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ロシアの空母クズネツォフ

◆1月10日

 ロシアの空母艦隊がシリアのタルトス港に寄港した。シリアが国際的批判の的になっている時なので、シリア国民は大いに歓迎しているし、ロシア関係者も、友好のためということを語っているが、ロシア国防省は地中海での訓練のための補給が寄港の理由だとしている。

 いずれにしても、この時期に友好国であり軍事大国のロシアが空母と共にシリアの港に入ったということには公式発表以上の意味があることは論を待たない。

 以下のMSN NZの記事では、反政府勢力に対する弾圧、として非難めいた調子で書いているが、シリアではここ最近数回の爆弾テロ事件が起きており、過激派の武装テロ事件はその過激度を増大させており、シリアの一般市民の武装勢力に対する怒りは更に強まっている。
 9日も、大規模な政府支援集会が行われ、爆弾テロを強く非難している



武装勢力側の爆弾テロを非難する大規模な政府支援集会

 このような情景は欧米側のメディアは報じないであろうから、日本のメディアも報じないだろう。しかし、実際はアサド政権を支援するシリア人の方が圧倒的に多いのである。

 リビアと違って、シリアに対してはロシアや中国が支援に回っているので、リビアのようには事態は進まないであろう。従って、じっくり時間を掛けて、「シリア不安定化」作戦を進めて行こうというのが、欧米・イスラエルのこれからの作戦であろう。


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●ロシア艦隊がシリアの港に寄港
http://news.msn.co.nz/worldnews/8400094/russian-naval-flotilla-docks-in-syria
【1月10日 MSN NZ】

 シリア国営通信がロシアとの緊密な関係を示すという、空母に率いられたロシア海軍艦隊がシリアのタルトス港に寄港した。

 最近ロシアが拡張したこの地中海の港に6日間寄港することは、反政府勢力に対する弾圧に対する欧米とアラブ諸国側からの圧力下にあるアサド大統領を支援する意図を持つものである。

 しかし、ロシア国防省高官は、寄港は単に艦隊の補給のためだ、としている。
 「この寄港により両国関係がより親密になり、両国の友好関係を強化することになることが願われている」とシリアのSANA通信は、ロシア海軍のヴラジミール・ヤクーシンという高官が語ったと伝えた。
 「タルトス港に寄港したロシア艦隊司令長官はシリア国民との連帯を表明した」とこの通信社は伝えた。

 タルトスのアテフ・ナダフ知事は、「シリア国民と共にあるロシアによりなされた栄誉ある立場」に対しての賛辞を述べた。

 しかしロシアの国防省高官は、艦船はシリアの危機とは関係ない通常の地中海での演習を実施していたことを強調し、補給のために寄港したことを強調した。
 
 「補給が済めば、艦船はシリアの領海を出て、長距離の航海任務に就く」とロシア国防省は声明で語った。

 欧米側の強い批判にも係わらず、ロシアは反政府デモ隊らに対する10ヶ月近くになる保安部隊による弾圧による死者数に対して上がってる国際的な非難の中で、冷戦時代からの同盟国の側に立っている。

 昨年の10月、ロシアは中国と共に、国連安保理でのシリアに対する制裁決議に拒否権を実行した。



●シリア国防大臣:ロシア艦隊の空母クズネツォフを訪問
http://www.sana.sy/eng/21/2012/01/09/393115.htm
【1月9日 SANA】



 ダウード・ラジハ国防相は8日、ロシアの空母クズネツォフを訪問しその任務と兵器に関する説明を受けた。

 ラジハ国防相はシリアとロシアの間の歴史的関係を強調し、シリア国民を支援するロシアのスタンスに賛辞を送った。

 ロシアの在シリア・クルムハメトフ大使は、ロシア艦隊の訪問は、友好国同士の深い関係を強調するものだ、と語った。

 ロシア大使は、シリア国民の民主主義に対する熱心な意気込みに関心を寄せており、改革プログラムの全面的達成の重要さを強調した。

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ユーロ問題を抱えるヨーロッパ連合

◆1月9日
 
 ユーロが調子悪い。昨年の12月18日号の記事「ユーロの崩壊、死、その終焉」で示された傾向が今年に入ってからも止まない。このままでは本当にユーロ圏は金融内破しそうだ。

 連日のように、ユーロが対ドル、勿論対円でも下げている。ヨーロッパの大銀行の株価にそれが直接響いている。 しかしドルだって似たような情況にあるから、ユーロもドルも信頼できないとなれば、日本円が一時的に基軸通貨の役割を担うことになるという専門家もいる。

 既にこのブログでは2008年のリーマン・ショック以来、根本的な解決はされていないので、再び金融津波が襲ってくる、と繰り返してきた。事態は今や、その金融津波の第二波がいよいよやってきそうな事態になりつつある、ということだ。

