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【1月20日】
「イスラエル・ロビーとアメリカの外交政策」の著者の一人である、ジョン・ミアシャイマー・シカゴ大学教授が今回のイスラエルのガザ侵攻についての論文を発表したので、それを抄訳し掲載します。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
http://www.amconmag.com/article/2009/jan/26/00006/
<また戦争し、また敗北するイスラエル>
ガザ攻撃はパレスチナ人を痛めはしたがイスラエルをより安全にしたとは言えない
ジョン・ミアシャイマー (シカゴ大学教授)
イスラエルとアメリカ人サポーターは、2006年のレバノン戦争からイスラエルは教訓を得て、ハマスに対する勝利の戦略を練り上げたはずだと言っている。
もちろん停戦がなされれば、イスラエルは勝利を宣言することだろう。それを信じてはならない。イスラエルは愚かにも、勝てない戦争をまた始めたのだから。
ガザでの作戦は2つの目標があったという。
1.ロケットと迫撃砲攻撃を止めさせること
2.レバノン戦争の失敗と、ガザからの撤退と、イランの核計画に対し何もできていなことから減衰したイスラエルの抑止力を復帰すること
しかしこれらは実際の目的ではない。本当の目的はイスラエルが自らの周囲を囲むパレスチナ人と長期に渡って共に生存する展望を持つことにある。
それは【拡大された戦略】である「大イスラエル」の創出のための戦略の一部である。
はっきり言えば、イスラエルの指導部はガザと西岸を含むパレスチナの統治権として知られるものを支配する決意でいる。
パレスチナ人は分断され、経済的には麻痺した飛び地という限定的自治区をもてるかもしれない。その一つがガザだ。
イスラエルは国境を支配しその動きを監視、制空権と制海権を持つ。
これを成就する鍵は、パレスチナ人に大きな苦痛を与えることにある。そうすることで彼らパレスチナ人は、自らを敗北の民と認識し、イスラエル人が彼等の将来の大方を決定する存在なのだと認めるようになるからだ。
この戦略は、1920年代に生み出され、1948年以来のイスラエルの政策に大きな影響を与えたもので、通常「鉄の壁」と呼ばれている。
ガザで起きていることはこの戦略と一致している。
2005年のイスラエルによるガザ撤退決定から見てみる。
通常の解釈は、イスラエルがパレスチナとの和平を真剣に探っていて、ガザからの撤退がその道を進む第一歩だと願ったから、と言うものだった。
しかしこれはまったくのフィクションだ。ハマスが権力を握る以前から、
イスラエルは「野外刑務所」を作り出そうとしていたし、パレスチナ人に多大な苦痛を与えることで、イスラエルの意図に従わせようとしていた。
アリエル・シャロンの側近であるドヴ・ワイスグラスはあからさまに、ガザからの撤退は、「和平プロセスを進めるためではなく、停止させることを狙っているからだ」、と語った。
この撤退について、ワイスグラスは、「これはホルムアルデヒドだ。こうすればパレスチナ人と政治プロセスはなくなるだろう」と言っている。更に、「撤退はパレスチナ人を大変なプレッシャー下に置くことになる。彼らは願わない袋小路に追い詰められることだろう」と述べた。
シャロンに提言したイスラエルの人口統計学者であるアルノン・ソファーは、このパレスチナ人に対するプレッシャーについて、「250万人の人間がガザに押し込めらる状況は、人間的には大惨事だ。この人々は気の狂ったイスラム根本主義者の援助で今よりもっと大きな動物になるだろう。国境でのプレッシャーは恐ろしいことになる。悲惨な戦争になるだろう。だから、我々が生き残りたいのならば、彼らを殺し、また殺し、殺しまくることになるだろう。終日、毎日だ。」
2006年1月、ガザから撤退して5ヵ月後のことだが、パレスチナでの選挙で、ハマスがファタハに決定的勝利を収めた。
これはイスラエルの戦略に問題を引き起こした。ハマスは民主的に選出され、よく組織されていて、ファタハのように腐敗しておらず、イスラエルの生存を認めていたからだ。
イスラエルはこれに対し、パレスチナに対する経済的締め付けを強めたが、効果は無かった。
