡を通過する全ての海運は、米海軍も含めてイランの領海を通過するということだ。ペルシャ湾に入る全ての入口はイランの領海を通過することになり、出口はオマーンの領海となる。
イランは外国船舶に対し、自国の領海を国連条約海洋法第三部に基づいて善意で通過させている。そこでは、船舶はホルムズ海峡を速やかで継続的航海を基礎として自由に通過することができる、となっている。イランは通常は海洋法の航海方法に従っているが、イランが法的にそれに縛られているわけではない。アメリカのように、イランはこの国際法に署名はしたが、批准はしていないのだ。
■ペルシャ湾でのアメリカ・イラン間の緊張関係
最近の事態の進展で、イランの国会はホルムズ海峡での外国艦船のイラン領海の使用という面を再吟味しつつある。
外国軍艦がホルムズ海峡を航行するためにイラン領海を使用する際、イランの許可を必要とする法案の立法化が進められている。イラン国会安全保障外交政策委員会は最近、イランの公式の姿勢を明確にする法案を研究している。後者はイランの戦略的利益と国家の安全保障の見地によって左右されるだろう。
2011年12月30日、アメリカ海軍のステニス空母がイラン海軍が演習を行っている付近を通過した。イランの正規海軍司令官のアタオラ・サレヒ少将は、ステニス空母とアメリカ海軍艦船に対して、イランは警告を二度も繰り返す習慣はないと述べながらイランが演習をしている期間はペルシャ湾に戻らないようアドバイスをした。イランの厳しい警告の直後、ペンタゴンの報道書記官は、以下の声明を発表し応答した:我々政府内でホルムズ海峡の件で(イランと)事を構えようとする者はいない。冷静になることが重要だ」
イランとの軍事的衝突のシナリオでは、アメリカの空母がペルシャ湾外から、またオマン湾の南方とアラビア海から作戦を進めると思われる。アメリカがペルシャ湾南方の石油王国に展開しているミサイル・システムが機能しなければ、ペルシャ湾でのアメリカ海軍の大規模な軍艦の展開は考えられない。その理由は、地政学的現実とイランの防衛能力と緊密な関係がある。
■地理的にはペンタゴンに不利:湾内では米海軍能力は限定的
米海軍と沿岸警備隊のアメリカの海軍戦力は、世界の他の海軍や海上戦力を上回っている。米海軍の遠洋・海洋能力はその他の海軍力と比較しても飛び抜けており、比肩できないものだ。しかし第一等ということは、無敵であることを意味しない。アメリカ海軍はホルムズ海峡とペルシャ湾内では、脆弱性を持っている。その破壊力と強靭性にも係わらず、ホルムズ海峡とペルシャ湾内では地理的に米海軍は不利である。
ペルシャ湾の狭さは、少なくとも戦略的・軍事的見地からはそこを水路のようにしている。比ゆ的に言えば、アメリカの空母と軍艦はペルシャ湾の狭い水路に閉じ込められる、ないしは、沿岸部の水域に閉じ込められる形になる。その点が、イランのミサイルが絡んでくるところだ。イランのミサイルと魚雷は、ペルシャ湾内で自由に身動きできないでいるこのアメリカ海軍の艦船に対してその能力を発揮するかもしれないのだ。それがここ数年、湾岸協力理事会(GCC)諸国間に急いでミサイル・シールド・システムを設置してきた理由である。
アメリカの空母とか駆逐艦と比べれば、かわいそうなくらいちっぽけなペルシャ湾内のイランの小型警備艇でも、アメリカの軍艦の脅威となる。見た目には騙されるものだ;これらのイランの警備艇は簡単にアメリカの大型の軍艦にダメージを与えたり沈めることができるミサイルを発射できる。またイランの小型警備艇は発見されにくく、標的になりにくい。
イランの戦力は、ペルシャ湾北方のイラン本土からのミサイル攻撃でアメリカ海軍の戦力に対する攻撃をすることができるかもしれない。2008年にワシントン近東政策研究所は、イランの沿岸部の移動ミサイル発射システム、対艦ミサイル、ミサイル搭載小型艦の脅威を認めている。その他のイラン海軍の兵器、例えば無人機、ホーバークラフト、機雷、ダイバー・チーム、小型潜水艦などが、アメリカ第五艦隊に対する非対称海戦に動員されるかもしれない。
