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シリア騒乱の天王山と化したアレッポ

◆8月16日

 リビヤの戦車がよりによって対シリアの戦闘で使用されるとは、よくもよくもリビヤ問題が発生した時の、ロシアのメドベージェフ大統領(当時)の国連安保理に対する姿勢がここまで尾を引いてしまったか、という感を禁じえない。ロシアが拒否権を行使せず、棄権に回った為、NATOの戦闘参加が可能となり、リビヤは制空権を失い、カダフィ政権は転覆させられた。そして今や、そのリビヤの戦車がシリアで反アサド勢力の手中にあって、シリア軍に対して火を吹くことになったのだ。日本の将棋に似て、取られた味方の駒が敵に駒として利用されてしまったのだ。

 これで以下のデブカファイルが指摘しているように、シリアの戦闘の行方は分からなくなった。というより長期化することは避けられないだろう。相手は命知らずの聖戦主義者(ジハーディスト)の荒くれ者どもで、金に糸目をつけない湾岸君主アラブ国家がパトロンとして後ろ盾に付き、欲しいだけの武器が送られてくるし、後方は自分たちを支援してくれるトルコという中東でも強大な軍事力を有する国が控えている。

 昨日の記事で指摘された、クルド人と組んでトルコやそこから侵入する武装ゲリラに対処する、ということが考えられるが、クルド人にもやはり十分な火器が渡されることがなければ、効果は薄い。既に欧米・湾岸アラブ君主国家群・イスラエル・トルコ・アルカイダvsロシア・中国・イラン・ヒズボラ・シリアという構図の戦争であり、直接対決しているのは、この「アルカイダ系ゲリラ+亡命シリア兵士」vs「シリア正規軍・親政府民兵」である。

 この際、ロシアがシリアに対して最新兵器を供給し、大量破壊兵器の使用を抑えながら、多少時間がかかっても北方のトルコとの国境近くの反政府勢力側の安全地帯を奪還することが望ましいだろう。大量破壊兵器を使用すれば、欧米側が国連の枠外であってもシリアに対する軍事的制裁を科す口実となりうるからだ。そしてその間に、トルコ内のクルド労働者党のゲリラ活動を活発化させる戦略が対抗措置として有効だろう。サウジやカタールでの「アラブの春」運動の活発化も対抗措置として有効であるから、それを推進させるべきである。

 シリアのアサド政権が転覆するようなことがあれば、次は間違いなくイランであり、それは間違いなくロシア・中国も直接的に介入せざるを得ない事態となる。これは中東大戦争へと発展し、さらには世界大戦へと発展しかねないものになる。だからこそ、シリアの段階で欧米側の野望を頓挫させておくべきなのだ。

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●ロシア製T-62戦車で武装しだしたシリアの反政府勢力
http://www.debka.com/article/22273/Syrian-rebels-armed-with-first-T-62-tanks
【8月14日 DEBKAfile】

 シリアの反政府勢力に対する支援を行っている欧米と湾岸アラブ君主国群は軍事支援面でロシア製T-62戦車をリビヤから送ることで強化に乗り出した、とデブカファイルが報じた。アメリカのクリントン国務長官は最初の重火器の引渡しを8月13日にイスタンブールへの短い訪問時に了承した。カタールがこの戦車引渡しの費用の責任を持つ。

 オバマ政権は最初、自由シリア軍に対し、FIM-92対空スティンガー・ミサイルを供給することでトルコと合意した、と8月11日にデブカファイルは明らかにした。

 アサド政権に対する18ヶ月に及ぶ反乱で初めて8月13日、反政府勢力は肩に担げるスティンガー・ミサイルでシリア空軍の戦闘機であるMig-21をデイル・アルズール北東で撃ち落した。シリア政府は技術的問題で墜落したと主張したが、反政府勢力側は捕縛されたパイロットであるラフィク・モハメド・スレイマン大佐の写真を公開した。

 シリアの紛争はこのように序章としての新しい段階に入ったとし、デブカファイルの軍情報筋は、それはシリア領内に安全地帯を作り出すことで、これを自由シリア軍やその他のグループが防衛することになりそうだ、と報じている。