実際、2007年3月には事態は悪化した。ハマスとファタハが連立政権を樹立したからだ。
ハマスの地位と政治権力は増大した。またイスラエルの「分裂させ、支配する」戦略は分解してしまった。
統一政府は更に悪いことには長期の停戦を要求してきた。
パレスチナは、もしイスラエルが逮捕や暗殺をやめ、ガザ国境を開放し経済締め付けを止めれば、すべてのミサイル攻撃を止めるというのだ。
イスラエルはそれを拒否しアメリカの支援をバックにハマスとファタハ間の内戦を画策した。しかしこの計画は、ハマスがガザからファタハを追い出すことで裏目に出た。
そこでイスラエルはガザの封鎖を強化し、パレスチナ人にいっそう大きな苦痛と困難を引き起こした。
ハマスはロケット弾の発射で応えつつ、それでも、長期の、できれば10年ほどの停戦を強調していた。
ハマスとしては戦力に格段の差があるので、停戦を求めていた。
イスラエルは停戦にはその頃まったく興味は無かったし、ガザの経済締め付けを強化していった。
しかし2008年の春になって、6月19日から停戦に合意した。この合意は公式には12月19日に終了し、その直後12月27日から戦争が始まった。
イスラエルの公式非難は、ハマスが停戦をひっくり返したというもの。
この見方はアメリカ国内では広く行き渡っているが、それは真実ではない。
イスラエルの指導部は初めから停戦には不合意だった。そしてイスラエルのエフド・バラク国防長官は、国防軍に対し2008年に停戦が交渉されていた時期に、今の戦争につながる戦争計画を作るよう指示を出していた。
更にはイスラエルの元国連大使のダン・ジラーマンは、紛争が始まる数ヶ月前からイスラエル政府は戦争を始めるためのプロパガンダ作戦を開始していた、と言っている。
反対に、ハマス側は最初の5ヶ月間で劇的にロケット弾発射数を減らしていた。9月と10月に2発、ハマスではないものたちがロケットを発射している。
この間、イスラエルは逮捕と暗殺をずっと継続してきていたし、ゆっくりと死に至らしめるガザ封鎖を継続していた。
そして11月4日、アメリカが大統領選挙投票をした時、ガザ内のトンネルを攻撃し、6人のパレスチナ人を殺害している。
これが、停戦の本格的違反行為となった。そして停戦合意を遵守していたパレスチナ側は、イスラエルの情報部とテロ情報センターによれば、ロケット弾による報復を行った。
6月以来のガザの静寂は破られた。
11月4日から12月27日の戦争開始までにパレスチナのミサイルで死んだイスラエル人はたったの一人だった。
再び暴力が増大したのでハマスは12月19日以降の停戦延長には興味を示さなかったが、停戦が効果なかったため驚くべきことではなかった。。
12月中旬、ハマス側は、イスラエルに対し、もしイスラエルがパレスチナ人の逮捕、暗殺を止め、また封鎖を解くならば、ハマスは長期の停戦の妥結に対する意思がある、と通知していた。
しかしイスラエル側は停戦期間を戦争準備期間として利用していたので、この提案を拒否した。
失敗した停戦が公式に終了した8日後、ガザ空爆が開始された。
もし、イスラエルがガザからのロケット攻撃をやめてほしいならば、ハマスと長期停戦を合意すればよかった。
また、イスラエルが本当にパレスチナ国家の創出に興味があるならば、統一政府と共に意味のある停戦を行い、ハマスの2国家案の再考を促すことができた。しかしイスラエルは別のアジェンダを持っていた。
彼らは「鉄の壁」戦略を用いガザのパレスチナ人に彼らにとって不幸な運命となる「大イスラエルの思想」を受容させる作戦に出た。
この残虐な政策はイスラエルのガザ戦争にはっきりと示されている。
イスラエルとその支持者らは、イスラエル軍が一般市民の犠牲者をできるだけ出さないよう努力していると言っている。
信じがたいことだ。ひとつにはイスラエルは報道陣を戦争地域に入らせない。ガザでイスラエル兵士や爆弾がどんな被害を出しているか知られたくないからだ。
同時にイスラエルは大規模なプロパガンダ作戦を行っている。
もっともはっきりしている証拠は、イスラエルはガザ住民全般を痛めつけるよう小さなガザの土地で1000人以上のパレスチナ人を殺害し、4000人以上に負傷させたことにある。
半分以上は一般市民だ。しかも多くは子供たちだ。
12月27日の一斉爆撃開始は、パレスチナ人の子供たちが学校を去る時間帯で、また主要な標的のひとつは警察学校卒業生だった。とてもテロリストとは呼べない者たちだ。