ペンタゴン自身の戦争シミュレーションでも、イランとのペルシャ湾内での戦争はアメリカ側に悲惨な結果をもたらすとある。一つの鍵となる例は、ペルシャ湾でのミレニアム・チャレンジ2002(MC02)机上演習である。これは2002年の7月24日から8月15日まで行われた。このためにほぼ2年間の準備がなされたのだ。この巨大演習はペンタゴンが行った最大で最も高価な演習の一つであった。ミレニアム・チャレンジ2002は、アフガンでの戦争の流れをイラク、ソマリア、スーダン、リビア、レバノン、シリアなどを標的として継続する決定をペンタゴンがした直後に行われたものである。そして新世紀にはアメリカの優勢を決定的なものにする拡大軍事演習でイランを叩いて終わるというものだった。
ミレニアム・チャレンジ2002が終了して後、この机上演習は「正式に」対イラク戦争シミュレーションとして提出された。しかし、実際はこれは対イランだったのだ。 アメリカは既にイギリス・アメリカのイラク侵略の為の査定を終えていた。イラクはあのような大規模なアメリカ海軍を必要とするような海軍を持っていなかった。
ミレニアム・チャレンジ2002は、イランとの戦争を考慮して進められた。これは「レッド」というコードネームが付けられ、とあるペルシャ湾に面した中東のごろつき国家のことを意味していた。この戦争シミュレーションが行われたのは、2003年のイラク侵略の後にアメリカはイランを攻撃することを計画していたからだ。
2002年の机上演習のシナリオは、イランに対して2007年に降伏を要請する最後通牒をアメリカが出す「ブルー」というコードネームが付けられた作戦だ。これが2007年なのは、2006年にイスラエルがレバノンを攻撃した後にアメリカがイランを2007年に攻撃するのに時間的に合致するからだ。レバノンへの攻撃は軍事計画によれば、シリアにまで拡大するようになっていた。しかしレバノンへの攻撃は計画通りには行かず、イスラエルはもしもヒズボラがレバノンでイスラエルと張り合えるとなると、シリアとイランに戦争を拡大したら結果は悲惨なことになりそうだ、と理解したのである。、
ミレニアム・チャレンジ2002の戦争シナリオでは、イランはアメリカの侵略に対して大規模なミサイル発射で応答し、アメリカは圧倒されて16隻の艦船-空母1隻、巡洋艦10隻、水陸両用艦5隻を失う、となった。これが実際に起きた場合、最初の日の攻撃で2万名以上のアメリカ兵が殺されると予想されている。
次に、イランはペルシャ湾でのペンタゴンの海軍の残存戦力を圧倒するために、アメリカのステニス空母やその他の大きな軍艦に比べればちっぽけで取るに足らないように見える小型警備艇を投入するだろう。その結果、アメリカ第五艦隊の殆どの艦船がダメージを受け、あるいは沈められることになり、アメリカの敗北となるかもしれない。アメリカが敗北した後、机上演習が再び行われたが、「レッド」(イラン)はハンディキャップと欠点を持つものとして機能しなければならなかったので、アメリカ軍はこの演習からは勝利者になった。この机上演習の結果は、ペルシャ湾でのイランとの戦争にアメリカは敗北するという事実を排除してしまった。
このように、恐るべきアメリカの海軍力はペルシャ湾であるいはオマン湾で戦う際には、地理的にまたイランの軍事的能力によって問題を抱えることになる。インド洋とか太平洋などの大洋でなければ、アメリカはかなり短い応答時間内に戦わねばならず、更に重要なことは、安全地帯から攻撃をすることができなくなるだろう、ということだ。このようにして、安全地帯から攻撃する大洋上での戦争を前提としてデザインされているアメリカ海軍の防衛システムの道具箱はペルシャ湾では使い物にならなくなるのだ。
■ホルムズ海峡でイランを弱める?
