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イスラエルのテルアビブに現れた「ギロチン」

◆8月16日

 イスラエルの大衆抗議デモは鎮静化の兆しを見せることなく、ついに8月10日にはテルアビブにフランス革命の象徴ともなった、「ギロチン」が現れた。

 このブログでは大手の主流メディアが報じたがらないイスラエルの今回のデモ騒乱状況を、既に8月9日号の「イスラエルの凋落が始まった」や、8月6日号の「イスラエルで再び大規模デモ」で示してきた。

 このギロチンは強烈である。本物と見まごうほどの作りだ。勿論そのメッセージは明確だ。彼らは革命ないしはそれに準じるものを起こしている自覚がある、ということであり、ギロチン台の下に引っ張られてくるべき人物はネタニヤフ首相であり、その他の閣僚たちだ、というメッセージだ。勿論、実際にそれを使用するということではなく、あくまで強いメッセージを送っているというサインだろう。

 しかし「アラブの春」がめぐりめぐって自分達のところに現れるとは、さすがのイスラエルの諜報部員たちも予期してはいなかったであろう。この大規模デモはイスラエルの建国以来始めてのことであるが、世界の主流メディアはユダヤ系だけあって報じていないし、日本でも報じられていない。

 しかも抗議デモをしている者たち、特に男達はイスラエル国防軍で兵役に就いていた者たちが殆どだから、いざとなれば、軍隊的なノウハウをデモに採用する可能性があり、イスラエルの警察も軍隊もうかつには強硬手段に打って出る事は難しいという

 イスラエルに憲法が存在しない、ということからもイスラエルの「民主主義」がこのブログで指摘したように、擬似民主主義である、ということが見て取れる。ようするにいざとなれば、いくらでも「議会」で法律を作ってやりたいことをやれる余地を残しているのだ。その議会の議員数に不公平があるのだから、結局は非民主的な組織がイスラエルなのだ。

 そのツケが今回の建国以来の大規模デモという形で噴出したのである。イスラエルのシオニスト支配構造が変化していくきっかけとなりうる今回のデモ騒乱状態である。このように、永遠なるものは存在せず、時間の経過と共に、事態は流転生成変化していく。

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●「ギロチン」がイスラエルのテルアビブに現れた
http://www.roytov.com/articles/guillotine.htm
【8月14日 ロイ・トブ】

 私はイスラエルの破壊されている内部構造が終焉を迎えるだろうと長いこと指摘してきた。イスラエル人とユダヤ人はしばしば、難民で政治犯という環境にいる私のゆえの誇大表現だと私のことを非難してきた;ところが最近数ヶ月、我々は社会的反乱とも思ええる事態を目撃している。

 2011年7月の終わりまでに、コッテージ・チーズ価格の急上昇のためイスラエルで社会的抗議運動が始まった。一般家庭の主要な料理の材料だ。このような事態が生じたのは初めてのことである。どんなにそれが些細なことであっても、政府に対する抗議運動の禁止というイスラエルの心理的バリアーが破れたら、何物も以下のような事態が生じるのを止めることはできなかった。この8月中旬にまでも続いている大衆抗議運動、今回は住宅問題に対する抗議運動の波が始まった。

 イスラエルの小さなアパートが生涯の住宅ローンを必要とし、それが彼らを国家の奴隷にしてしまう。この抗議運動は、地方委員会の手に建設プロジェクト承認の権威を与えるという国家住宅建設委員会法をクネセト(議会)が承認したことから始まった。この委員会は国家とゼネコンの手に握られるだろう。これはつまり、貧乏人には家は持てないことを意味する。およそ80%の人々が平均給与以下の収入である(これは、高額所得者と最低取得者の間の給与の大きな開きのため可能な話となる)し、平均給与は平均住宅ローンを支払うには不十分なのだ。そんなわけで、形を変えた奴隷制が裏口から国の中に導入されたのだ。私はテルアビブで怪物(大規模デモ)の中に驚くべき抗議運動の実態を見た。

