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カイロ大学で演説するオバマ大統領

◆6月5日

 中東問題がイスラム世界の最大の関心事であり、その中東問題とは、パレスチナ地方に1948年、イスラエル国家が出現したところから正式に始まっている。
 勿論、中東問題の根は深く、遡れば、アラビアのロレンスの時代から、つまり第1次世界大戦時代からのこととなり、バルフォア宣言や、サイコス・ピコ条約などに淵源がある。
 しかし、21世紀の今日、実際上の中東問題解決を目指そうとすれば、既に「独立」し60周年も終えたイスラエルの存在を前提として話を進めるしかなく、そこでオバマ政権のこの問題に対する姿勢の中心にあるのは、「パレスチナ国家独立問題」となる。
 
 今回、エジプトの大学でオバマ大統領は演説をし、パレスチナ国家独立問題では、いささかも「ぶれていない」姿勢を明確に示したことで、このオバマ政権時代にパレスチナ国家の独立が実現する可能性が非常に高まったと言える。
 そしてそのパレスチナ国家の実際が、「分断された青空収容所」のような状態になることを避けるため、イスラエルの、「西岸」に対する「入植」を改めていさめた。これは重要な点である。それは現イスラエル政権は、この西岸への入植を実践している政権であるから、そのイスラエル政府のやっていることを真っ向から否定する発言をイスラム教の国であるエジプトで、改めて述べたところに表れている。これ一つで、イスラム世界に対し、オバマ大統領の株は大いに上がったはずだ。

 こうして、イスラム世界がアメリカに対し、自分たちが、公平に扱われる、という感触を得たことになるので、今後のアメリカとイスラム社会との関係は良好な方向に向かっていくことになるだろう。
 反対に、現イスラエル政権は、パレスチナ国独立を願わない政権であるため、今後間違いなくアメリカと衝突する回数が増え、厳しい状況に追い込まれていくはずである。
 ただしイスラエルには、ユダヤ系という、多くが資金力のある者たちが各国に存在しており、特にアメリカでは、イスラエル・ロビーという存在があらゆる手段を弄して自分らの利益の確保を図ろうとしてきているため、オバマ大統領といえども自分のやりたいことをすぐにやれるような環境にはいない。
 従って今後は、こういった勢力との調整を進めながらじっくりと中東問題を進めて、最終的(任期の4年間中)にパレスチナ国独立を達成させていくしかない、ということになるだろう。

 ようするに、中東問題は、今後まだまだ紆余曲折が予見されるということ。

 しかし、総じて今回の演説内容を見ると、日本人などにはよく理解できる内容である。「日韓のように、伝統を保持しながら経済発展したように」、と伝統の重要性を語りながら、同時に未来に備えて技術を革新し、それにアメリカは協力する、と言ったり、イスラムには寛容の伝統があり、共存が不可欠だ、という指摘など、我々にもよく理解できるし、最後に世界平和が神の意思だし、それを実現させねばならない、と明言したことには感動さえ覚える。

 この人物が単に格調高い演説だけを行う者なのか、あるいはその言葉どおり、理想を目指して確実に前進していく真なる大国の指導者なのか、今後の行動を注視していきたい。

 以下、演説内容の要点というか、日本の各紙の電子版から、意義を要する点を挙げてみた。最後に毎日の記事を一つの例として記録用に挙げておく。

1.「イスラムは米国の不可欠な一部だ」
2.アメリカとイスラム社会とは「新たな始まり」を迎えようと呼びかけた。
3.「2国家共存」が「解決への唯一の道」と改めて強調した。
4.ユダヤ人入植地建設は「受け入れられない」と断言
5.核不拡散条約を順守する限りは、イランも含め全ての国は原子力を平和利用する権利がある
6.アフガニスタンに兵力や軍事基地を維持する考えはない。
7.「どんな体制も他の国が押しつけることはできないし、すべきでもない」として、民主化を理由に他国の体制転換を目指す考えのないことを印象づけた。
8.宗教の自由 イスラムには寛容の伝統がある。宗教の自由は人々の共存に不可欠だ。9.新エネルギーやきれいな水を作るための科学特使を任命し、イスラム圏と技術開発を進める。
10.世界平和が神の意思だ。私たちが実現させなければならない。


<毎日新聞電子版記事>

<米大統領>文化保持し経済成長した日韓のように…演説要旨
6月4日22時2分配信 毎日新聞

 オバマ米大統領が4日にカイロで行った演説の要旨は次の通り。

 世界のイスラム教徒と米国との「新たな始まり」を求めるためここに来た。相互の利益、尊敬に基づく。イスラムに関する否定的なステレオタイプと戦うのは米大統領の責務だ。

 ◆過激主義との戦い 安全保障に深刻な脅威をもたらす過激派とは容赦なく戦う。アフガニスタンには必要があって派兵したが、兵を維持したいわけではない。イラクは選択的に行われた戦争で、論争を引き起こした。外交や国際協調の必要性を米国に思い知らせた。米国は国家主権と法による支配を尊重し、イスラム社会と協力しながら自国を守る。

 ◆中東和平 米国とイスラエルの強い結束は断てない。ユダヤ人が祖国建設を希求するのは、悲惨な歴史体験に根付く。だがパレスチナの苦しみが続く現状は、認められない。パレスチナは暴力を、イスラエルは入植をやめる必要がある。2国共存が唯一の解決だ。

 ◆イラン、核問題 米国は冷戦中、民主的に選ばれたイラン政府を転覆させた。イランは、米国に対し暴力的だった。今後は互いを尊重し、話し合う。核への姿勢は揺るがない。米国は、いかなる国も核兵器を持たない世界を追求する。核拡散防止条約に従う国々はイランを含め、平和利用を認める。

 ◆民主主義 どの国も特定の政治体制を他国に押し付けられない。各国には伝統に根ざす原則がある。ただ発言の自由、法の下の平等、自由に生きる権利は人々から奪えない。

 ◆宗教の自由 イスラムには寛容の伝統がある。宗教の自由は人々の共存に不可欠だ。

 ◆女性の権利 髪を隠すのは女性差別ではない。教育を受けられないのは不平等だ。

 ◆経済発展 日韓のように文化を保持しながら経済成長した国もある。湾岸諸国は石油で豊かになったが、教育と革新が重要だ。今年、イスラム社会と米国との企業家サミットを開く。新エネルギーやきれいな水を作るための科学特使を任命し、イスラム圏と技術開発を進める。

 世界平和が神の意思だ。私たちが実現させなければならない。




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