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緊張するホルムズ海峡

◆1月11日

 昨年12月30日号の「イラン海軍はアメリカ戦闘部隊に勝てない」では、ロシアの軍人がイランを牽制するかのような表題のようなことを述べたのだが、以下の論文では、ことペルシャ湾・ホルムズ海峡に限っては、アメリカの方が部が悪く、イラン側が勝利する、とし、アメリカ・イスラエル側を牽制する内容となっている。

 ロシアのカピタネッツ大将は、アメリカ海軍が大洋向けの大海軍であり、その力量はイランの沿岸用海軍に比肩するものではなく、問題にならない、としたのだが、以下のダリウス・ナゼムロアヤの論文は、逆にアメリカの海洋向けの大海軍のため、狭いホルムズ海峡やペルシャ湾内では動きがママならず、却って不利になるというのだ。

 さて、戦争は見た目では判断できない部分が多分にあるから、そうかもしれない。部隊の大きさや強力さだけでは推し量れない要素があるものだから、細かく査定しなければならないだろう。その点、ミレニアム・チャレンジ2002(MC02)机上演習ではイラン側が勝利する、と出たというから、さすがにアメリカといえども実際に戦争を開始する決断は下せないだろう。そしてそれが正しい決断なのだ。

 戦争屋に圧力を掛けられても、戦争をしてはならない。それがオバマ大統領が今、米大統領でいる大きな理由のはずだ。

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●ホルムズ海峡の地政学:米軍はイランに敗北するか?
http://www.globalresearch.ca/index.php?context=va&aid=28516
【1月8日 by Mahdi Darius Nazemroaya】

 長年にわたるアメリカの恐喝の後、イランはホルムズ海峡封鎖の意思と能力を誇示し出した。2011年12月24日、イランはホルムズ海峡周辺と更にオマン湾からアデン湾、アラビア海までの海域で「ヴェラヤト90」海軍演習を開始した。この演習以来、アメリカとイランの間に脅し文句の論戦が高まっている。オバマ政府も国防総省も、イランの海軍演習を止めることは出来ないでいる。


■ホルムズ海峡の地政学的性格
 
 世界的なエネルギー資源の航路であり、戦略的要衝であるという事実の他に、二つの問題点とそれのイランとの関係を挙げねばならない。
 最初の点は、ホルムズ海峡の地政学的性格である。第二点は、国際法と国家主権に基づくイランのホルムズ海峡を取り扱う役割である。

 ホルムズ海峡の海運は、イラン海軍との折衝の中で行われてきたが、主にイラン海軍とイラン革命防衛隊海軍によって構成されている。実際は、イラン海軍はホルムズ海峡をオマーンとムサンダムと共にモニターし警備活動をしている。更に重要なことはホルムズ海峡を通過する全ての海運は、米海軍も含めてイランの領海を通過するということだ。ペルシャ湾に入る全ての入口はイランの領海を通過することになり、出口はオマーンの領海となる。

 イランは外国船舶に対し、自国の領海を国連条約海洋法第三部に基づいて善意で通過させている。そこでは、船舶はホルムズ海峡を速やかで継続的航海を基礎として自由に通過することができる、となっている。イランは通常は海洋法の航海方法に従っているが、イランが法的にそれに縛られているわけではない。アメリカのように、イランはこの国際法に署名はしたが、批准はしていないのだ。

 
■ペルシャ湾でのアメリカ・イラン間の緊張関係


 
 最近の事態の進展で、イランの国会はホルムズ海峡での外国艦船のイラン領海の使用という面を再吟味しつつある。 

 外国軍艦がホルムズ海峡を航行するためにイラン領海を使用する際、イランの許可を必要とする法案の立法化が進められている。イラン国会安全保障外交政策委員会は最近、イランの公式の姿勢を明確にする法案を研究している。後者はイランの戦略的利益と国家の安全保障の見地によって左右されるだろう。

