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ナスララ師の写真を掲げる女性

◆7月10日

 元CIA職員によるイスラエルのイラン攻撃についての可能性についての論評が、インタビュー記事として今年の初めに語られていた。
 ロバート・ベーア氏は、イラン攻撃はほとんど不可能、という見解を示している。それはやはり攻撃した後のイランの反撃を考慮すれば、自然とその結論になる、というのだ。専門家はそのようにみるだろう。
 だからこそ、今回のイランの大統領選挙での、CIAのイラン内の「不安定化作戦」のような工作が必要である、とも言えるのであろう。

 さて、その不可能といえるイラン攻撃をやりかねないイスラエルを、アメリカがどう説得して収めるか、という非常に困難な使命がオバマ大統領にあると言えよう。


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●ロバート・ベーア:米国内にあるイラン攻撃に対する軍の拒否姿勢
http://www.voltairenet.org/article160904.html
【7月6日 Omid Memarian】
 今年始めのインター・プレス・サービスのインタビューに答えて、ガザ紛争の動向とイランの革命防衛隊、ハマス、ヒズボラに関する議論をロバート・ベーア氏が行っている。 「オバマ大統領はイスラエルからずっとイラン攻撃の圧力を受けているが、これはガザとレバノンと連携している」とベーア氏は語る。ベーア氏は元CIA職員で、「我々の知る悪魔:イラン指導層との関係で」の著者である。

 インタビューの抄訳

IPS: あるアナリストらは、イスラエルとヒズボラの34日戦争後4年経って、ガザのハマスを攻撃することは、その先イランの核施設攻撃で終了する、というより大きな計画の一部であると見る向きもあるが、どうか?
ベーア氏: いや、イラン攻撃には軍の拒否と言う問題があると思う。イラン攻撃は不可能だ。

IPS: どうして不可能なのか?
ベーア氏: つまり、一つには、ペルシャ湾でのイランの反撃がある。イランはハマスみたいに攻撃されはしないし、その反撃もハマスのように狭い範囲ではない。もし攻撃されれば、イランの反撃は世界的な広がりを持つものになるだろう。間違いない。これが彼らの抑止力である。イランについては多くの教訓を理解することが重要だ。
 もしイラン革命防衛隊ウェブ・サイトを見れば、彼らがイラン・イラク戦争で学んだ教訓を見ることができる。この戦争は消耗戦だった。いつまでも続くものだ。勝利することはできない。特にアメリカに対してはだ。それで彼らは次の、非対称戦能力を高めた。ゲリラ戦だ。これは非常に効果的だ。
 イランの優れた頭脳と精神の持ち主たちは、パスダラン(革命防衛隊)に入った。彼らは必ずしも狂信者ではない。ある意味、彼らは愛国者という者たちだ。そして私の経験から言うと、このパスダランにいる人々は、作戦の面から言えば、イスラエルとヨルダンを含む中東地域での、情報、ゲリラ戦、政治思想における最も能力の高い人々である。
 彼らは自分の任務を知っている。そして彼らはイランにおける政治的な傾向のいずれにも組しないものたちだ。

IPS: イスラエルによるイランの核施設の限定的な攻撃も考えられないか?特に、最近ニューヨーク・タイムズ紙が報道したもので、昨年イスラエルの指導層がブッシュ大統領(当時)に持ちかけたような攻撃のことだが。
ベーア氏: まったく考えられない。ブッシュ氏でさえそれを理解している。ニューヨーク・タイムズ紙は、ブッシュ氏が拒否した、と言う点では正しい。中東ではバランス・オブ・パワーがイランと米国の間に存在する。それは正しくバランス・オブ・パワーなのだ。航空機、戦車、潜水艦の数とかを言っているのではない。しかし暴力の独占と言う意味では平等だ、ということ。この点では平等だということは間違いないことなのだ。例えば我々はテヘランを爆撃することはできるだろう。しかしそれでどうだ、というのだ。それは丁度ガザで国連ビルをイスラエルが空爆したようなものだ。イスラエルはそれで何かを得たか、というのだ。何も、だ。確かに破壊することはできたが、それが何を彼らにもたらしたのか、というのだ。ハマスは相変わらず存在している。
 イランにあるすべての軍事施設は2週間もあれば空爆することはできるだろう。しかしイランは相変わらずそこに存在している。そして新しい力を生み出す能力を持っているし、このような紛争から生み出される力はより一層強固なものであろう。そしてイランの力は経済的だ。石油の価格はいかなる違いももたらさない。ヒズボラを武装化し、ハマスを支援するのは、お金とは関係ない。石油の価格が1バレル10ドルになっても、イランにとって国防は問題ないのだ。