 アンカラの情報筋は、この安全地帯をシリア領内に5kmから25kmの幅でトルコとイラクとの国境沿いに作る計画をトルコが作成した、と報じている。トルコはこの安全地帯を軍事面よりも、紛争を避けて逃げてきた数万人のシリア人が難民としてトルコに侵入するのを防止することでトルコをこの難民という重荷から解放する面を重視している。

 この戦車とスティンガーは、今まで空と戦場で自由に動けたシリア政府軍の軍用機と戦車に対する防衛的聖域を生み出すことになった。 

 このリビヤからの20台のT-62戦車は先週、トルコのイスケンデルン港に陸揚げされ、自由シリア軍の標章が描かれた。これらの戦車はシリアの反政府勢力で戦車戦の訓練を受けた者たちに引き渡されシリア北方に送られた。

 デブカファイルの軍情報筋:アサドは決定的状況に直面している。シリアの反政府勢力に対する重火器の供給、スティンガー・ミサイルによるジェット戦闘機の撃墜、シリア領内にできつつある安全地帯などは、この戦闘の潮流が彼に不利になる変化をもたらす脅威となっている。

 彼があわてて逃げ出すことがなければ、彼が大量破壊兵器を使用する危険性はかつてないほど大きくなった。彼の軍が自分たちの戦闘機が敵のミサイルで撃墜され、世界のテレビ画面が空中爆発し燃え盛る破片が地上に落下する模様を映し出すのを見るという事態が続けば、アサドは戦争を継続できない。シリアが生物化学兵器を使用する可能性に備えて、イスラエル、トルコ、ヨルダンはアメリカ軍と一緒に作業するチームを作り、この大量破壊兵器による攻撃を受けるアメリカ軍の施設やこれら三国に対応策と緊急医療体制をしくようにした。

 時間が残されていないことを確認し、イスラエルのネタニヤフ首相とバラク国防相は13日の夜中から14日にかけて長い時間諮問を受け、14日の朝、元シン・ベイト長官で国内治安長官のアビ・ディヒターを自宅戦線大臣に指名した。

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ダマスカスで11日発見された大量の武器

◆8月15日

 一万数千の武装ゲリラとほぼ2万のシリア政府軍がアレッポ付近で対峙し、徐々に政府軍が武装ゲリラ側の拠点を一つ一つ落として行っているようだ。おそらく今月中は激しい戦闘が継続することだろう。

 その間、シリアの各地でも散発的なゲリラ活動のため政府軍もその対応に追われている。ダマスカスではとりあえず静穏が戻ったが、郊外では散発的なゲリラ側の攻撃が起きているし、下記にあるように大量の武器がつい最近も発見されたのを見れば、まだまだ油断は出来ない情勢のようだ。

 それでもリビヤのようにシリアの中で、反政府側が奪取し政権打倒のための活動拠点となった場所は存在していない。アレッポも包囲殲滅の過程に入りつつある。これはシリア国民全般が、自国で起きていることは外国勢力の介入による反乱「現象」であり、市民の自発的な反政府運動ではないことを知っているからだ

 しかし一般市民はアサド政権を支持しても、やはり宗教的には少数派のアラウィ派がシリアを支配してきたいきさつ上、多数派のスンニー派としての意識が軍関係者の中でも大きくなっていることもまた事実だ。軍の指導部はキリスト教徒やアラウィ派が占めているようだが、スンニー派の中堅将校などの中には「スンニー派が支配するシリア」という将来像を描いて、それに賭ける者たちが出てきても不思議ではない。その流れが強まれば、シリアは本当の流血の大惨事の場所になるだろうし、本物の「内戦」状態に陥るだろう。

 これを避ける為にも、シリア国民の、とりわけ軍関係者らの賢明で思慮深い対応が必要である。それが出来るかできないかは、シリアばかりではなく中東全体、ひいては世界全体の運命をも左右することになるだろう。

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●シリア政府軍がアレッポで反政府勢力を追撃
http://news.xinhuanet.com/english/world/2012-08/13/c_123578528.htm
【8月13日 新華社通信】

 活動家らによれば、戦車と装甲車の支援をうけてシリア軍は13日、シリア北部のアレッポ市の反政府勢力が立てこもる地域に突入した、という。

 シリア人権監視団体は戦車と装甲車と共に政府軍はアレッポの隣のサイフ・アルダウラの西部に突入したという。反政府勢力との衝突はこの地域の各所で起きている、という。

 監視団体はアレッポ近郊のサラフディエンの数カ所は13日の早朝から政府軍の爆撃を受けていたという。サラフディエンは、リビヤ型のシナリオの序章として、アレッポに拠点を作ろうとした反政府勢力が最初に落とした場所であった。

