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「敵は金融業界」と言うオランド新フランス大統領


◆5月8日

 2月10日号の「緊縮財政、俺が?:サルコジの食費1日1万ポンドで121台の車を所有」で「まあ哀れなのはサルコジだけでなく、フランス人自身でもある。このような御仁を自国の大統領に選んだお粗末さを今後、繰り返さないことが肝要であろう」と書いたが、今回の大統領選でフランス国民は、サルコジに「ノー」を言い渡したことになった。サルコジという人物の正体をほんの少しでも理解したからであろう。

 サルコジは今後、ただでは済まないかもしれない。彼の過去の所業の総決算がなされることでみじめな将来が待っているかもしれないのだ。特にリビヤとシリア関係で落とし穴が待っている可能性がある。

 今の日本もなぜサルコジが否定されたかを理解すべきである。国債残高が大きいから消費税の増税だ、などという短絡思考であれば、財政も経済も悪化するばかりで、立て直しなどはできない相談である。経済を復活させることが税収アップに繋がり、ひいては財政再建に繋がるのであって、いまのようなデフレ期に増税すれば税収は減少してしまうであろう。

 サルコジは国際金融資本勢力の手先であるから、ヨーロッパが行き詰り、各国がヨーロッパの中央政府のようなものに国家主権の財政をも差し出さざるを得ない状況作りそれを推し進めようとしていたと言える。そのサルコジが政権を追われたのであるから、ヨーロッパは最後の最後、息を吹き返すチャンスが来ていることになるだろう。そのチャンスを果たして生かし切れるかどうかは、ヨーロッパ人自身の覚醒の度合いにかかっている。

 去年の7月6日号「二週間以内にリビア上陸作戦か」で、「このブログで指摘しておくが、サルコジ政権の未来は暗い。」と書いたがその通りになった

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●ヨーロッパは変われるのか?
http://www.atimes.com/atimes/Global_Economy/NE08Dj06.html
【5月8日 By Pepe Escobar】

 ヨーロッパはオバマがアメリカの大統領選に勝利した時、改革の中にあったかもしれないが、今回は本当の改革であろうか?

 特別に歴史的な転換点のこの時、6日の大統領選挙で社会党のフランソワ・オランドが大統領になった。

 「緊縮財政は宿命ではない」と勝利宣言で強調したように、彼はこの難局を乗り越えようとするだろう。これはフランスだけの事ではなくヨーロッパ全体の未来がかかっていることである。そしてフランスが語り、もっとよく言えば行動すればヨーロッパは注目するはずだ。

 フランスの社会全体でヨーロッパと世界に向けてメッセージを送ったことになる;変革を夢見る事、その中で最も重要なのは社会正義である、は可能だ、というメッセージである。代案はあるということだ。

 これが、避雷針として、一人の静かなるフランス人でなされたのだ。「普通」の男である。IMF理事長だったドミニク・ストロス・カーンがニューヨークのホテルで非常に怪しげなセックス・トラップに嵌った後、社会党の代替要員としては上出来だ。
 
 しかし今は二日酔いの時間だ。左翼政権は27カ国で構成されるヨーロッパ連合諸国内ではたった7カ国でしかない。キンキラ王サルコ、ネオ・ナポレオン風のリビヤの解放者の前大統領のニコラ・サルコジは、歴史書の脚注に書かれる程度のマイナーな存在に成り下がった。おまけに彼のイタリア美人妻でポップスターのカーラ・ブルーニは次のキャリアのための動きを模索し始めている。サルコ王はヨーロッパの二桁のリセッションの前に倒れた11番目のヨーロッパ人の指導者だ。「メルコジ」-ヨーロッパを運営したサルコ王とドイツのアンゲラ・メルケルのカップル、は死んだ
 

■メルコランドへ向かう

 メルケル首相とデイビッド・キャメロン英国首相は、今も「緊縮財政論者」である。鉄の女アンゲラはサルコ王が大統領に再選される事を願っていた。しかしオランドは先週ドイツに特使を派遣した。実証主義者として彼は、メルケルがじかにサルコが傲慢で気まぐれであることを見てきていることを知っていた。

 オランドは控えめな性格で合意する事を好む現実的な実証主義者で、パリの政治学院で教鞭をとっていたこともあった。彼は急進主義者ではない。「メルコランド」が実証主義から生まれるはずだ。潰すべき石頭の御仁はドイツの財務大臣のウォルフガング・ショイブレだ。ユーロ圏の緊縮財政の権化である。