IPS: オバマ氏は繰り返しイランの指導層と対話することを語ってアメリカの外交の変化をもたらそうとしている。イラン担当顧問にデニス・ロス氏を任命したことは、彼の約束したことに対してどう影響を与えるだろうか?
ベーア氏: デニス・ロス氏はイスラエルには受けがいい。もしイランとの対話が始まれば、イスラエルはロス氏が彼らを裏切るようなことはしない、と見ている。つまり、彼らは何年も掛けてロス氏をテストしてきているのだ。ロス氏はユダヤ系でイスラエルに対しては誠実だった。おかしな物も含めてイスラエルのプロジェクトに従って今まで来ている。対話が始まっても、イスラエルとしてはサプライズに出会うことはないと思っている。もしオバマ氏が新しい人物を入れても、イスラエルの知らないハーバード大学の教授とか、彼らはその人物を動けないようにし、その後には大きな政治的なブローバックが待ち受けているだろう。

IPS: 中東問題でのロス氏の位置に関して、特に過去10年のイラン問題では、オバマ大統領はどう新しい外交方針を取り入れていくのか?
ベーア氏:政治的にこれを通していくにはオバマ氏は民主党の後押しが必要だ。それで彼はデニス・ロス氏や、国家情報局長のデニス・ブレーヤー氏のような人物を招きいれたのだ。彼としては、吟味されてない人物を引き入れるわけにはいかないし、民主党に反対させるわけにもいかない。それはもしイランとの交渉が始まれば、イスラエルの沈黙の干渉があるからだ。イスラエルは関係者だからだ。
 アメリカの中東政策ではイスラエルの承諾と言うものなしには何もできない。少なくともある程度は。イスラエルを無視することはできない。

IPS: それはどうしてですか?
ベーア氏:ニューヨーク市を見てみなさい。主要新聞を。彼らはシオニストの計画を持っている。彼らはやることをやる。私はユダヤ人ではない。イスラエルはどうでもいいのだが、かといって反ユダヤでもない。これは単なる事実だ。私は、出版社にイスラエルについての本を書こうと思うと言ったら、彼らは、おやめなさい、と言うのだ。イスラエルの真実について書くことはできない、ということだ。イスラエルについての事実について語ることができる唯一の場所は、イスラエルだ。アメリカにいては聞くことのできないことを聞くことができる。

IPS: 例えば
ベーア氏: 例えば、ガザの人々はなんでそんなに不幸なのか?もし人が刑務所に住めば、不幸と思わないか?そういうことはニューヨーク・タイムズ紙を読んでいては絶対知ることはできない。ニューヨーク・タイムズ紙はイスラエルの延長みたいなものだ。

IPS: ガザ紛争のイラン・イスラエルおよびアメリカ関係における影響にはどんなものがあるか。最近の攻撃でハマスは破壊されたのか?
ベーア氏: いや、それは不可能だ。ハマスとは一つの思想だ。ハマスは組織ではない。ハマスとは思想であり、イスラエルが150万の人々をエジプトに追い出さねば、ガザを屈服させることはできない。イスラエルはガザに侵攻し指導者らを殺害し1万人を牢屋に押し込むことはできるだろうが、ハマスは一層強くなって出てくるだろう。その場合の負け組みはファタハであろう。

IPS: ハマスとヒズボラの軍・政治的行動の主な特性はなにか?
ベーア氏: 彼らは戦争を地理的に捉えなおしている。ヒズボラが洞穴を掘り、通信に光ファイバーを使用する事実は、高度な技術と原始的な戦闘方式のコンビネーションを表している。つまり、世界のどの軍隊がヒズボラのほかに光ファイバーを使用しているか、ということだ。光ファイバーは盗聴できないのだ。なにもできない。
 ハッサン・ナスララ師を見てみれば、彼はイスラム教の政治のやり方を再設定し、キリスト教徒との連携を結ぶことまでするようになった。ビン・ラディンはキリスト教徒を殺そうとした。ナスララ師はそこまでやるようになったのだ。キリスト教徒を同盟者と見るようにまでなったのだ。
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G8でのベルルスコーニ首相とオバマ大統領

◆「分裂」で「揺らぐ」G8サミット

 昨日からイタリアの地震被災地ラクイラで主要国首脳会議(G8)が開催されている。今回のサミットは「分裂」で「揺らぐ」サミットと形容したい。

 まず中国の胡錦濤国家主席が帰国してしまったため、重要な経済問題などでの討議にあまり意味がなくなってしまった。これはある意味この会議全体を揺るがした出来事だろう。
 そもそも開催地が地震被災地のラクイラに急遽変更され、余震におびえる状況での会議となり、参加者の心も不安で揺れている。
 加えて、主催国のイタリアのベルルスコーニ首相は、若い女性の買春問題などでスキャンダルに揺れている。そこに更に、元ヌードモデルのカルファーニャ機会均等相(33)をサミットの配偶者プログラムの案内役に指名したとして、メディアが騒いでいる。
 日本は日本で、中国やインドなどの新興国を加える拡大論が加速する見通しで、「アジア代表」として参加してきた日本の主導的な地位が揺らぐ可能性が出ている、ということで、心穏やかではない。