エフド・バラクは、「ハマスに対する全面戦争だ」、と語った。大学、学校、モスク、住宅、アパート、政府庁舎、救急車までも標的にした。
イスラエルの軍高官は、匿名希望で、イスラエルの拡張標的の背後にある思想は、「ハマスには多面性がある。それで我々は全面的にそれをたたく作戦だ。つまりあらゆることがイスラエルに反抗するテロを支援することにつながっているからだ」。これはつまり全員がテロリストであり、あらゆるものが正規の標的になりうるということだ。
イスラエルは無遠慮で、時々、本当は何を目指しているか語ることがある。
1月6日、国連の学校で40名の一般市民を殺害した後、イスラエルの新聞、ハアレツ紙は、「軍高官は、イスラエル軍がとてつもない火力を使用していることを認めた」と報じた。一人の高官は、「我々にとっては、慎重であれ、いうのは、侵略的であれ、ということなのだ。戦争に入れば直ちに我々は行動的になり、それがとてつもない被害をもたらす・・・ガザを逃げた人々が願わくは我々の作戦の恐ろしさのショックを描写してくれればと思う」と語った。
人は、ハアレツ紙が書くように、イスラエルが「150万のパレスチナ人に対する残虐で、全面的な戦争を行っているとしても、やがて戦争目的が達成され、世界の人々はガザで行われた悲惨な戦争を忘れていくだろう」、ということを認めるかもしれない。
しかしこれは、希望的観測だ。ガザの国境を開放し、逮捕と暗殺を止めねば、イスラエルはハマスのロケット弾発射を停止させることはできないだろう。
イスラエルはロケットや迫撃砲の供給をやめさせると言っているが、イスラエル艦船の目を盗んで、あるいは秘密のトンネルを通して物資は供給され続けるだろう。
また正規のルートでガザに搬入される物資をすべて監視することもできない。
イスラエルはガザを占領し地域を封鎖することもできよう。
そしてイスラエルが大規模な部隊を展開すれば、ロケット弾発射はやむかもしれない。
しかし反抗的な民衆を支配しつづけることは大変は負担になる。
結局はガザを撤退せざるをえなくなるだろう。そうなればまたロケット弾攻撃は始まる。そしてイスラエルがロケット弾発射をやめさせられなければ、イスラエルの抑止力は弱体化するのであり、増大はしない。
より重要なことは、イスラエルがハマスを屈服し、大イスラエル内のちっぽけな自治領で満足させられると考えることに無理があるのは、イスラエルは1967年以降、彼らを屈辱的に扱い、拷問し、殺戮してきたが、彼らを黙らせることはできなかったからだ。
実際、ハマスのイスラエルの残虐さに対する姿勢は、あなたを殺さぬものはあなたを強める、とニーチェが言ったことが正しいことを示している。
しかしたとえ思ってもみなかったことが起き、パレスチナ人が屈服したとしても、イスラエルはそれでも敗北する。それはそこが人種差別国家になるからだ。
エフド・オルメルト首相は、イスラエルが、「もしパレスチナ人がまともな国家を持てなくなれば、南アフリカ連邦型の紛争に直面することだろう」と語った。
「もしそれが起これば、イスラエル国家はそれでおしまいだ」と語った。しかし彼は入植が進められることに対し何もしなかったし、まともなパレスチナ国家の建設に対しても何もしなかった。それに反して、鉄の壁戦略に依存してしまった。
そしてガザでイスラエルが行った恐ろしい懲罰の実態を世界の人々がすばやく忘れ去るだろうということにも、あまり期待はできない。
その破壊の規模は看過するにはあまりに大き過ぎるからだ。少なくともパレスチナの人々のことを心配しているアラブ諸国やイスラム諸国の人々にとっては、だ。
更に、この長い紛争についての理解は、最近欧米諸国でも、著しい変化が起きている。
そしてイスラエルに対し同情的だった者たちも、イスラエルが迫害者であり、パレスチナが犠牲者なのだという理解の仕方をするようになっている。
ガザで起きていることは、この変化を一層進めるだろう。そしてそれは長期に渡ってイスラエルの評判の汚点とみなされることになろう。
戦場で何が起きても、ガザでの戦争にはイスラエルは勝利することはできない、ということだ。
実際は、ディアスポラの友人と言われる人々からの支援を大量に受けながら、彼らは長期的には自らを危機に追い込むことになる戦略を実践し続けているのだ。