 アレッポでの激突は反政府勢力がこの地域から政府軍を駆逐すると宣言した三週間前から続いている。国営メディアは毎日、アレッポから反乱勢力を駆逐したと政府軍の勝利を誇示してきている一方、活動家らは反政府勢力は持ちこたえている、と主張している。

 アレッポでの戦闘はシリアの次の段階を形作る決定的で重要なものとみなされている。これはアレッポがトルコとの国境から40kmしか離れておらず、戦略的に重要な地理的状況による。

 一方、監視団体はダマスカス郊外のアルタルはこの地域を奪回せんとする政府軍による爆撃が行われた、と語った。

 活動家のグループはホムス中央とデイル・アルズール地区東部で衝突が起きたと報じている。

 13日にはシリア全土で50人が殺害され31人は非武装の市民だという。これらの活動家らの主張は裏づけをとることは出来ない。

 国営のSANA通信社はシリアの一部隊がホムスのジュレト・アルシャヤで「武装テロリスト・グループ」を追撃し、大勢の「傭兵テロリスト」を殺害ないしは負傷させたと語った。

 シリアはさまざまな反乱グループを、アルカイダがこの戦闘に参加するようになってからは特に「テロリスト」と呼ぶようになっている。

 一方、ホムスの当局はサラミヤとホムスを結ぶ高速道路沿いにあるスク・アルガナムの市民と建物を攻撃した武装テロリストのグループを駆逐したとSANA通信が報じた。

 さらにホムスでは郊外のタルビセ地域のテロリストの巣窟を襲撃し多くのテロリストを殺害した、とSANAが報じた。

 SANAは政府軍がラタキア市と北西部のイドリブ地区で武装勢力に大きな損害をもたらした、と報じた。

 シリア国連監視団団長のババカル・ガイェ将軍は13日、政府軍と反政府勢力との激しい衝突で一般市民の間に犠牲者が多くでている、と語った。

 ガイェは紛争当事者のどちらも市民に対する配慮に欠けている、と語った。

 「衝突がシリアの各地で広がっていることは明らかだ。政府側の重火器の使用と反政府勢力側の都市部でのゲリラ攻撃で一般市民の間に多くの犠牲者が出ている」と彼は語った。



●密輸された大量の武器をダマスカスで発見
http://www.presstv.ir/detail/2012/08/13/256051/weapons-ammunitions-seized-in-damascus/
【8月13日 PressTV】

 シリアの治安部隊はダマスカスにある住宅の地下のトンネル内に大量の武器が貯蔵されていたのを発見した。

 イスラエル製の爆弾、暗視ゴーグル、精密通信機器、それに衛星送信機などが押収された。

 シリア軍はまた戦略的拠点に対する攻撃計画を詳細に記した書類等をトンネル内で発見した。

 また治安部隊がこの住宅を急襲した際には、何人かの武装ゲリラも逮捕された。このトンネルは11日に旧ダマスカス市内で発見された。

 昨年来、紛争の只中にあるシリアは、武装ゲリラが使用している武器類はトルコとレバノンから密輸されている、と語っている。

 シリアはサウジアラビアとカタールがシリアの内紛を増大させ、反政府勢力に武器の支援をしている、と非難してきている。

 シリアは2011年の3月から紛争に見舞われており、相当数の軍、治安関係者が殺害されている。

 シリアのアサド大統領は8月1日、同国が「決定的で英雄的」な戦闘に突入したと語り、この戦闘がシリアの運命を決定する、と語った。

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ロンドンで深刻な顔つきのトルコのエルドアン首相

◆8月14日

 トルコがシリアのアサド政権に対して、自由シリア軍など武装勢力に対する支援を通して揺さぶりをかけているため、シリアはトルコの何十年に渡る宿敵であるクルド労働者党に対する支援を強化し、トルコを背後から牽制しているようだ。