 G8ではイランの今回の選挙後の弾圧問題を取り上げ、イランに対する新たな制裁も議論されるようだが、中国自身がウルムチの弾圧問題で揺れているし、イラン叩きの急先鋒であるフランスのサルコジ大統領は、このブログで取り上げたように、アラブ・イスラム系の移民の人々に対する「弾圧」では、内務大臣時代からの弾圧の専門家だ。
 それに選挙の不正などどの国でも多かれ少なかれ存在していて、あまり他国のことをとやかくいうほど偉くはないだろう、というのが実情だ。
 それに弾圧というのは、見方によるのだから、どの国もイラン問題は他人事とは思えない内情を持っているから、サルコジ大統領のようなのを普通「偽善者」と言う。だからロシアなどは最初から制裁などには消極的だ。

 結局あまり意味の無いサミット、ということになるのだろう。



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●ベルルスコーニ:G8はイラン問題で分裂
【7月7日 AP】
G8の参加国指導者は、イランでの大統領選挙後の混乱と弾圧問題で共通の見解を導き出すべきだ、とサミット前夜の7日、イタリアのベルルスコーニ首相は語った。
 今回のサミットの議長を務めるベルルスコーニ首相は、いくつかの国、例えばフランスは強い行動が必要だ、と語り、反対にロシアなどは対話の姿勢を保ち穏便なスタンスがよいと表明している。
 「イランに対する声明の内容をこれから決められる」と、ローマでの記者会見でベルルスコーニ氏は語った。彼は、参加国首脳らは対話路線を求めるだろう、と語った。
 8日夜の夕食会議でイラン核問題をトップに世界的な安全保障問題を話し合う。夕食後に共同声明を発表する予定でいる。
 フランスのサルコジ大統領は、選挙後の騒乱で何人かの死者や多くの逮捕者を出したイラン指導層に対する比類ない批判者だ。最近サルコジ氏は「フランスは常にイランに対する制裁を強化することを提言してきた」と語り、そうすることで「イラン指導部が今進んでいる道が行き止まりであることを理解するだろう」、というのだ。
 ロシアは制裁の可能性を否定した。メドベージェフ大統領は、イランの選挙のあった4日後に開かれた安全保障会議に、イランのアハメドネジャド大統領を招待している。
 アメリカのイランと対話するという路線は、6月12日の選挙後の騒乱とその弾圧で揺らいでいる。・・・以下略



●胡主席帰国で「中国リスク」浮き彫りに ラクイラ・サミット
7月8日22時27分配信 産経新聞
 【ローマ=渡辺浩生】ラクイラ・サミットの“影の主役”といわれる中国の胡錦濤国家主席が帰国したことで、いまや中国を抜きでは何ら意味をなさなくなった世界経済問題や地球温暖化対策での有益な討議は望めない状況となった。特に、米国発の金融・経済危機を克服し、再発を防ぐ処方箋(せん)を探る上で、中国の存在は欠かせない。胡国家主席の帰国は、中国の国内事情に世界が翻弄(ほんろう)されるという「中国リスク」を改めて浮き彫りにした。・・・以下略



●サミット接待役に元ヌードモデル閣僚…伊首相に疑問符
7月9日0時22分配信 読売新聞
 【ラクイラ=松浦一樹】主要国首脳会議(ラクイラ・サミット)を前に買春疑惑などのスキャンダルが相次いで発覚したベルルスコーニ・イタリア首相(72)に、欧州メディアは議長の資質を疑問視する論調を強めている。
 「(サミットで同席する)各国の首脳に恥ずかしい思いをさせている」(英紙)などの辛辣(しんらつ)な批判をはね返せるか、会議の手綱さばきが注目される。
 7日にローマで行われた記者会見。首相は「一連の疑惑はサミットに影響すると思うか」と地元記者に問われ、「そんなはずはないだろう」と憤りをあらわにした。
 5月に18歳女性とのいかがわしい関係が取りざたされ、ベロニカ夫人(52)との離婚騒動が持ち上がって以来、地元メディアは首相批判を強めている。私邸に高級売春婦を呼んでいた疑惑が浮上すると、トーンはさらにエスカレートし、ナポリターノ伊大統領は1週間前、「サミット前は批判報道を一時自粛すべきだ」と仲裁に入ったほどだった。
 サミット開幕が近づくにつれ、各国メディアも攻撃の手を強め始めた。元ヌードモデルのカルファーニャ機会均等相(33)をサミットの配偶者プログラムの案内役に指名したことや、政府の会議運営能力に疑問符をつけ、英ガーディアン紙は「各国はイタリアをサミットから追放し、スペインとの入れ替えも検討している」と痛烈な皮肉を放った。
 首相にとって、一連の会議をそつなく仕切れば汚名返上のきっかけとなる可能性もある。だが、「サミット中に新疑惑が浮上するのではないか」(伊レプブリカ紙)とメディア側は厳しい視線を浴びせている。