「イスラエル・ロビーとアメリカの外交政策」の著者の一人である、ジョン・ミアシャイマー・シカゴ大学教授が今回のイスラエルのガザ侵攻についての論文を発表したので、それを抄訳し掲載します。
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http://www.amconmag.com/article/2009/jan/26/00006/
<また戦争し、また敗北するイスラエル>
ガザ攻撃はパレスチナ人を痛めはしたがイスラエルをより安全にしたとは言えない
ジョン・ミアシャイマー (シカゴ大学教授)
イスラエルとアメリカ人サポーターは、2006年のレバノン戦争からイスラエルは教訓を得て、ハマスに対する勝利の戦略を練り上げたはずだと言っている。
もちろん停戦がなされれば、イスラエルは勝利を宣言することだろう。それを信じてはならない。イスラエルは愚かにも、勝てない戦争をまた始めたのだから。
ガザでの作戦は2つの目標があったという。
1.ロケットと迫撃砲攻撃を止めさせること
2.レバノン戦争の失敗と、ガザからの撤退と、イランの核計画に対し何もできていなことから減衰したイスラエルの抑止力を復帰すること
しかしこれらは実際の目的ではない。本当の目的はイスラエルが自らの周囲を囲むパレスチナ人と長期に渡って共に生存する展望を持つことにある。
それは【拡大された戦略】である「大イスラエル」の創出のための戦略の一部である。
はっきり言えば、イスラエルの指導部はガザと西岸を含むパレスチナの統治権として知られるものを支配する決意でいる。
パレスチナ人は分断され、経済的には麻痺した飛び地という限定的自治区をもてるかもしれない。その一つがガザだ。
イスラエルは国境を支配しその動きを監視、制空権と制海権を持つ。
これを成就する鍵は、パレスチナ人に大きな苦痛を与えることにある。そうすることで彼らパレスチナ人は、自らを敗北の民と認識し、イスラエル人が彼等の将来の大方を決定する存在なのだと認めるようになるからだ。
この戦略は、1920年代に生み出され、1948年以来のイスラエルの政策に大きな影響を与えたもので、通常「鉄の壁」と呼ばれている。
ガザで起きていることはこの戦略と一致している。
2005年のイスラエルによるガザ撤退決定から見てみる。
通常の解釈は、イスラエルがパレスチナとの和平を真剣に探っていて、ガザからの撤退がその道を進む第一歩だと願ったから、と言うものだった。
しかしこれはまったくのフィクションだ。ハマスが権力を握る以前から、
イスラエルは「野外刑務所」を作り出そうとしていたし、パレスチナ人に多大な苦痛を与えることで、イスラエルの意図に従わせようとしていた。
アリエル・シャロンの側近であるドヴ・ワイスグラスはあからさまに、ガザからの撤退は、「和平プロセスを進めるためではなく、停止させることを狙っているからだ」、と語った。
この撤退について、ワイスグラスは、「これはホルムアルデヒドだ。こうすればパレスチナ人と政治プロセスはなくなるだろう」と言っている。更に、「撤退はパレスチナ人を大変なプレッシャー下に置くことになる。彼らは願わない袋小路に追い詰められることだろう」と述べた。
シャロンに提言したイスラエルの人口統計学者であるアルノン・ソファーは、このパレスチナ人に対するプレッシャーについて、「250万人の人間がガザに押し込めらる状況は、人間的には大惨事だ。この人々は気の狂ったイスラム根本主義者の援助で今よりもっと大きな動物になるだろう。国境でのプレッシャーは恐ろしいことになる。悲惨な戦争になるだろう。だから、我々が生き残りたいのならば、彼らを殺し、また殺し、殺しまくることになるだろう。終日、毎日だ。」
2006年1月、ガザから撤退して5ヵ月後のことだが、パレスチナでの選挙で、ハマスがファタハに決定的勝利を収めた。
これはイスラエルの戦略に問題を引き起こした。ハマスは民主的に選出され、よく組織されていて、ファタハのように腐敗しておらず、イスラエルの生存を認めていたからだ。
イスラエルはこれに対し、パレスチナに対する経済的締め付けを強めたが、効果は無かった。
実際、2007年3月には事態は悪化した。ハマスとファタハが連立政権を樹立したからだ。
ハマスの地位と政治権力は増大した。またイスラエルの「分裂させ、支配する」戦略は分解してしまった。