 2011年12月30日、アメリカ海軍のステニス空母がイラン海軍が演習を行っている付近を通過した。イランの正規海軍司令官のアタオラ・サレヒ少将は、ステニス空母とアメリカ海軍艦船に対して、イランは警告を二度も繰り返す習慣はないと述べながらイランが演習をしている期間はペルシャ湾に戻らないようアドバイスをした。イランの厳しい警告の直後、ペンタゴンの報道書記官は、以下の声明を発表し応答した:我々政府内でホルムズ海峡の件で(イランと)事を構えようとする者はいない。冷静になることが重要だ」

 イランとの軍事的衝突のシナリオでは、アメリカの空母がペルシャ湾外から、またオマン湾の南方とアラビア海から作戦を進めると思われる。アメリカがペルシャ湾南方の石油王国に展開しているミサイル・システムが機能しなければ、ペルシャ湾でのアメリカ海軍の大規模な軍艦の展開は考えられない。その理由は、地政学的現実とイランの防衛能力と緊密な関係がある。


■地理的にはペンタゴンに不利:湾内では米海軍能力は限定的
 
 米海軍と沿岸警備隊のアメリカの海軍戦力は、世界の他の海軍や海上戦力を上回っている。米海軍の遠洋・海洋能力はその他の海軍力と比較しても飛び抜けており、比肩できないものだ。しかし第一等ということは、無敵であることを意味しない。アメリカ海軍はホルムズ海峡とペルシャ湾内では、脆弱性を持っている。その破壊力と強靭性にも係わらず、ホルムズ海峡とペルシャ湾内では地理的に米海軍は不利である。

 ペルシャ湾の狭さは、少なくとも戦略的・軍事的見地からはそこを水路のようにしている。比ゆ的に言えば、アメリカの空母と軍艦はペルシャ湾の狭い水路に閉じ込められる、ないしは、沿岸部の水域に閉じ込められる形になる。その点が、イランのミサイルが絡んでくるところだ。イランのミサイルと魚雷は、ペルシャ湾内で自由に身動きできないでいるこのアメリカ海軍の艦船に対してその能力を発揮するかもしれないのだ。それがここ数年、湾岸協力理事会(GCC)諸国間に急いでミサイル・シールド・システムを設置してきた理由である。

 アメリカの空母とか駆逐艦と比べれば、かわいそうなくらいちっぽけなペルシャ湾内のイランの小型警備艇でも、アメリカの軍艦の脅威となる。見た目には騙されるものだ;これらのイランの警備艇は簡単にアメリカの大型の軍艦にダメージを与えたり沈めることができるミサイルを発射できる。またイランの小型警備艇は発見されにくく、標的になりにくい。 
 
イランの戦力は、ペルシャ湾北方のイラン本土からのミサイル攻撃でアメリカ海軍の戦力に対する攻撃をすることができるかもしれない。2008年にワシントン近東政策研究所は、イランの沿岸部の移動ミサイル発射システム、対艦ミサイル、ミサイル搭載小型艦の脅威を認めている。その他のイラン海軍の兵器、例えば無人機、ホーバークラフト、機雷、ダイバー・チーム、小型潜水艦などが、アメリカ第五艦隊に対する非対称海戦に動員されるかもしれない。

 ペンタゴン自身の戦争シミュレーションでも、イランとのペルシャ湾内での戦争はアメリカ側に悲惨な結果をもたらすとある。一つの鍵となる例は、ペルシャ湾でのミレニアム・チャレンジ2002(MC02)机上演習である。これは2002年の7月24日から8月15日まで行われた。このためにほぼ2年間の準備がなされたのだ。この巨大演習はペンタゴンが行った最大で最も高価な演習の一つであった。ミレニアム・チャレンジ2002は、アフガンでの戦争の流れをイラク、ソマリア、スーダン、リビア、レバノン、シリアなどを標的として継続する決定をペンタゴンがした直後に行われたものである。そして新世紀にはアメリカの優勢を決定的なものにする拡大軍事演習でイランを叩いて終わるというものだった。