●ラクイラ・サミット 余震M4以上ならローマに会場変更
イタリア政府は、8日から同国中部地震の被災地ラクイラで開催される主要国(G8)首脳会議(サミット)について、会期中にマグニチュード(M)4~4・5程度以上の余震が起きた場合、首脳らの安全を考慮し、会場をローマの警察関連施設に移すことを決めた。同国主要メディアが一斉に報じた。
 4月6日の本震以降、ラクイラでは6月22日にM4・5、3日午後にもM4・1の余震が起きたほか、6日未明にも数回の余震が観測された。
 強い余震が発生した場合、首脳らをいったん会場内のテントに移した後、ヘリコプターなどでローマに移送する。
 サミット会場は当初、サルデーニャ州のリゾート地だったが、中部地震後、復興支援を目的にラクイラに変更された。(共同)



●ラクイラ・サミット 揺らぐ「アジア代表」の地位
8日からイタリアで始まる主要国首脳会議(ラクイラ・サミット)では、中国やインドなどの新興国を加える拡大論が加速する見通しで、「アジア代表」として参加してきた日本の主導的な地位が揺らぐ可能性が出ている。また、ホスト国であるイタリアのずさんな対応ぶりも目立つほか、麻生太郎首相をはじめ各国首脳もさまざまな問題を抱えており、主要国(G8)の存在意義が問われかねないサミットになりそうだ。・・・以下略



●「薄くて質素」サミット事変
 主要国首脳会議(サミット)が8日、イタリア中部のラクイラで開幕する。経済危機や地球温暖化など、G8(主要8カ国)だけでは解決できない課題がのしかかり、今回は最もG8の影が薄いサミットだと指摘される。さらに、史上最も質素なサミットであり、日本が世界2位の経済大国としての地位を確保して臨む最後のサミットでもある。世界的なパラダイムシフト(既成概念の枠組み変化)のうねりの中で、サミットは今、大きな岐路に立つ。
◆「存在意義がない」
 ラクイラ・サミットは、初日にG8の会合を設定した。2日目に中国、インド、ブラジル、メキシコ、南アフリカの新興5カ国などが加わり、地球温暖化対策のための主要経済国フォーラム(MEF)首脳会議を開催。3日目にアフリカ、食料問題を協議する。G8で見解を擦り合わせ、拡大会合を主導する段取りだ。
 だが実際には、今回ほど「(存在意義を喪失する)アイデンティティー危機」(米シンクタンク戦略国際問題研究所のスティーブン・シュレイジ氏)が指摘されるG8は初めてだ。
 経済危機の解決と再発防止に向けた国際通貨基金(IMF)の財源拡充、金融規制強化などのメニューは、4月のロンドンG20(主要20カ国金融サミット)で合意され、G20の枠組みは、世界規模の課題対処への有効性を確立しつつある。9月末には、米ピッツバーグで次回G20が開催される。米政府高官は「(G8は)2つのG20の単なる中間点」であり、新施策を打ち出すよりも「首脳たちが経済回復の取り組みを点検し合う機会」と位置づけているほどだ。・・・以下略
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オバマ大統領とプーチン首相

◆7月8日

 昨日のブログに、バイデン副大統領とオバマ大統領の考え方には違いがある、と指摘したが、以下の記事にあるように、オバマ大統領は早速バイデン副大統領の発言を否定するかのような、イスラエルのイラン攻撃についての是非について、明快に「ノー」と発言した。

 このようにホワイトハウス内でも、オバマ大統領は同じ志を持つ者に事欠くような環境の中にいて、そろりそろりと自分の信念を通す歩みをし続けていかねばならないことが分かる。
 しかし昨日紹介したミューレン統合参謀本部議長の発言に見られるように、主に軍人の中には、専門家であればこそだが、イラン対策について軍事オプションをとることを危険視する者達がいるので、オバマ大統領はそういう者達に支えられながら、何とか中東和平への歩みを進めていくことだろう。

 といって、オバマ大統領はイランが核兵器の製造を本当に進めている、ということならばまた違ったアプローチの仕方をするかもしれない。これは北朝鮮に対し、はっきり制裁を行うべし、という姿勢にも現れているのを見ても分かる。
 イランは核の濃縮などを見てもまだまだ核「兵器」製造の段階には至っていないと判断し、今年一杯くらいはとにかく外交で臨もうということにしているわけだ。

 オバマ大統領は1981年から数年間、コロンビア大学で国際関係論を学んでいるが、特に旧ソ連の核軍縮を論文のテーマにしていたというから、この核軍縮の分野ではそれなりの専門家の部類に入る人間である。従って今回ロシアと核削減交渉を成立させたのも、彼なりの信念に基づくものであったと言える。