 築いた堤防や波避けを捨てて、津波の時にはとにかく高い所に逃げることが重要。そして津波が去るのをじっと待つしかない。これは金融でも言えることで、自分が持っている債権などは処分した方がよいだろう。このブログでは金(ゴールド)が上がる、としてきたが、そのゴールドでさえ、意味をあまり成さない事態にならないとも限らなくなるかもしれないから、あまりそれに依存し過ぎるのは良くないだろう。

 自分が生き残る為には何が必要か? これを真剣に考え実行する時が迫っているといって過言ではない。要するに、食糧であり、エネルギーであり、生活必需品だ。

 「金融資本主義の崩壊」、という事態をいろいろ想定してみるべきなのだ。債権など日本国債以外は、何にもならなくなることを想定すべきである。日本国債ならば、日本国がある限り、最低の保証はあるだろう。

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●悪夢のようにユーロが下げ始めた
http://theeconomiccollapseblog.com/archives/look-out-below-the-nightmarish-decline-of-the-euro-has-begun
【1月9日 The Economic Collapse】

 ユーロは死につつある通貨だ。1月5日、ユーロの対ドルレートは2010年9月以来始めて、1.28ドルに下がった。去年の7月では1.45ドルだった。しかしこれは始まりに過ぎない。ユーロはもっと下げるだろう。今の時点で、デフォルトの危機にあるいくつかのヨーロッパの国々が存在し、ヨーロッパの金融システムは債務と有毒資産に溢れており、大方のヨーロッパの主要銀行は破綻したリーマン・ブラザースのようなレバレッジの掛け方をしているのだ。

 殆どのアメリカ人は何が起きているのかというこの問題の深刻さを理解していない。ダウが1万2000ドル以上をキープし、いくつかのアメリカの経済指標がわずかに好転しているからといって、全てがうまく行っているわけではない。最近指摘したように、EUの経済規模はアメリカのより大きく、我々のものより大きな銀行システムを持っている。アメリカの銀行はヨーロッパのソブリン・デットとヨーロッパの銀行の負債に大きく関っている。もしもヨーロッパの金融システムが崩壊すれば、そしてユーロが急落すれば、それは世界全体を揺るがすことになる。

 したがって、以下を良く見て、ユーロが下がって来ていること、そして更にもっと下がることを知ったほうが良い。ユーロが崩壊したら、以前のようではなくなる。

 では、ユーロはどこまで下げるのだろう?

 キャピタル・エコノミクスの専門家のジュリアン・ジェソップは、ユーロはかなり下げる、と予想している。

 アメリカの最近の経済データの比較的強い傾向はドルを支えているが、我々はユーロ圏が深い長期の不況に向かっているのでこのドルの傾向が続くと考える。それ以上に、ユーロが生き残れるかどうか、という不信感がこの通貨の重しになっている。従って我々はユーロは今年の暮れには1.10ドルほどになっていると考える。

 この件については以前書いたが、PIMCOのポートフォリオ・マネージメントの責任者はユーロはそれ以上に下げるだろうと見ている。

 「ドルと等価になるというのはありうる事だ。分かりますか?」
 1ドル=1ユーロ? そんなことあるわけない、とは考えないように。

 しかしユーロが下げるということは問題の一部だ。問題は、ヨーロッパが金融崩壊の縁に追い詰められているということであり、それが2008年の金融危機を小さく見せるほどの事態にならないとも限らないということだ。

 悲しい事に、殆どのアメリカ人はここ数日ヨーロッパで起きていることの意味が分からないままでいる。

■イタリアの最大の銀行のユニクレジットの株価は間違いなく崩壊しつつある。ユニクレジットの株価は4日、14%下落し、5日には17%下落した。
■その他のイタリアの主要銀行である、インテサ、サンパオロは5日、7.3%下落した。 
■フランスの主要三銀行の株価は5日、少なくとも5%は下落している。
■ドイツ銀行でさえ、転げ落ちる岩のように下落している。コメルツバンクの株価は5日、4.5%、ドイチュバンクは5日、5・6%下落した。
■5年物のイタリア国債の利回りは、6%に戻り、10年物のイタリア国債は7%に戻った。ヨーロッパ中のアナリストは、イタリア国債の情況は利率がこのまま高値で留まれば持続不可である、と主張している。
■イタリアの若年層の失業率はかつてない高さを記録している。
 
 
 これは心胆を寒からしめるものだ。しかしUSAトゥデイのトップの見出しは何か?
「企業主らは喫煙者に喫煙禁止命令」
 その他のトップの見出しには以下のようなものがある・・・
 
 「バーゲン・シーズンがタコベル、ピザハット、ウェンディーに」
 「あなたの犬はあなたのことを理解していますか?」
 
 こういうことがこの国でのニュースになることなのか?
 ヨーロッパで歴史的規模の金融メルトダウンが起きている。そしてUSAトゥデイ紙の一面ではそれについてのニュースを何一つ見つけることが出来ないのだ。驚くべきことだ。
 
 我々はテレビによる昏睡状態から目覚めてるべきだ。事態は世界の金融システムのためには非常にまずい情況になってきている。ユーロに対する信頼が今大きく損なわれている。外交問題評議会(CFR)でさえ、ユーロは失敗だったと認めている・・・