 ミレニアム・チャレンジ2002が終了して後、この机上演習は「正式に」対イラク戦争シミュレーションとして提出された。しかし、実際はこれは対イランだったのだ。 アメリカは既にイギリス・アメリカのイラク侵略の為の査定を終えていた。イラクはあのような大規模なアメリカ海軍を必要とするような海軍を持っていなかった。
 ミレニアム・チャレンジ2002は、イランとの戦争を考慮して進められた。これは「レッド」というコードネームが付けられ、とあるペルシャ湾に面した中東のごろつき国家のことを意味していた。この戦争シミュレーションが行われたのは、2003年のイラク侵略の後にアメリカはイランを攻撃することを計画していたからだ。

 2002年の机上演習のシナリオは、イランに対して2007年に降伏を要請する最後通牒をアメリカが出す「ブルー」というコードネームが付けられた作戦だ。これが2007年なのは、2006年にイスラエルがレバノンを攻撃した後にアメリカがイランを2007年に攻撃するのに時間的に合致するからだ。レバノンへの攻撃は軍事計画によれば、シリアにまで拡大するようになっていた。しかしレバノンへの攻撃は計画通りには行かず、イスラエルはもしもヒズボラがレバノンでイスラエルと張り合えるとなると、シリアとイランに戦争を拡大したら結果は悲惨なことになりそうだ、と理解したのである。、

 ミレニアム・チャレンジ2002の戦争シナリオでは、イランはアメリカの侵略に対して大規模なミサイル発射で応答し、アメリカは圧倒されて16隻の艦船-空母1隻、巡洋艦10隻、水陸両用艦5隻を失う、となった。これが実際に起きた場合、最初の日の攻撃で2万名以上のアメリカ兵が殺されると予想されている。

 次に、イランはペルシャ湾でのペンタゴンの海軍の残存戦力を圧倒するために、アメリカのステニス空母やその他の大きな軍艦に比べればちっぽけで取るに足らないように見える小型警備艇を投入するだろう。その結果、アメリカ第五艦隊の殆どの艦船がダメージを受け、あるいは沈められることになり、アメリカの敗北となるかもしれない。アメリカが敗北した後、机上演習が再び行われたが、「レッド」(イラン)はハンディキャップと欠点を持つものとして機能しなければならなかったので、アメリカ軍はこの演習からは勝利者になった。この机上演習の結果は、ペルシャ湾でのイランとの戦争にアメリカは敗北するという事実を排除してしまった。

 このように、恐るべきアメリカの海軍力はペルシャ湾であるいはオマン湾で戦う際には、地理的にまたイランの軍事的能力によって問題を抱えることになる。インド洋とか太平洋などの大洋でなければ、アメリカはかなり短い応答時間内に戦わねばならず、更に重要なことは、安全地帯から攻撃をすることができなくなるだろう、ということだ。このようにして、安全地帯から攻撃する大洋上での戦争を前提としてデザインされているアメリカ海軍の防衛システムの道具箱はペルシャ湾では使い物にならなくなるのだ。


■ホルムズ海峡でイランを弱める?
 
 世界中がホルムズ海峡の重要性を知っているし、アメリカと同盟国はイランが軍事的にある一定の時間そこを封鎖しうることを知っている。それが、アメリカがGCC諸国、サウジアラビア、カタール、バーレーン、クウェート、オマーン、UAE、と共に組んでホルムズ海峡を避けて石油パイプラインを直接インド洋、紅海、地中海に向かわせようとしている理由である。アメリカはまた、イラクに圧力を掛けて、トルコ、ヨルダン、サウジアラビアとの間に別のルートを探そうとしている。 


ホルムズ海峡を避けるパイプライン

 イスラエルとトルコ両国は、この戦略的プロジェクトに非常に乗り気である。トルコはカタールとイラクを経由しトルコにいたる石油ターミナルを建設する会議を持った。トルコ政府はイラクの北部にある油田のように南方の油田をトルコを走る移送ルートに接続してもらおうと試みたことがあった。これら全ては、エネルギー回廊となり重要なハブになろうとするトルコの展望があるからだ。