 米露の持つ核兵器が本当に戦争に使われたら、これはどんなにしても人類が生き残る道はほぼ無くなる。それで今回ロシアとの間で、「先ず隗より始めよ」ということで核削減を実行しようとしている。
 このような時期に、核保有国であるイスラエルが、核をまだ保有していないイランを軍事的に叩く、となれば一体どうなるか、という問題がある。おそらく最初は通常兵器で攻撃しても、数百ヶ所になるイランの核関連施設を攻撃するということは大変な作戦であろう。当然イランからの報復攻撃もイスラエルに甚大な被害をもたらすことだろう。長期戦になれば、ハマスやヒズボラの動き、イラクの動き、ペルシャ湾のアメリカ軍へのイランからの攻撃・・・何が起きるか分からない。パキスタンはイスラム教国で核保有国だ。このパキスタンがどうでるか?

 そしてイスラエルがその戦争になかなか勝てないでいれば、最後には持てる核兵器を使用したくなるかもしれない。もしイスラエルが核兵器を持ち出せば、世界の世論は決定的なイスラエル非難となるだろう。先制攻撃をし、かつ核兵器の使用だ。誰がどう見ても正当性はない。しかしイスラエルには、「サムソン・オプション」と言われる、いうなれば、核の自爆攻撃戦略がある。自国が滅びかねない状況に陥った際は、数百発と言われるその原子爆弾その他の核兵器など(ABC兵器)を敵陣に投入する、という、旧約聖書のサムソンの故事に倣って付けられた名称を持つ最終自爆攻撃戦略だ。

 そのような事態にイスラエルが陥ったら、米露はそのイスラエルに対し、どう出るのか?数百発の核兵器を核を保有しない国に向かった放つ、あるいは放ったイスラエルを前にして米露その他の国々はどう出るのか?これはつまり、俗に言われる「ハルマゲドン」であろう。
 こういう事態にならないとも限らないイスラエルのイランの核施設への攻撃、というものをオバマ大統領が看過できるわけがないのだ。
 世界が来るところまできていることを理解しているオバマ大統領は、自分の使命を自覚しているはずだ。

 今回オバマ大統領はプーチン首相とも会談した。プーチン首相は、オバマ氏のことを「興味深い人物だ」と言ったという。これは底の浅い人物ではない、ということだろう。プーチン氏自身はKGB上がりの人物だ。人物を見る目はそれなりに養われているであろう。そのプーチン氏が興味深い、という表現を使ったのを見ても、オバマ氏が多少とも毛色の違う人物である、という印象を得たことが分かる。それは正解だ。
 実はプーチン氏も同様だ。彼は一介のKGB職員だったが、むしろ首相や大統領になってからその本領を発揮している。つまり大化けした人物だ。今や大政治家と言っていい。オバマ氏もそのような大政治家になる可能性を秘めている人物であろう。

 この人物の大きさの違いが、イラン攻撃に対する発言内容に出た、というのが真相だろう。オバマ大統領は、バイデン副大統領とは人物の器が違う、ということなのだ。


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●「イラン攻撃容認」説を否定=イスラエルの自制求める-米大統領
【7月8日 時事通信】
 ロシア訪問中のオバマ米大統領は7日、CNNテレビのインタビューで、イラン核問題に絡んで米国がイスラエルによるイラン攻撃を容認したとの説について、「絶対にそんなことはない」と明確に否定した。
 米国では、バイデン副大統領が5日のテレビ番組で「イスラエルは主権国家であり、イランやその他の国への対処を自ら決定できる」と発言したため、イラン攻撃に「青信号」を出したとの解釈が一部で広がっていた。
 オバマ大統領は「イラン核問題を外交を通じて平和的に解決するのが米国の政策だ。イスラエルには直接、中東で大規模な紛争を引き起こさないような手段を取ることが重要だと伝えている」と述べ、イスラエルの自制を求めた。 