 ユーロは今や失敗した実験通貨であったと認められるべきだろう。ユーロが導入された1999年からわずか12年でのこの失敗は何かの事故だとか、官僚主義のミスマネージメントの結果ということではなく、異質な国々からなるグループに単一通貨を押し付けた避けられない結果である。ユーロ導入による経済面での悪い結果が、いくつかの国のソブリン・デット危機やヨーロッパの主要銀行に見られる脆弱な情況、ユーロ圏全体における高い失業率、ユーロ圏諸国の多くが大きな貿易赤字を抱えている実情に現れている。CFRでさえサジを投げるのならば、ユーロに何が起きているのか分かろうというものだ。

 これからの数年でユーロが破綻するかもしれない可能性が実際にある。クレジット・スイスの、定額所得リサーチ・グループのレポートが正しかったようだ・・・

 「我々はユーロの終末に遭遇しているようだ。それを打開することは出来そうにも無く、ユーロ圏のソブリン・ボンド市場の閉鎖、そして最強の銀行でさえ起きるかもしれない取次ぎ騒ぎを避けるためには、恐らく1月中旬までに、何か尋常でないことでも起きる必要がありそうだ」

 ヨーロッパの債務危機はますます悪化し続けている。ヨーロッパの指導者らがやってみたいかなる策も機能しなかった。我々はこの危機がメルトダウンする段階にますます近づいている。

 以前書いたように、ヨーロッパに何が起きているかを理解するのに、天才である必要はない。方程式は簡単だ・・・

 粗野な緊縮財政+有毒レベルの国債+上昇する利回り+金融システムに対する信頼感の欠如+大掛かりにレバレッジを利かせている銀行+大規模な信用収縮=歴史的規模の金融爆破(内破)
 
 不幸にも、ヨーロッパで今起きていることは、アメリカでも結局は起きることだ。アメリカの債務は時限爆弾で、それは世界経済をいつか破壊することになるだろう。誰もいつその内破が起きるのかしらないが、誰もがそれがおきることは避けられないことを知っている。

 ヨーロッパが金融的に分解すれば、我々自身の金融システムを大きく不安定化させるだろう。ヨーロッパで起きていることは、我々の「限定的回復」を「大規模な不況」に一夜の内に変えてしまいかねない。

 従って、ユーロから目を離すべきではない。もしもユーロが下げ続ければ、世界経済にとっては全く悪い知らせである。不幸にも、真実は、ユーロの衰退は始まったばかりである、ということだ。

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ロシアのS-300         イランが捕獲したアメリカのRQ-170

◆1月8日

 イランにロシアはS-300ミサイル防空システムを売却するという契約を2007年に結んでいたのだがそれを履行しないまま、契約を破棄したことがあった。しかしどうもロシア軍基地でイランの革命防衛隊要員がこのシステムの操作訓練を受けてきているようだ。

 このシステムがイランに実戦配備されると、米・イスラエルの爆撃機がイラン領空内に侵入することが困難になるから、何としてでもそれがイランに渡らぬよう米・イスラエルは働きかけてきたようだが、今回、アメリカの最新鋭の無人機がイラン側の手に落ちたため、それが対ロシアや中国との取引材料に使用され、結果、S-300ミサイル・システムがロシア側からイラン側に引き渡されるかもしれない、と言う状況になって来ているようだ。

 これは攻撃用ミサイルではないから、米・イスラエルも自分たちが爆撃機などを攻撃に送り出さねば、直接的な脅威となるわけではない。しかし、実際にイランに対する低空での侵入から、イランの核施設を破壊する作戦を実行しようとすると、とたんにこのミサイルが怖くなるのだ。

 以前も指摘したことだが、ロシアがこのイランに対しては、調整役のような動きをしている。というよりイランにはロシアの利権がある。したがってロシアの狙いはその利権を守るためにも、この地域での本格的な戦争を抑止することにあるだろう。それが正しい選択であり、道である。

 今年は米・イスラエルによるイラン攻撃の可能性が一段と強まってくると言われているので、ロシアがアメリカの無人機へのアクセスと引き換えにこのS-300ミサイル・システムをイランに引き渡しても、ロシアばかりを責めるわけにはいかない。

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●イラン革命防衛隊がロシアで S-300ミサイル防空システムの操作訓練
http://www.thetruthseeker.co.uk/?p=40887
【1月7日 TruthSeeker】

 特ダネというほどではないが、米・イスラエルとイランとの間の緊張の高まる中にあって、それなりの重要さを持つ内容である。というのも、2010年5月、イスラエルのデブカ(DEBKA)・サイトは、イランの革命防衛隊要員がS-300ミサイル・システムの操作訓練をロシア軍基地で受けていると報じた。