 メルケルとショイブレはサルコ王が署名した財政協定と共に西ゴート族のギャングらに葬られる必要があるかもしれない。元ゴールドマン・サックス副会長で欧州中央銀行総裁のマリオ・ドラギは、成長協定を望んでいる。

 オランドは統制の無い無規制のメガフリー・マーケットには根本的に反対である。公共投資については、それを引き出せる国は信用格付けの良い、そして金利の低い国である必要があるが、それに該当する国はEUには存在しない。

 従ってドイツ次第なのだ。ドイツが中心地であったはずである。我々は、遅かれ早かれドイツ人は終わりの無いリセッションは政治的に有毒であることに気付くであろうということを、オランドがメルケルに納得させることを期待すべきである。真っ先に不吉な結果が既に出てきている-ヨーロッパ中に強力な極右勢力が台頭してきている。

 選挙戦の最中にオランドは「敵」は誰かを明確にしようとした;それは「金融業界」である。ウォール街とロンドンのシティーは、オランドはレーニンよりも危険であることを間違いなく知ったし、今後もその確信を深めるだろう。それで戦場がどこかはっきりした。オランド対新自由主義・「市場」であり、オランドがドンキホーテで対するのはECB・IMF・EC(欧州委員会)の鉄のトロイカだ

 物語はまだ始まってもいない。そこで金の問題を見てみよう。

 フランスの公的負債はGDPの90%である。1974年以来ずっと財政赤字が続いている。国債はGDPの57%で、ユーロ圏内の17か国中で最高である。失業率は約10%。実質的には殆どの北アフリカからの移民の子供たちは全世代でゲットーに押し込められ生涯に渡って惨めで失業状態にある。

 オランドはフランスの退職年齢を62歳から60歳に変えたがっている。彼は少なくとも6万人の新しい教師を雇用したいと考えている。彼は低収入家庭に対する電気料金を下げようと思っている。これらの全ての唯一の財源は、彼の(約束した)年間100万ユーロの収入のある者に対する75%の税率と、金融取引税である。フランスのブルジョアたちは、悲嘆にくれてディオールの服を引き裂いているに違いない。

 それで要するにオランドの綱領は、雇用と経済成長である。彼がもし失敗すれば、政府とイスラム教を非難している極右が勝利するだろう。


■金を見せてくれ

 オランドの下では、サルコ王の外交政策はおおむね維持されそうだが、実質的には調整されるであろう。

 オランドは中国に行ったことはない。北京では、サルコ王と違って彼のことを「普通」の大統領と見るだろう。従って中国側から見れば、両国の関係は「安定」の中にあるように「普通」になるだろう。

 重要なことはオランドはBRICS(ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ)諸国との間に戦略的パートナーシップを築こうとしていることだ。また彼は世界の準備通貨としての米ドルの終焉とそれが通貨バスケットに替わることを良しとする。このBRICSはEUの心臓部に世界的金融システムを近代化するための戦略的同盟国を持ったかもしれない。

 オランドの最初の国際的試練は今月末のシカゴでの北大西洋条約機構(NATO)サミットだ。彼が果たしてNATOのグロボコップ(世界的警察官)の野心の中にモンキーレンチを投げれるかどうか見るのは興味深い。アフガンとリビヤでのブラックホールのような成り行きに嫌気が差しているヨーロッパの殆どの国は、彼を支援するかもしれない。オランドはアフガンから2012年末までに全てのフランス兵を撤退させると述べていた。

 しかし本当の戦争はヨーロッパの内部であろう。最後に再び金の問題に戻ろう。

 オランドはフランスの高齢化する人口が早めにリタイアすることを願っている。彼はフランスの農業従事者がその家畜は言うに及ばず、安定した補助を受けるよう願っている。彼らの生活基準はこの惑星上の20億の人々のそれよりも上である。彼はフランスの寛大な社会保障制度が継続して機能するよう願っている。

 一切の金が0.1%の者たちの膨れたポケットに吸い込まれてしまうのに、こういったものの財源をどうするか? この「普通」の男は、ヨーロッパを変えるだけでなく、世界を変えるようプッシュすることが必要となるかもしれない。

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