●「イラン核放棄ならMDは不要」オバマ米大統領、米露新時代へ決意
【7月7日 産経新聞】
 【モスクワ=遠藤良介】ロシアを訪問中のオバマ米大統領は7日、モスクワの高等経済大学で演説し、ロシアが強硬に反発している米国のミサイル防衛(MD)計画について「イランが核兵器開発を放棄すればMDも必要なくなる」と表明した。オバマ氏はまた、「米国はロシアが強く、自信を持ち、繁栄した国家であることを望む」とも発言。ソ連崩壊後も根強いロシア人の対米不信を取り除き、核不拡散やテロ対策などでロシアと協力する決意を鮮明にした。
 米露関係の「リセット」は、ソ連末期のゴルバチョフ政権期や1990年代のエリツィン政権初期にすでに起きている。しかし、これはロシアが「超大国ソ連」の地位を失い、自信を喪失していった時期だ。その後の北大西洋条約機構(NATO)の東方拡大や「米国一極化」にロシア人は複雑な“被害者意識”を鬱積(うっせき)させ、国力が回復傾向に入ったプーチン前政権期には、それが“米露新冷戦”や昨年8月のグルジア紛争となって表面化した。
 オバマ氏の演説は、「ロシアの言うことに聞く耳を持ってほしい。大国として敬意をもって接してほしい」(露専門家)という政権と国民の感情をくんだものだ。その上で、「NATOはロシアと敵対するのではなく、協力すべきだ」「米露は北朝鮮の核保有国化とイランの核兵器獲得の阻止で団結しなければならない」と述べ、両国が世界の安全保障で協調する必要を訴えた。
 訪露前に「片足が冷戦時代にある」と批判していたプーチン首相(前大統領)とも7日に朝食をともにし、「あなたがロシア国民のためにした非凡な仕事を知っている」と称賛した。
 他方、オバマ大統領は演説で「帝国が敵対し、チェスの駒のように他国に接する時代は終わった」とし、ロシアによる近隣国への攻撃的な対外姿勢を暗に批判している。親欧米政権の下でNATO加盟を目指すウクライナやグルジアについても「領土の保全は世界秩序の基礎であり、国家が自らの指導者を選び、独立した対外政策を有することも同様だ」とくぎをさした。
 “米国の国是”である民主主義の価値観もオバマ大統領の対露外交から外れたたわけではない。訪露前には政権批判で知られるリベラル紙「ノーバヤ・ガゼータ」の書面インタビューに応じ、米露関係「リセット」の概念にはロシアの民主化や人権問題も含まれていると述べた。
 オバマ大統領は7日夕、野党や市民団体の代表者とも面会する。独立政治家のルイシコフ元下院議員は記者団に対し、「オバマ大統領がクレムリン以外の政治家とも接触しようという態度の表れだ。反対派の意見を聞くことでオバマ氏はよりロシアを理解してくれるだろう」と話していた。
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イスラエル潜水艦

◆7月7日

 イスラエルがもしイランを攻撃するとしたら、イスラエルからどのルートを通ってイラン攻撃をするのか、という点が常に問題となる。
 グルジアの南オセチアの空港を使わせてもらう計画も、グルジア・ロシア紛争で南オセチアがロシア側になってしまっため頓挫、イラクはイランと近いシーア派のマリキ首相の政権であり、領空を使わせてもらえない。トルコはエルドガン首相がイスラエルのガザ侵攻を激しく非難したばかりだ。そうなると残りはサウジくらいになる。サウジはスンニー派であり、イランのシーア派政権が核を保有し中東で強大な勢力となることを恐れている。そこでアラブ諸国の不倶戴天の敵であるイスラエルだが、そのイスラエルがイランを叩くのならば、一時的にでも領空を使用させてもいい、となっても不思議ではない。
 
 こうして具体的なイラン攻撃のルートが確保された、となると、その攻撃の時期も間近に迫ってきているのか、と考えざるを得ない。
 時を同じくして、イスラエルの潜水艦がスエズ運河を通過した、という。行き先は分からないが、おそらくイラン方面であろうと推測される。

 バイデン米副大統領は、イスラエルがイランを攻撃することを、アメリカは阻止はできない、という発言をした。つまり、イスラエルにイラン攻撃の「グリーンライト(了解)」に近いサインを出したことになる。反対に統合参謀本部議長はイランを攻撃することは、地域の不安定化を進めることになり、予期せぬ重大事が生来しかねない(からよろしくない)、という意見を明らかにした。政権内での意見の食い違いの表れだ。

 オバマ大統領の意思は既に前のブログで示したように、「イラン攻撃はするな」、というものだ。オバマ大統領はあくまで外交でイランとの間の問題の解決を目指している。しかし副大統領は自身、「自分はシオニストだ」と言っていたくらいの人物だから、イスラエルのイラン攻撃を止めるような意向は持ち合わせていないだろう。このあたりはオバマ大統領と個人的な意見としての食い違いを持っているということになる。

 このように不穏な情勢の中、オバマ大統領がどれだけうまくバランスを取りながら、結果的にイスラエルのイラン攻撃を「阻止」し、中東問題をそれなりにまとめていけるものか、不安は残るが、ロシアとの関係を正常化しつつある中、この両大国が中東問題でも一致した姿勢を示し続ければ、イスラエルとしても簡単には軍事行動には出れないであろう。