 ゲーム・チェンジャーと言われるこの S-300は、米・イスラエルの攻撃をかわすことができると考えられているミサイルである。

 ロシアとイランとは、2007年にこのシステムの売買契約を交わしたが、米・イスラエルからの圧力で引き渡しは引き延ばされてきた。

 その後、ロシアの外務省スポークスマンは、ロシアはイランにS-300システムを売却しない、という声明を発表した。

 しかしながら、2010年5月初旬、イランの革命防衛隊のS-300要員がロシアのミサイル基地で訓練を受けているのを欧米の情報機関が発見した、と報じられた。イスラエルのシモン・ペレス大統領がロシアのメドベージェフ大統領との話し合いの時、この問題を取り上げたら、誰にロシアが軍事訓練を授けようと他国の知ったことではない、とロシア側から厳しく言い返されたのだ。

 ホワイト・ハウスは核のアドバイザーを遣わして記者たちに、「アメリカはロシアに対して、最新鋭の防空システムをイランに引き渡すことは、米ロ関係に深刻な影響を与ええかねないということを明確にした」とびくびくしながら言わせた。

 ロシアに対するこの警告は、しかし似たようなぶっきらぼうな反応を引き起こした。その時メドベージェフ大統領と共にアラスカにいたラブロフ外相は、S-300の売却問題に関して、ロシアは「誰からもアドバイスを必要としていない」と述べたのだ。

 S-300を操作する要員を訓練したかもしれないという事実は、このミサイル・システムが究極的にはイランに引き渡されるというイランの希望的観測を一層強めることになった。

 従って、イラン空軍がイラン上空を飛行していたアメリカのRQ-170を捕獲した時、イラン政府は取引のためのカードを手にしたのである。

 その後、イランはロシアと中国の専門家らに無人機へのアクセスを条件的に許した。イスラエルのデブカ・サイトでは、条件の一つはロシアがイランに対してS-300システムの引き渡しを完了することである、と言っている。

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2012年にイラン攻撃か

◆1月6日

 イラン攻撃がどうも今年はありそうだ、という兆候がが多いという。このイラン攻撃に対してはこのブログでも再三に渡って取り上げてきたが、何らのメリットもありはしない。簡単に言えば、世界が大混乱に陥ることで、一時的なメリットめいたものが、吹き飛んでしまう結果となるのだ。

 以下の論文でも同じことを語っている。それでも今、イラン攻撃を語ることで、そしてそれに対してイランがホルムズ海峡封鎖を語ることで、石油の価格が上昇することで、そのメリットを確実に手にしている者が存在していることは確かである。ひょっとすれば、それが狙いかもしれない。

 いずれにしても、今年はこのイラン問題と、それに絡むかのようにしてあるシリア問題、そしてこの問題の背後にある、ロシア・中国その他 vs 欧米・イスラエル の対立も徐々に際立ってくる気配がある。

 この中で我が日本はいかなる態度をとるべきか、ということが問題となるが、中国の海洋覇権問題と取り組まねばならない日本は、アメリカの軍事力を貸してもらわねばならず、アメリカの意向に反対することはできないであろう。

 すると、せめてイラン問題で例えばロシアがそれを抑えようと努力する際には、日本が陰からの支援などをすることが考えられるが、そのようなことをができる政治家が日本にいるのかどうかは分からない。

 一番の問題は、下記の論文でも指摘しているように、イラン攻撃でメリットを得ることはできないということを理解することのできる、真っ当な精神を持った政治家がアメリカやイスラエルにいるのかどうか、なのだ。いることを祈るしかないが。

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●2012年のイラン攻撃は何故うまくいかないのか?
http://21stcenturywire.com/2012/01/05/why-attacking-iran-will-not-work-in-2012/
【1月5日 by Patrick Henningsen】

 ワシントン、ロンドン、パリ、テルアビブから出されるあらゆるサインが、2012年にイランに対する軍事的先制攻撃の可能性を示している。しかし、いくつかのキーとなる指標がその攻撃が失敗する、あるいは無理な作戦であるということを示しており、失敗すればアメリカとイスラエルは復活することはできないほどの軍事的・経済的な失墜を招き得ることを示している。

 最近、アメリカは内部からの崩壊現象を押し留めることができなかった、失敗した帝国の轍(わだち)の後を踏んでいる。アメリカは現在、財政赤字問題で苦しんでおり、それは自らの経済全体の破産を招きかねない脅威となっているし、更には世界的な影響力と利益の唯一の道具である米ドルの覇権に対する脅威となっている。


◆道徳的裏付けの欠如

 数世紀にわたって、ローマ帝国でさえ、世界を支配するにそれなりの道徳的な裏付けを必要としたものだ。2003年のイラク侵略・占領時も、アメリカに率いられた欧米社会とその同盟国は自分らの計画に従って侵略を開始するには、何らかの形を持った道徳的裏付けによる多国籍同盟軍が必要だった。

 イラクのいわゆる「大量破壊兵器」に対する米・英のキャンペーンが国連を舞台にして演じられ、米英の一般市民の世論を動かすことができ、イラクに対する戦争を正当化することができた。