 ペルシャ湾から石油を別ルートで送るという狙いはアメリカとその同盟国に対してイランが持っている重要な戦略的資産を無効にすることになる。それはホルムズ海峡の重要性を効果的に減らすことになりそうだ。それはアメリカがイランとその同盟諸国に対する戦争と戦争準備にとって必須の事になるかもしれない。

 ペルシャ湾のホルムズ海峡を通過するルートを避けて、アブダビ原油パイプライン又はハシャン・フジャイラ・パイプラインがアラブ首長国連邦によって計画されたのはこの認識からである。このプロジェクトの構想は2006年にまとめられ、契約は2007年に交わされ、建設が2008年から始まった。このパイプラインはアブダビからアラビア海のオマン湾の海岸にあるフジャイラ港へ直接向かっている。

 言い換えれば、UAEの石油をインド洋に直接送ることになる。これはホルムズ海峡を避け、イラン軍を避けることで、エネルギー移送の安全性を確保するやり方だと紹介されてきた。このパイプラインの建設で、フジャイラの戦略的石油備蓄ということが、ペルシャ湾が封鎖された場合でも国際市場への石油供給を維持する点から重要視された。

 ペトロライン(東西サウジライン)の他に、サウジアラビアは別の移送ルートを構想しており、アラビア半島の南方の隣国であるオマーンとイエメンの港を検討中だ。アデン湾にあるイエメンのムカラ港はサウジがとりわけ興味を示している場所だ。2007年、イスラエル筋が、サウジの油田とUAEのフジャイラ、オマーンのムスカト、イエメンのムカラを結ぶパイプライン敷設プロジェクトが動き出したと報告した。ホルムズ海峡とイランを避けるために皮肉にもサダム・フセインによって建設されたイラク・サウジアラビア・パイプライン(IPSA)の再開は、イラク政府とサウジが会議の議題としたものだ。

 もしもシリアとレバノンがアメリカの顧客になったとしたら、使用されていないトランス・アラビアン・パイプライン(Tapline)が、レバントを通るアラビア半島から地中海沿岸に向かうその他のルートと共に復活するかもしれない。これはイランとの戦争が始まる前にイランを孤立化させるため、レバノンとシリアを侵略せんとするアメリカの努力と時期的に合致する。

 イェメン領海近くのアデン湾内の紅海入口付近にまで拡大した、イランのヴェラヤト90海軍演習は、オマーン湾でも行われた。その他の点として、ヴェラヤト90は、イランがペルシャ湾外でも作戦行動することが出来る準備があり、ホルムズ海峡を避けて通るパイプラインを封鎖ないしは攻撃しうるということを示すサインであると理解すべきである。

 地理的にはこの場合でもイランに分がある。ホルムズ海峡を避ける別ルートは、GCC諸国が所有する殆どの油田がペルシャ湾岸に存在するか付近に存在し、それはイランから近いということであり、イランからの攻撃可能距離内にある、という事実は変わらない。ハシャン・フジャイラ・パイプラインの場合のように、イランは始発点から石油の流れを不能にしうるだろう。イランはミサイルを発射し航空機による攻撃か、陸、海、空、水陸両用部隊をこの地帯に展開しうるだろう。これはホルムズ海峡を必ずしも封鎖する必要がないということだ。結局、エネルギーの流れを妨害するというのが、イランの脅威の主目的である。


■アメリカ・イラン冷戦
 
 アメリカはイランに対してあらゆる方法を駆使して攻勢であった。このホルムズ海峡とペルシャ湾における緊張関係は、イランとアメリカの拡大中東地域における危険な冷戦の多様な戦線の一つに過ぎない。2001年以来、ペンタゴンはイランのような敵との不正規戦争を戦うために軍の再編を進めてきた。にもかかわらず、地理的には常にペンタゴンにとっては分が悪く、ペルシャ湾での海軍上のジレンマの回答を得ていない。正規戦の代わりに、アメリカはイランに対して秘密工作、経済戦争、外交上での戦いを余儀なくされてきたのだ。

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