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●サウジアラビア:イスラエルのイラン攻撃を黙認か
http://www.timesonline.co.uk/tol/news/world/middle_east/article6638568.ece
【7月5日 TimesOnLine】
 イスラエルのモサド長官はネタニヤフ首相に、サウジアラビアは将来のイラン攻撃のためイスラエル戦闘機がサウジ領空を使用することに暗黙の了解を与えた、と断言した。
 今年の初め、2002年からモサドの長官を務めるメイアー・ダガン氏は、この問題についてサウジ高官と秘密会談を持った。
 イスラエルのメディアは、前首相であるオルメルト氏を含む政府高官らが、サウジの高官らと会合を持ったという非公式の情報を報じている。その情報をサウジ当局は否定した。
 「サウジは、イスラエル空軍が、サウジとイスラエルの両国に共通の利益であるミッションのためサウジ領空を通過することに対して、それとなく了承した」と先週、外交筋が語った。
 両国は公式の外交関係は持っていないが、イスラエル国防関係者は、モサドはサウジと現実的な関係を持っている、と追認した。
 ジョン・ボルトン前国連米大使は、湾岸諸国を訪問した際、この件について「まことに理にかなったこと」と語った。
 何人かのアラブの指導層と会談したボルトン氏は、「どちらも公式には発表していないが、イスラエルが、これは大きな成功だ、と吹聴しなければ、領空通過を黙認しただろう」と述べた。
 アラブ諸国は国連ではイスラエルの空爆を非難するだろうが、私的な場では、イランの爆弾の脅威から解放されたと感じるだろう、と彼は語った。
 シリアの核施設といわれるものに対する2007年のイスラエルの攻撃を振り返りながら、ボルトン氏は「現在までイスラエルは詳細は語っていないが、シリアには小規模な核施設があった・・・」
 この一件は、穏健派スンニー・アラブ諸国の間で高まっている、シーア派政権であるイランの安定性の問題と、イランが核勢力となるのではという恐れが増大していることを浮き彫りにしている。
 「サウジはイランの核爆弾をイスラエルのそれよりも非常に気にしている」と、イスラエル情報局の前調査局長は語った。
 イスラエル空軍は、ここ4年間に渡ってイランのナタンツの核施設とイラン中央部にあるその他の施設への攻撃訓練を行ってきている。


●バイデン米副大統領:アメリカはイスラエルのイラン攻撃阻止はしない
【7月5日 AP】
 バイデン米副大統領は、「アメリカは他の主権国家に対し何ができて何ができないかを言って命令することはできない」と語ることで、イスラエルに対してイランの核脅威を根絶する軍事行動にグリーンライトを与えているように見える。
 イスラエルはイランを最も危険な敵と見ている、また選挙で勝利したばかりのタカ派のアハメドネジャド大統領に対し警戒している。・・・以下略


●イスラエルのイラン攻撃前、アメリカは意見の違いが明確に
【7月5日 PressTV 】
 マイケル・ミューレン提督は、イランに対するいかなる軍事的攻撃も「大変、不安定にさせてしまう」と語った。
 イスラエルはイランを核戦争にがむしゃらに向かっている政権であるかのように示そうとしているが、ホワイトハウスのトップオフィシャルとアメリカ軍は、イスラエルのイラン攻撃の可能性について矛盾したスタンスを表明している。
 アメリカ軍のトップ司令官である、マイケル・ミューレン提督は5日、イランに対するいかなる攻撃も“予期せぬ結果”をもたらすと警告した。
 米軍統合参謀本部議長であるミューレン提督は、フォックスニュースに対し5日、イランに対するいかなる攻撃も“大変不安定にさせることになる”と語った。「イランに対する攻撃をずっと心配してきている。それは非常に事態を不安定化させるものだからだ。しかもそれは予測不可能な思わぬ結果をもたらすだろう」と語ったと言う。、その反面、ホワイトハウスではバイデン副大統領は、イスラエルがイラン攻撃をするような場合には、アメリカは阻止することはしないだろう、と述べた。
 アメリカは、「主権国家に対し、何ができ何ができない、と命令することはできない」とバイデン氏は語った、とAP通信は伝えた。・・・以下略


●イスラエル潜水艦:スエズ通過、イランへ向かうか
【7月3日 Reuters】
 1隻のイスラエル潜水艦が先月の海軍演習の一環としてスエズ運河から紅海へ向かったと3日、イスラエル国防関係筋が語った。かつて無い動きということで、イランへ向かう戦略的動きを示しているという。
 イスラエルは長いこと3隻のドルフィン級潜水艦を保有している。この潜水艦はエジプトの港務部長の監視の目に晒すことなく核ミサイルをスエズ運河から運搬していると見られている。・・・
 
◆エジプトのスタンス
 エジプトのスエズ担当の高官は、軍事的動向に関する情報については肯定も否定もしようとはしなかった。一人の高官は、運河をイスラエル軍が通過しても、エジプトとイスラエルは戦争状態にはないから問題にはならない、と語った。・・・

 ・・・
 ドルフィン級潜水艦は10本の魚雷発射管を持っているが、その内の4本はイスラエルの要請で核弾頭付き巡航ミサイル用に拡張されている、と言われている。しかし地中海からイランを攻撃できる1500kmもの射程を持っているものか、疑問視されてきた。・・・以下略
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モリスタウンでのティーパーティー参加者