 国連のIAEAがイランが核兵器を開発していると示唆することに何回も失敗したことで、道徳的裏付けは存在せず、タカ派とフォックス・ニュースの最大限の努力にも拘わらず、世論は軍事的行動を是認するまでには至っていない。唯一残された軍事的対決を可能にする技術は、アメリカ・イスラエル共謀のあるいはイギリスとの共演による自作自演劇であり、その中でイランが「最初の射撃」を行ったとすることである。 


◆戦争は既に始まっている

 アメリカが支援する制裁がイランの中央銀行に対して課せられることで、イランに関する限りは、戦争は既に始まっている。これはしかし、国連にはこのような前哨戦を正当化する証拠となるものは提出されてはいないのだ。しかし、制裁というものは心理戦争の最初のステップとなるものだ。この同盟側のあからさまな国連安保理審議の濫用の結果、いくつかの影響力ある諸国が既にアメリカ支援の制裁に不賛成であることを発表している。

 今週、韓国はアメリカの要望にも拘らず、2012年にイランからその原油の10%ほどを買い付けると発表した。中国はやはりアメリカの制裁への呼びかけに逆らって、イランとの貿易関係を再開するとしている。2012年には、イランを石油輸入先国のNO.2にする計画を中国では持っている。
  
 欧米側はイランとの関係で中国と対決するまでには至っていない。彼ら同盟勢力側は国際的なお墨付きを獲得することで四苦八苦していることを意味している。彼らはイランを短期的には痛めつけることができるかもしれないが、長期的に見れば、制裁は効果はないだろう。


◆「論戦」を継続させる欧米側のコスト

 2012年の初期に見えてくる事態は、欧米側が記者会見とそこで帝国主義的ご託宣をすることで、論戦を継続するということだ。

 しかし、この「戦争を気取ること」のコストでさえ、欧米側にとってはきつ過ぎるかもしれない。

 イラン攻撃の恫喝をすることだけで、自動的に石油の投機屋たちが価格を釣り上げるであろうし、それは欧米のビジネスや消費者にとっては受け入れがたい事態となる。これらの事態の流れは既に始まっている。ホルムズ海峡は、石油タンカーが世界でもっとも頻繁に通過する航路で、そこでは1700万バーレルの石油が毎日通過している。今週のイラン側の発表では、アメリカあるいはイスラエルから攻撃されれば、自国の領海を防衛するだけでなく、ホルムズ海峡を封鎖することで報復する、としたことで既に石油価格は八か月ぶりの高値となる1バーレル111.65ドルにまで釣り上げられた、とCNNが報じている。

 イラン軍がミサイルの発射実験をした後、ホルムズ海峡封鎖に対する懸念から、石油価格は5日4%上昇した。「これは主にイラン問題の故だ」と、エネルギー危機管理会社のキャメロン・ハノーバー社のピーター・ブテル・アナリストは語った。「それが強気の最大の要素だ」という。

 石油価格は4.2%上昇して1バーレル102.96ドルになった。これは5月10日1バレル103.88ドルとなった時以来の最高値である 

 この状況は、アメリカ・イランの睨み合いが2012年にも継続することでますます悪化している。ビジネス・インサイダー誌は本日、1バーレル150ドルになるかもしれないというシナリオの詳細を報じた。

 ギネス・グローバル・エナジー・ファンドのマネージャーは、もしイランがホルムズ海峡を封鎖し世界の石油輸出の15%を止めれば、1バレル150ドルに急騰すると警告した。
 

◆棚からボタ餅の石油産業界

 サウジアラビアに率いられるOPECの湾岸石油産出国である、UAE、クウェート、カタール、バーレーンは、国連の制裁と欧米側とイランとの間の不和によって確実に利益を獲得するだろう。

 GCC(湾岸協力理事会)外国会社とジョイント・ベンチャーには、アラムコ、ハーケン・オイル(ブッシュ家の会社)、テキサス・オイル、ユニオン・オイル・オブ・カリフォルニア、その他が含まれる。流通企業と小売り業者には、エクソン、ロイヤル・ダッチ・アンド・シェル、BP、シェブロン、ゲッティ、フィリップス、テキサコ、モービル、オクシデンタル・アンド・ガルフ、アモコが含まれる。これらの多国籍石油精製業者、流通業者、小売業者らは現金の棚ボタや株価の上昇を期待できるが、もっと重要なのは、これらのカルテルにとっては新しい高値をガソリン販売価格に設定できる機会となるだろう、ということだ。

 仮に欧米側とイランとの間の軋轢が弱まったとして、そして石油価格が1バレル100ドル以下に下がるようなことになっても、これら石油会社のカルテルは新しいガソリン販売価格の高値の水準を保とうとするだろう。原油価格とガソリン販売価格の間の関係性は、このカルテルの操作を立証するだろう。

 生活必需品である食糧やその他の品物の流通に必要な石油に大きく依存する、アメリカとヨーロッパの経済に対する影響としては、インフレを惹起することですでにインフレで痛めつけられている消費者にとっては恐るべきことになりかねない。同様に、このような危機は、帝国の聖杯である米ドルに悪影響を与えるだろう。