世界中がホルムズ海峡の重要性を知っているし、アメリカと同盟国はイランが軍事的にある一定の時間そこを封鎖しうることを知っている。それが、アメリカがGCC諸国、サウジアラビア、カタール、バーレーン、クウェート、オマーン、UAE、と共に組んでホルムズ海峡を避けて石油パイプラインを直接インド洋、紅海、地中海に向かわせようとしている理由である。アメリカはまた、イラクに圧力を掛けて、トルコ、ヨルダン、サウジアラビアとの間に別のルートを探そうとしている。
ホルムズ海峡を避けるパイプライン
イスラエルとトルコ両国は、この戦略的プロジェクトに非常に乗り気である。トルコはカタールとイラクを経由しトルコにいたる石油ターミナルを建設する会議を持った。トルコ政府はイラクの北部にある油田のように南方の油田をトルコを走る移送ルートに接続してもらおうと試みたことがあった。これら全ては、エネルギー回廊となり重要なハブになろうとするトルコの展望があるからだ。
ペルシャ湾から石油を別ルートで送るという狙いはアメリカとその同盟国に対してイランが持っている重要な戦略的資産を無効にすることになる。それはホルムズ海峡の重要性を効果的に減らすことになりそうだ。それはアメリカがイランとその同盟諸国に対する戦争と戦争準備にとって必須の事になるかもしれない。
ペルシャ湾のホルムズ海峡を通過するルートを避けて、アブダビ原油パイプライン又はハシャン・フジャイラ・パイプラインがアラブ首長国連邦によって計画されたのはこの認識からである。このプロジェクトの構想は2006年にまとめられ、契約は2007年に交わされ、建設が2008年から始まった。このパイプラインはアブダビからアラビア海のオマン湾の海岸にあるフジャイラ港へ直接向かっている。
言い換えれば、UAEの石油をインド洋に直接送ることになる。これはホルムズ海峡を避け、イラン軍を避けることで、エネルギー移送の安全性を確保するやり方だと紹介されてきた。このパイプラインの建設で、フジャイラの戦略的石油備蓄ということが、ペルシャ湾が封鎖された場合でも国際市場への石油供給を維持する点から重要視された。
ペトロライン(東西サウジライン)の他に、サウジアラビアは別の移送ルートを構想しており、アラビア半島の南方の隣国であるオマーンとイエメンの港を検討中だ。アデン湾にあるイエメンのムカラ港はサウジがとりわけ興味を示している場所だ。2007年、イスラエル筋が、サウジの油田とUAEのフジャイラ、オマーンのムスカト、イエメンのムカラを結ぶパイプライン敷設プロジェクトが動き出したと報告した。ホルムズ海峡とイランを避けるために皮肉にもサダム・フセインによって建設されたイラク・サウジアラビア・パイプライン(IPSA)の再開は、イラク政府とサウジが会議の議題としたものだ。
もしもシリアとレバノンがアメリカの顧客になったとしたら、使用されていないトランス・アラビアン・パイプライン(Tapline)が、レバントを通るアラビア半島から地中海沿岸に向かうその他のルートと共に復活するかもしれない。これはイランとの戦争が始まる前にイランを孤立化させるため、レバノンとシリアを侵略せんとするアメリカの努力と時期的に合致する。
イェメン領海近くのアデン湾内の紅海入口付近にまで拡大した、イランのヴェラヤト90海軍演習は、オマーン湾でも行われた。その他の点として、ヴェラヤト90は、イランがペルシャ湾外でも作戦行動することが出来る準備があり、ホルムズ海峡を避けて通るパイプラインを封鎖ないしは攻撃しうるということを示すサインであると理解すべきである。
地理的にはこの場合でもイランに分がある。ホルムズ海峡を避ける別ルートは、GCC諸国が所有する殆どの油田がペルシャ湾岸に存在するか付近に存在し、それはイランから近いということであり、イランからの攻撃可能距離内にある、という事実は変わらない。ハシャン・フジャイラ・パイプラインの場合のように、イランは始発点から石油の流れを不能にしうるだろう。イランはミサイルを発射し航空機による攻撃か、陸、海、空、水陸両用部隊をこの地帯に展開しうるだろう。これはホルムズ海峡を必ずしも封鎖する必要がないということだ。結局、エネルギーの流れを妨害するというのが、イランの脅威の主目的である。
■アメリカ・イラン冷戦
アメリカはイランに対してあらゆる方法を駆使して攻勢であった。このホルムズ海峡とペルシャ湾における緊張関係は、イランとアメリカの拡大中東地域における危険な冷戦の多様な戦線の一つに過ぎない。2001年以来、ペンタゴンはイランのような敵との不正規戦争を戦うために軍の再編を進めてきた。にもかかわらず、地理的には常にペンタゴンにとっては分が悪く、ペルシャ湾での海軍上のジレンマの回答を得ていない。正規戦の代わりに、アメリカはイランに対して秘密工作、経済戦争、外交上での戦いを余儀なくされてきたのだ。
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