 昨日の「アメリカとトルコはシリアに飛行禁止空域設定を計画」の記事の中で、「トルコはクルド人が独立運動をはじめやしないかと恐れている」という指摘があるように、トルコにとってクルド人問題は「獅子身中の虫」以上の潜在的脅威なのだ。そこでトルコから叩かれているシリアは改めてこのトルコの弱点を衝いてトルコのシリアに対する圧力を弱めようとしているのだ。

 「やれば、やられる」というのがこの世の常だ。トルコが欧米・イスラエル・湾岸君主国群と一緒になってシリアのアサド政権転覆に力を入れているのであるから、シリアが反撃をするのも当然である。クルド人は総数2800万といわれているが、トルコにはその内1140~1500万人がいると言われている。トルコの人口が7500万弱だから、6人に1人はクルド人ということになる。これは大きい勢力だ。だからクルド人問題はトルコのアキレス腱なのだ。

 このクルド人がシリアの北部からトルコに対する攻撃を行っている為、エルドアン首相はシリア領内に追撃するぞとシリア政府に警告している。
http://atlanticsentinel.com/2012/08/erdogan-does-not-rule-out-invasion-of-syrian-kurdistan/
 
 要するに、トルコはシリア領内の反アサド武装勢力を支援し、それに対してシリア政府は反トルコ政府のクルド人武装勢力に対する支援を強化することで、トルコのシリアに対する圧力の矛先を弱めようとしているのだ。「やれば、やられる」のである。

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●シリア:トルコのクルド人民兵に武器供給
http://in.reuters.com/article/2012/08/09/syria-crisis-turkey-kurds-idINL6E8J
98YU20120809
【8月9日 Reuters】

 トルコ外相は、トルコ政府と数十年にわたって衝突を繰り返しているクルド人民兵に対して武器を供給しているとしてシリアのアサド大統領を非難した。トルコ政府とクルド人民兵との戦いで既に4万人以上が死亡している。

 トルコ軍とクルド労働者党(PKK」)民兵との衝突はトルコ南方のシリアとの国境近くでここ数週間激しさを増している。トルコ政府はPKKがシリア内の紛争を利用してその影響力を拡大しようとしていると懸念を表明している。

 9日、PKK民兵と思われる者たちが西部のイズミール州でトルコ軍のバスを待ち伏せ攻撃し、軍人と民間人合わせて11人が殺された。 

 アハメト・ダブトグル外相はミャンマーへの旅行中記者団に対し、アサドはシリア北方のコバニとアフリンに拠点を持つPKKに武器を与えていると語った。

 「アサドは武器の支援を彼らに行っている。これはファンタジーではない。事実だ。我々はこの脅威に対して必要な措置を取っている」と外相の言葉をインターネットのニュースサイトが報じている。

 シリアからはコメントは出されていない。7月初め、トルコの新聞紙でのインタビューでアサドは、シリアがPKKにトルコとの国境に近いシリア領内で作戦を行うことを許可している、と言われていることを否定した。

 ダブトグルのコメントは以前トルコの官僚が主張していた内容と一致している。

 トルコはシリアの主要なクルド人政治活動団体の民主統一党(PYD)がPKKと連携している、と疑ってきた。トルコのアナリストはアサドがPYDにシリア北方のいくつかの町の治安を任せて、住民が自由シリア軍(FSA)に参加しないようにさせていると考えている。

 トルコとシリアの関係は、トルコがアサド政権と「善隣外交」を進めることで国境監視を和らげ合同軍事演習を行っていた数年前に比べて著しく悪化している。

 トルコのエルドアン首相は現在はアサド政権に対する最も厳しい批判者の一人であり、もしもPKKが脅威となればシリアに軍事介入する可能性を示唆している。


■不必要なパニック
 
 軍人の離反者はトルコ南部にFSAの基地を作っている。また何人かはトルコ、カタール、サウジアラビアの将校らによって訓練を受け共同している。これらの将校らはアダナ市に近いところにある秘密の「指令センター」から作戦を指揮している、と湾岸諸国の情報筋がロイターに語った。

 トルコの善隣外交を進めたダブトグル外相は、トルコがシリア北方の状況に対応できていないという批判を否定した。                                  
 「不必要なパニックがある。我々はこういったことを予期していたのだ。トルコのシリアに対する影響力はどこであってもどのような事態であっても弱くなってはいない」と彼は語った。