 アメリカの商品価格の急騰は来たる2012年の大統領選挙の期間に、アメリカ国内の石油掘削に対するモラトリアムを中止する件に関する古い議論を蒸し返すことになるだろう。もしもどこかモラトリアムが解かれて掘削が可能となれば、これまた石油産業界とその株主らの勝利になる。


◆地域紛争のリスク

 リビアに対する介入モデルから見て、NATOがイランで大規模な軍事作戦に介入するとは思えない。それは経済・政治的にみてあまりにリスクが大きいことになるだろう。

 アメリカもイスラエルも数十年間、本当の海の戦争をしたことはない。アメリカの場合、世界最大の海軍を持つ国であり、本格的な海の軍事衝突は第二次世界大戦時のものであった。イギリスがフォークランド戦争時に体験したように、アルゼンチン軍がレーダーの下から発射したフランス製のエグゾゼ・ミサイルが、イギリス海軍艦隊の主要艦を航行不能にしただけでなく、彼らのまずい考えに基づく戦争を支えていた大多数の大衆の支持を無くすような酷い恥辱でもあった。

 同様に、イラン側の防衛力はアメリカ海軍の艦船を1隻どころか何隻も沈める能力を持っている。そのような事態ともなれば、アメリカ国民の心情にショックと恐怖を植え付けるかもしれず、悪くすれば、ワシントンのタカ派たちに、復讐としてイランの一般市民に対する核攻撃を正当化させかねないのだ。アメリカもイスラエルも、議論のポイントを対イラン「戦術核」の展開に移している。そのような想定は、しばしば実際に行われる事柄の指標であるので、無視されるべきではない。

 アメリカないしはイスラエルによるいかなる核の使用も、欧米に対する世界的な強い反発を招くことだろう。最悪の場合、第三次世界大戦へと繋がる流れを作るものとされるか、最少でも、欧米を一方として、イラン、中国、パキスタン、ロシアを他方とする新冷戦につながる地政治学的情勢の分裂を起こすことだろう。

 
◆GCCが標的になる

 ヒラリー・クリントンやネオコンの戦争屋などの、イランの政権交代の主唱者がめったに語らないもう一つの要素は、イランに対するいかなる攻撃も、アメリカのすべての同盟国がほぼ間違いなく潜在的な反撃目標にされるということだ。それは、こういった裕福で発展しているGCC諸国は数百マイル離れたところで起きる戦争による被害を受けないままでいるということはないだろう、ということを意味する。イラク、カタール、そしてアフガンにあるアメリカ軍の主要施設もイランとの紛争時には恐らく標的とされるだろう。、

 石油君主国のUAE、クウェート、カタールは今のところ社会として生き残るために、高い生活水準と国内の完璧なセキュリティーと安定性に大きく依存している。このような脆弱な石油君主国は、法律と規則の非常に薄い化粧版に依存している。イランからの報復攻撃がこれらの脆弱なアメリカの同盟国に向けられたら、大量の人々、駐在員、金融資金などがその国から逃げ出し、ヨーロッパ、アメリカないしはシンガポールなど、その他のもっと安全な国々に向かうだろう。

 もし戦争が起きるとすれば、アメリカ、イギリス、フランス、イスラエル、それに彼らの同盟国らが戦うことになろう。しかし、GCCはそれでも報復攻撃から自らを防衛する必要性に迫られるだろう。2011年12月、アメリカはUAEとの間に最新鋭のTHAD(終末高高度防衛)ミサイル・システムを含む34億8000万ドルの兵器の取引を発表した。これは、イランと対峙する湾岸諸国間にミサイル防衛網を構築しようとするアメリカの努力の一環としてなされたものだ。これに加えて、アメリカとサウジアラビアは、2011年初期に、サウジアラビアのパトリオット・ミサイルを強化するために、17億ドルの取引契約を行った。また、クウェートは9億ドルで209GEM-T ミサイルを購入した。この地域ミサイル防衛戦略は、侵入してくるミサイルを撃ち落とすための、アメリカ海軍のイージス艦クラスの軍艦の艦上にある探知網チームのバックアップのある地上配備の迎撃兵器が必要となるだろう。

 これらはGCC諸国の重要な取得物ではあるが、イランからの報復攻撃から自国を守る包括的防衛対策というわけではなく、名誉ある伝統の中で、恐らくはGCC諸国の現金を支払わせる、アメリカの軍需産業の恐怖と戦争の喧伝による押し売りの結果そうなったのであろう。

 こういった全てを考慮すると、またGCC諸国に信じがたいほど溜め込まれている富を考慮すれば、数十年間の投資をしゼロから作り上げてきた進歩的なアラビアン・プロジェクトにたいするそのようなリスクを、資金を注いで獲得した利権を持つ者たちが冒すというようなシナリオは考えにくい。