 現在まで継続してきた抗議運動は8月10日に頂点を迎えた。フランス革命のシンボルともいえるギロチンがロスチャイルド通りに設置されたのである。この通りはラビン広場に近い。この広場は抗議運動する者たちが集合しテント村の中心となり何千ものデモ参加者らが生活しているところだ。このギロチンの実際の大きさを考えれば、ネタニヤフ首相が抗議運動のメッセージに気づかなかったということはありえないことだろう。

 イスラエル政府はこのギロチンにどう対応するだろうか? ネタニヤフは自分の首の周りをこの数日間はより慎重に剃っていたか? ハアガフ・ハイェフディ(シン・ベト<=防諜機関>のユダヤ部門)が抗議運動者らの間にあって有害なゴキブリとして動いていたことは間違いない。彼らは台頭する指導者たちを注視し、不法に彼らに対する証拠を集め偽造し、サボタージュのアドバイスを与え、全般的には人々が政府に決して許さないようなことを何でもやっている。今のところ警察と軍は最後の手段として留まっている。ネタニヤフが抗議運動が当然なことであるかのように見せようと努力しているのも、イスラエルにとって最も重要な秘密が市民の目から隠されていることが重要だからだ。市民は警察国家に住んでいることに目覚めてはならないのだ。まやかしのショーが演じられねばならないのだ。

 リーダー達をうまく沈黙させられなければ、物理的な障害が現れるだろう。テルアビブの非常に暑い湿気の多い8月に、水道水の供給が合理的な説明で制限されるかもしれない。この地帯での携帯電話交信に障害が出るかもしれない。抗議運動が行われている地帯に通じる道路に工事が突然始められるかもしれない。停電が時折生じるかもしれない。生活の制度的な混乱だ;これは人々が政府に与えた権力に反するものだ。ネタニヤフは暫くは自分で剃ることを続けたいのだ。 

 どちらが勝つのか? ネタニヤフはすぐ止めさせられるか、あるいは抗議運動家たちが解散させられるのか? 警察であろが軍であろうが暴力的に50万人のデモ隊を解散させることはできないだろう。彼らは多くが地方からの者たちである。男たちの多くは軍隊の経験者だ;多くはイスラエル国防軍(IDF)で兵役に従事した者たちだし、西岸やガザで積極的に一般人を弾圧してきた者たちだ。更には、IDFは予備役兵を募集することはできないだろう。抗議者らの中に予備役兵らはいる。治安部隊が抗議運動が行われている地域にハデに投入されるような事態の悪化があれば、民兵組織が瞬時に出来るだろう。

 イスラエル政権の最良の賭け所は、イスラエル市民が政治的に準備できていないという事実だ。自分達の国の差別的な法律の拡大あるいは憲法がないことの意味を理解せずに、殆どの市民は自分達が民主主義の国に住んでいると考えている。一般市民は自分達の国家の成立が不法なものであることを知らない。ネタニヤフは現在なんとかやっている。暫くすると、国連総会がニューヨークで開催される。9月20日は、パレスチナ独立が議論されることになっている。これは恐らくは140カ国以上の大規模な支持を受けることになるだろう。太平洋とカリブ海にあるいくつかの諸国は、イスラエルからの情報・軍事面での援助と引き換えに支持しないという約束をしているが、それだけだ。これが承認された数時間後には、パレスチナ人はシオニストからの独立を宣言するかもしれない。

 キッシンジャーはかつて、イスラエルにある一切のことは、内部的な政治問題だと述べた。パレスチナの独立宣言もまた内部的な政治問題の一つである。ネタニヤフは恐らくは、この機会を利用してオスロ合意を破棄しパレスチナに対する宣戦布告をするかもしれない。するとすぐ国防大臣がIDFの予備役兵を招集するかもしれない。抗議者らはディレンマに陥るかもしれない。600万ドルの質問は:彼らは抗議デモを放棄して自分達を奴隷化する国家の軍隊に入るのか?

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