統一政府は更に悪いことには長期の停戦を要求してきた。
パレスチナは、もしイスラエルが逮捕や暗殺をやめ、ガザ国境を開放し経済締め付けを止めれば、すべてのミサイル攻撃を止めるというのだ。
イスラエルはそれを拒否しアメリカの支援をバックにハマスとファタハ間の内戦を画策した。しかしこの計画は、ハマスがガザからファタハを追い出すことで裏目に出た。
そこでイスラエルはガザの封鎖を強化し、パレスチナ人にいっそう大きな苦痛と困難を引き起こした。
ハマスはロケット弾の発射で応えつつ、それでも、長期の、できれば10年ほどの停戦を強調していた。
ハマスとしては戦力に格段の差があるので、停戦を求めていた。
イスラエルは停戦にはその頃まったく興味は無かったし、ガザの経済締め付けを強化していった。
しかし2008年の春になって、6月19日から停戦に合意した。この合意は公式には12月19日に終了し、その直後12月27日から戦争が始まった。
イスラエルの公式非難は、ハマスが停戦をひっくり返したというもの。
この見方はアメリカ国内では広く行き渡っているが、それは真実ではない。
イスラエルの指導部は初めから停戦には不合意だった。そしてイスラエルのエフド・バラク国防長官は、国防軍に対し2008年に停戦が交渉されていた時期に、今の戦争につながる戦争計画を作るよう指示を出していた。
更にはイスラエルの元国連大使のダン・ジラーマンは、紛争が始まる数ヶ月前からイスラエル政府は戦争を始めるためのプロパガンダ作戦を開始していた、と言っている。
反対に、ハマス側は最初の5ヶ月間で劇的にロケット弾発射数を減らしていた。9月と10月に2発、ハマスではないものたちがロケットを発射している。
この間、イスラエルは逮捕と暗殺をずっと継続してきていたし、ゆっくりと死に至らしめるガザ封鎖を継続していた。
そして11月4日、アメリカが大統領選挙投票をした時、ガザ内のトンネルを攻撃し、6人のパレスチナ人を殺害している。
これが、停戦の本格的違反行為となった。そして停戦合意を遵守していたパレスチナ側は、イスラエルの情報部とテロ情報センターによれば、ロケット弾による報復を行った。
6月以来のガザの静寂は破られた。
11月4日から12月27日の戦争開始までにパレスチナのミサイルで死んだイスラエル人はたったの一人だった。
再び暴力が増大したのでハマスは12月19日以降の停戦延長には興味を示さなかったが、停戦が効果なかったため驚くべきことではなかった。。
12月中旬、ハマス側は、イスラエルに対し、もしイスラエルがパレスチナ人の逮捕、暗殺を止め、また封鎖を解くならば、ハマスは長期の停戦の妥結に対する意思がある、と通知していた。
しかしイスラエル側は停戦期間を戦争準備期間として利用していたので、この提案を拒否した。
失敗した停戦が公式に終了した8日後、ガザ空爆が開始された。
もし、イスラエルがガザからのロケット攻撃をやめてほしいならば、ハマスと長期停戦を合意すればよかった。
また、イスラエルが本当にパレスチナ国家の創出に興味があるならば、統一政府と共に意味のある停戦を行い、ハマスの2国家案の再考を促すことができた。しかしイスラエルは別のアジェンダを持っていた。
彼らは「鉄の壁」戦略を用いガザのパレスチナ人に彼らにとって不幸な運命となる「大イスラエルの思想」を受容させる作戦に出た。
この残虐な政策はイスラエルのガザ戦争にはっきりと示されている。
イスラエルとその支持者らは、イスラエル軍が一般市民の犠牲者をできるだけ出さないよう努力していると言っている。
信じがたいことだ。ひとつにはイスラエルは報道陣を戦争地域に入らせない。ガザでイスラエル兵士や爆弾がどんな被害を出しているか知られたくないからだ。
同時にイスラエルは大規模なプロパガンダ作戦を行っている。
もっともはっきりしている証拠は、イスラエルはガザ住民全般を痛めつけるよう小さなガザの土地で1000人以上のパレスチナ人を殺害し、4000人以上に負傷させたことにある。
半分以上は一般市民だ。しかも多くは子供たちだ。
12月27日の一斉爆撃開始は、パレスチナ人の子供たちが学校を去る時間帯で、また主要な標的のひとつは警察学校卒業生だった。とてもテロリストとは呼べない者たちだ。