◆7月6日

 アメリカ独立記念日である7月4日、全米で例の「ティーパーティー抗議集会」が1300カ所で開かれたようだ。
 既に4月16日号の「テキサス州知事:反税運動を激励」 で紹介したように、このティーパーティー集会が徐々に盛り上がってきていているのも、やはりアメリカ経済がいよいよのっぴきならない状況に入りつつあるからだ。それで9月にはこのティーパーティーの統一ラリーがワシントンで行われる、というが、その頃にはアメリカ経済の状況は今よりより一層悪化していると思われるので、その規模と内容なかなり今の内容と異なる(より過激な)内容になるものと思われる。
 日本もそのことを期して準備しておかねばならないだろう。穏やかな季節は終わりつつあると見るべき、ということ。今までは、「嵐の前の静けさ」、ということだったのだ。


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●エコノミストらは増大する負債が次の危機と指摘
結果として高い税と減少した連邦収入とサービスとなろう
【7月4日 AP】
 建国の父祖らは独立記念日には祝うことのないある遺産を残した。我々全員に影響を与える国家債務だ。
 最初の負債は、独立戦争の戦費を賄うためだった。それ以来増大し続けた負債は、今日驚くべき額である11兆ドルに達した。これはアメリカ人一人で3万7000ドルの借金を抱えている勘定になる。そしてこれは毎年1兆ドルずつ増えている。
 この山のような負債は、連邦政府がきっちりとした対策を採らねば当然全面的な経済危機につながる、とあらゆるエコノミストが警告している。
 「長期にわたる財政の持続性を確保するべく強い決意を示さねば、金融の安定性も健全な経済の成長も望めない」と議会でバーナンキ議長は語った。
 結果として、高い税金、連邦政府の収入とサービスの減少、あるいはその両方が避け得ないものになるだろう。
 この負債があるため、オバマ大統領と議会もこの数十年なかったような景気後退と取り組む努力をしても、なかなか効果を発揮できずにいる。景気刺激策と救済のための支出と収入が減ったことが一緒になりギャップが更に広がった。
 金利支払いだけで、昨年は4520億ドルで連邦政府の支出の中では、メディケアー・メディケイド、社会保障費、国防費に次ぐ最大項目となっている。これは他のすべての政府支出を抑えることになる。しかも財務省はもう新たな借入先を見つけるのが困難になっている。・・・以下略


●数千人が「ティーパーティー抗議デモ」
【7月4日The Star-Ledger】
 モリスタウンで2000人ほどの人々が集まり、ボストン・ティーパーティに倣って全米で繰り広げられた反税抗議デモの一環として、古いやり方での政治的抗議運動を行い独立記念日を過ごした。
 チェス・チャンピオンのミカエル・ズロトニコフ氏らを含むプロテスターらは、大きな独立宣言書の拡大版に自分たちの署名をした。2000名ほどの人々は、全国で行われたティーパーティーの一環として、高い税金に反対する声を上げるため、モリスタウンに集まった。・・・
・・・全米約1300カ所でこのティーパーティーは行われた。・・・
・・・「我々は聖なる地に立っている」とオーガナイザーのマリヤン・フランジーズ氏は語る。「もし我々がもう一つの独立戦争を始めるとすれば、ここから始まるかもしれない」
 全米のティーパーティーグループは、「統一ラリー」を9月12日にワシントンD.Cで行うことを計画している。


●徴税令状が増大している
 しずくから洪水へ
【7月4日 NewYorkTimes】
 全国の自宅所有者は大挙して不動産税支払いに抵抗している。彼らの住宅価格が暴落し地方自治体は税収入が大きく落ち込んできている。
 1000万ドルの不動産所有者からワン・ルームのバンガロー所有者に至るまで、あるいはニューヨーク市の周囲を囲む高額税エンクレーブの住民から、ラストベルト(旧産業地帯)地域とアリゾナ、フロリダ、カリフォルニアなど地域社会が破産状況に陥っている州に至るまで、税の支払い免除の要求が記録的な勢いで伸びている。
 「これはディケンズの小説と同じだ」とサンフランシスコ郊外のコントラ・コスタ郡の査定官であるガス・クラマー氏は語る。「この人たちは必死ですよ。自分たちの住宅の価格が大きく下がったのを知ってます。隣の家が売りに出されているのを見ているのです。そういった人々の代理人として、『払戻し小切手をいつ手にできるのか?家族に食わしていかにゃならんし、電気代だって支払わねばならないんだから』と叫ぶのです」
 この税支払い免除と再評価要請は各政府の予算の新たな悪夢の始まりである。ナショナル・アソシエーション・カウンティによる調査では、大きな郡の76%は、税収入の減少が重大な影響を及ぼすほどになっていると、この協会の調査部長のジャクリーヌ・バイアー氏は語る。
 いくつかの州の係官は、不動産税が減少するのは第2次世界大戦後初めてだ、という。・・・以下略
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経済から宗教まで、時代の先を読み解くための作業を人間活動のあらゆる分野にメスを入れて行います。
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