◆爆撃後の反動

 GCCのリスクを別にしても、もしもアメリカやイスラエルがイランに対する先制攻撃を実行すれば、地域からの全面的な反発を予測できるだろうし、イスラム世界全体からの本気の反乱をみることになるだろう。イランから一般市民の犠牲者が出ることは避けることはできないだろうし、それは、欧米側が血の代償を支払うべきである、とみなされることになろう。そのような汎アラブ的な反乱はアメリカとイスラエルの、この地域での情勢をコントロールする能力を超えてしまうだろう。イスラエルにとってこのようなシナリオでの結末は悲惨なものとなろう。そしてしっぺ返しがこの地域で繰り返されるということだけが、予想されることになる。

 そのような騒乱の嵐を切り抜ける欧米側の可能性は、それを抑え込むか、ないしはレバノンやシリアに軍事基地を設け、イランの伝統的同盟国と現在レバノンに本拠を持つイスラエルの敵対勢力のヒズボラを中立化させることにある。ヒズボラの軍事能力を潰さねば、イスラエルは安心してイランに対する一方的な、ないしはアメリカと共同の攻撃に出れない。シリアやレバノンの攻略のタイム・テーブルから見て、イラン攻撃はあるとしても2012年後期ないしは2013年以降になるだろう。


◆巨大な汚い爆弾

 もしも、アメリカやイスラエルが俗にいうイランの核施設や原子炉を攻撃するとして、それが巨大な汚い爆弾になる可能性がある。その場合、一般人の犠牲者は100万人に及び、放射性物質の落下はアメリカの顧客であるアフガン、サウジアラビア、UAE、カタール、クウェート、可能性としてイスラエル・パレスチナ、トルコ、グルジア、パキスタン、インド、南ヨーロッパの一部などに広がるだろう。

 そのような放射線医学的出来事で、欧米側は間違いなくあらゆる環境のダメージや死滅現象に対して非難されることになろう。その結果、欧米側は国際的な評判を大きく損ない、巨額な資金的な賠償問題が生じ、それは彼らの既に弱体化している経済を最終的に不能にするだろう。もっとまずいことは、世界経済を長期的な不況に追い込むということだ。

 最もまともなアナリストは、イラン攻撃にはあまりに大きいリスクがあり、あまりに高い値であるということに合意している。そこで、実際の問題が残る。ワシントンとテルアビブには政策決定をする真っ当なアナリストがいるのか、ということだ。


◆イスラエルの行う努力

 イラクを攻撃せよという以前のAIPAC(アメリカ・イスラエル公共問題委員会)のキャンペーンのように、イランを孤立化させ悪党に見せる努力は、イスラエル・ロビー内で策定されたものだ。アメリカの各下院議員と上院議員に対するキャンペーンの寄付金の車輪が回転するので、ワシントンにいるあらゆる野心のある政治家たちにとっては「イスラエル・ファースト」が最優先事項になってしまっている。もしも誰か政府の高官がこの線から外れて、イスラエルを批判したりすれば、AIPACの機関、例えばADL(ユダヤ名誉棄損防止同盟)とかSPLC(=Southern Poverty Law Center:南部貧困法律センター)などがすぐさま行動に出て、公共役人を攻撃するためのPRキャンペーンを行うのである。

 イスラエル・ロビーはイランに対する先制攻撃は、イランが、「イスラエルを地図から抹消」したいと述べたのだから、と主張することだろう。大方のタカ派の戦争屋は、イランのアハマディネジャド大統領がそのような言葉を吐いた事実はないことを知ったら驚くであろう。それが分かったとしたら、イスラエルの考え方が変化するであろうか?変化すべきだ。しかし、そうはならない。そんな事実が無かったといういかなる証拠があっても、このイスラエル・ロビーとそのメディアのパートナーたちは、実際はあったかのようにしてこの間違った解釈を繰り返して宣伝するであろう。このように、アメリカの政治家らはあたかもイランに対する先制攻撃を正当化するかのように、彼ら自身でこの同じ間違った解釈による脅威を繰り返し語って、イスラエル・ロビーの解釈を受け入れるであろう。

 ここで最も重要なことは、イランがその兵器庫に核兵器を所有しているという、あるいは所有しそうになっているという反論の余地のないいかなる証拠も、アメリカもイスラエルも示すことができていない、という点である。彼らが戦争を始めるためにそのような証拠を作り上げることができたとしても、2012年の春あるいは夏には、イランに対する攻撃があることを示す兆候が、この大きなチェスボード上にあまりに多く存在している。
 しかしながら今のところ、はっきりとした勝利者は石油業界とOPEC諸国であり、彼らは世界中の中流階級から富を一握りの君主たちと石油会社の株主たちの手に移している。

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シリアに飛行禁止空域を設定しようとするイギリスの陰謀

◆1月3日

 欧米側が強く押したアラブ連盟のシリアに対する監視団を、今度は役立たずだと言って、撤収すべしと欧米メディアは叫んでいる。その理由は監視団は、無能だからだそうだ。

 自分達の都合のいいようにことが運ばないと、手のひらを返すように次の手に移ろうとする欧米側の意図は、今や問答無用でシリアに対する軍事的な介入として、飛行禁止空域の設定をもくろみだしているようだ。