エフド・バラクは、「ハマスに対する全面戦争だ」、と語った。大学、学校、モスク、住宅、アパート、政府庁舎、救急車までも標的にした。
イスラエルの軍高官は、匿名希望で、イスラエルの拡張標的の背後にある思想は、「ハマスには多面性がある。それで我々は全面的にそれをたたく作戦だ。つまりあらゆることがイスラエルに反抗するテロを支援することにつながっているからだ」。これはつまり全員がテロリストであり、あらゆるものが正規の標的になりうるということだ。
イスラエルは無遠慮で、時々、本当は何を目指しているか語ることがある。
1月6日、国連の学校で40名の一般市民を殺害した後、イスラエルの新聞、ハアレツ紙は、「軍高官は、イスラエル軍がとてつもない火力を使用していることを認めた」と報じた。一人の高官は、「我々にとっては、慎重であれ、いうのは、侵略的であれ、ということなのだ。戦争に入れば直ちに我々は行動的になり、それがとてつもない被害をもたらす・・・ガザを逃げた人々が願わくは我々の作戦の恐ろしさのショックを描写してくれればと思う」と語った。
人は、ハアレツ紙が書くように、イスラエルが「150万のパレスチナ人に対する残虐で、全面的な戦争を行っているとしても、やがて戦争目的が達成され、世界の人々はガザで行われた悲惨な戦争を忘れていくだろう」、ということを認めるかもしれない。
しかしこれは、希望的観測だ。ガザの国境を開放し、逮捕と暗殺を止めねば、イスラエルはハマスのロケット弾発射を停止させることはできないだろう。
イスラエルはロケットや迫撃砲の供給をやめさせると言っているが、イスラエル艦船の目を盗んで、あるいは秘密のトンネルを通して物資は供給され続けるだろう。
また正規のルートでガザに搬入される物資をすべて監視することもできない。
イスラエルはガザを占領し地域を封鎖することもできよう。
そしてイスラエルが大規模な部隊を展開すれば、ロケット弾発射はやむかもしれない。
しかし反抗的な民衆を支配しつづけることは大変は負担になる。
結局はガザを撤退せざるをえなくなるだろう。そうなればまたロケット弾攻撃は始まる。そしてイスラエルがロケット弾発射をやめさせられなければ、イスラエルの抑止力は弱体化するのであり、増大はしない。
より重要なことは、イスラエルがハマスを屈服し、大イスラエル内のちっぽけな自治領で満足させられると考えることに無理があるのは、イスラエルは1967年以降、彼らを屈辱的に扱い、拷問し、殺戮してきたが、彼らを黙らせることはできなかったからだ。
実際、ハマスのイスラエルの残虐さに対する姿勢は、あなたを殺さぬものはあなたを強める、とニーチェが言ったことが正しいことを示している。
しかしたとえ思ってもみなかったことが起き、パレスチナ人が屈服したとしても、イスラエルはそれでも敗北する。それはそこが人種差別国家になるからだ。
エフド・オルメルト首相は、イスラエルが、「もしパレスチナ人がまともな国家を持てなくなれば、南アフリカ連邦型の紛争に直面することだろう」と語った。
「もしそれが起これば、イスラエル国家はそれでおしまいだ」と語った。しかし彼は入植が進められることに対し何もしなかったし、まともなパレスチナ国家の建設に対しても何もしなかった。それに反して、鉄の壁戦略に依存してしまった。
そしてガザでイスラエルが行った恐ろしい懲罰の実態を世界の人々がすばやく忘れ去るだろうということにも、あまり期待はできない。
その破壊の規模は看過するにはあまりに大き過ぎるからだ。少なくともパレスチナの人々のことを心配しているアラブ諸国やイスラム諸国の人々にとっては、だ。
更に、この長い紛争についての理解は、最近欧米諸国でも、著しい変化が起きている。
そしてイスラエルに対し同情的だった者たちも、イスラエルが迫害者であり、パレスチナが犠牲者なのだという理解の仕方をするようになっている。
ガザで起きていることは、この変化を一層進めるだろう。そしてそれは長期に渡ってイスラエルの評判の汚点とみなされることになろう。
戦場で何が起きても、ガザでの戦争にはイスラエルは勝利することはできない、ということだ。
実際は、ディアスポラの友人と言われる人々からの支援を大量に受けながら、彼らは長期的には自らを危機に追い込むことになる戦略を実践し続けているのだ。
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