 アラブ連盟の監視団は、シリアに入国していろいろな実態を見聞きしている。それを通して、シリアで何が起きているのか、実際に自分達の目で見て体験している。反政府デモが無いわけではないが、また同時にアサド政権支持のデモが大掛かりに何回も行われていることを目の当たりにしている。また武装勢力がテロ活動をしていることも分かってきた。だから、彼らが出す結論は欧米側の意図したものとかけ離れる可能性が出てきている。

 下のNHKの記事では、人権団体が云々と言っているが、どんな人権団体なのだ? その背後関係を検証したのか? 人権団体とはよくぞ言ったものである。200人が死亡した、と述べているが、その数字の信憑性はあるのか? 誰が数えたのか? 死体は確認したのか? 誰が殺害したのか? その信憑性は? NHKともあろうものが、欧米側から垂れ流される「情報」をそのまま踏襲して自分たちの「ニュース」として使っている。

 以前もNHKはシリアのアサド政権支持デモを反政府デモとして報じたことがあった。今もってその反省もないまま、同じような過ちを冒し続けいている。すこしは恥ずかしいと思うべきである。
 
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●イギリスのシリアに対する陰謀
http://www.presstv.ir/detail/218938.html
【1月2日 Press TV】

イギリス政府がNATO支援の飛行禁止空域をシリアに設定しようとしている最中に、イギリスのスパイがシリアに存在していることが分かってきた。

 イギリスの安全保障関係の高官が、イギリスの国防省はNATOが支援する飛行禁止空域をシリアに設定しようという陰謀を計画していること、このためイギリスのMI6とアメリカのCIAがシリアの国内情勢を調査していると暴露した、とイギリスのデイリー・スター紙が報じた。

 「MI6とCIAは浸透工作のためシリア国内にいる」とこの新聞が報じている。

 この新事実は、アラブ連盟の監視団を撤収させることで自分達の政府が偽りの証拠を持って軍事介入する陰謀を策定できるよう、欧米メディアがシリアにいるアラブ連盟の監視団の存在を批判するキャンペーンを開始している時に出てきた。

 しかしながら、独立系のアナリストらは、アラブ連盟の監視団の有効性については、欧米側がこのアラブ連盟をNGOとして使用しているとして、欧米メディアが行ってきたこの連盟に対する誇大宣伝に対して非常に懐疑的であった。

 「このアラブ連盟はアラブ世界ではずっと長期に渡って最も無価値な組織で、パレスチナ問題に対しても、イラク戦争に対しても、何もしなかった。そして今やこの組織は欧米によってNGOとして利用されている」とロンドンに本社のあるニュース・レフト・レビュー社のタリク・アリ編集委員は語った。

 更に、アリ編集委員は、「我々はシリアでは話し合いによる決着が必要」と語り、欧米のシリアに対する介入に対する警告を発した。

 「我々は欧米がリビアに対して行ったような介入は欲していない。介入の結果、リビアから毎日送られてくる情報は災厄そのものだった」とロシアの英語ニュース・チャンネルのロシア・トゥデイでのインタビューでアリは語った。

 デイリー・スターは、シリアに対する欧米の介入は、「リビアのようなやり方で進められるが、今回はリビア以上に大掛かりであり、犠牲者がずっと多いであろう」と報じた。

 更に、イギリスのこの新聞は、陰謀を計画しているイギリス政府の「最高のプライオリティー」は、イスラエルの安全保障であり、それは「イスラエルに脅威を与えているヒズボラをシリアが支援している」からである、と暴露した。

 シリアに対する欧米の介入は既に開始されている、とアリは述べた:「諸外国が何故シリア内で活動している武装勢力の存在を認めたがらないかよく分からない。それと言うのも、その武装勢力の存在を認めたがらない諸国の殆どは、彼らに武器などを供給している諸国なのだから」と語った。


●シリア 弾圧やまず監視団批判も
【1月2日 NHK】

 反政府デモが続くシリアに派遣されているアラブ連盟の監視団について、アラブ各国の代表で作る諮問機関は、「監視団はアサド政権による弾圧の停止という目的を達成できていない」と批判して、即時撤退を求める声明を発表しました。

 反政府デモに対する弾圧を続けるシリアのアサド政権に対し、アラブ諸国で作るアラブ連盟の監視団は、先月27日から弾圧をやめさせるための活動を始めています。しかし、人権団体によりますと、監視団の活動開始から2日までの6日間で200人以上が死亡していて、アサド政権による弾圧がやむ気配は一向にありません。こうしたなか、アラブ連盟の加盟国で作る諮問機関の「アラブ議会」は1日、「監視団はアサド政権による弾圧の停止という目的を達成できておらず、アサド政権による非人道的な行為を隠蔽するものになる」とする議長声明を発表し、監視団のシリアからの即時撤退を求めました。これに対しアラブ連盟は、批判は時期尚早だとして、少なくとも1か月間は監視団をシリアで活動させる方針ですが、監視団を巡っては、人選や能力を疑問視する声が人権団体などから上がっていて、批判が強まり始めています。

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