 PYDの影響力が増大する件を質問されて外相は以下のように回答した:「彼らはアサドが追放されれば力の真空状態が生じることを利用しようとしている。しかし彼らの思惑通りにはならないだろう」と述べた。

 自治区を与えるという問題は、新しい国会〔議員)が選出されたら考えるべきことだ、と語った。

 「しかし、もしもある武装グループが国会議員の選出前にある場所の支配を確立したら、別の武装グループが別の場所の支配を確立するだろう。そういうことを我々は見たいとは思わない」と語った。

 このPYDはトルコに対して、この地域に対する介入をしないよう、また恐れることはなにもない、と警告している。

 1998年、トルコはアサドの父親の時代、PKKリーダーのアブドゥラ・オカランのダマスカス滞在とシリア北東部でのPKKの活動に対するシリアの支援に関する件でシリアと戦争しそうになったことがあった。

 ハフェズ・アル・アサドはトルコからの脅威を深刻に受け止めオカランをシリアから追放した。オカランはその後まもなくトルコ軍によって、おそらくアメリカの支援もあってケニヤで捕まった。オカランはイスタンブール南方のある島の刑務所で終身刑で服役中だ。

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トルコのエルドアン首相と握手するクリントン米国務長官

◆8月13日

 アメリカのクリントン国務長官がトルコに行き、シリアに飛行禁止空域を設定する可能性についてトルコ指導部らと話し合ったという。これはリビアのやり方の再演を狙っていることを示している。リビア軍は制空権を奪われ、逆にNATO軍の爆撃を受けて壊滅した。

 シリアではそのリビヤの失敗の轍を踏まないように、ロシアは最初からシリア支援を積極的に行っている。従ってたとえアメリカ・トルコがシリアに対し飛行禁止空域設定を目論んでも、成功するとは思えない。結局具体的な対策を取れないまま、シリア軍がアレッポの一掃作戦を完了すれば、シリアの紛争は一段落を迎えることになるだろう。

 アレッポの反政府武装勢力の大半は外国人のテロリストであり、彼らは1万以上いるが、既に2000人ほどは減少している。これからシリア軍がさらに作戦を進めることで、その数はさらに減少していくことになる。そして欧米諸国・湾岸君主国群などからの支援がなければ、彼らに勝ち目はないから、トルコ領内に逃げ帰るか、殲滅させられるか、という運命をたどることになるだろう。

 結局、シリア国民の大半はシリアのアサド政権を支持し、反乱側に組する者たちはわずかであった、ということが真実であり、それがためシリアにおける「アラブの春」は頓挫しようとしているのだ。反乱を起こしてきたのは、主に外国人武装ゲリラであり、シリア国民ではなかったのだから、当然の帰結である。

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●アメリカとトルコはシリアに飛行禁止空域設定を計画
http://www.rt.com/news/clinton-turkey-syria-damascus-aleppo-437/
【8月11日 Russia Today】

 アメリカのクリントン国務長官とトルコのダブトグル外相は11日イスタンブールでの会談後、シリアに飛行禁止空域を設定することを計画していることを明らかにした。

 ロイターによれば、クリントンはトルコとアメリカはアサド政権を転覆する為に戦っている反政府勢力を、飛行禁止空域設定も含め支援する方法を計画する必要があると語った。

 記者会見でクリントンは飛行禁止空域設定は選択肢の一つだと示唆したが、この問題は「更に深い分析」が必要だと語った。

 これはアメリカが反政府勢力を支援するためにその力を使用する最初ではない。同じ戦術がリビヤの反政府勢力が昨年カダフィ政権を転覆するのを支援するのに使用された。

 今に至るまで、アメリカはシリアに対し軍事的役割を担うことに消極的だった。しかし、リビヤの状況が繰り返されるとすれば、アメリカの軍事的介入は近い将来現実的可能性となるかもしれないし、それはシリアにおける17ヶ月に及ぶ紛争を長引かせるだけであろう。

 会談の最中、クリントンはAPによれば、シリア危機に対応するため、トルコに作業グループを置くことになるだろうと語った、という。

 このグループはアメリカとトルコの軍・情報関連の介入度合いを深めることになるかもしれない。

 「我々はこの紛争の流れを注意深く追ってきたが、今や我々は実際的な作業計画を立てる必要が出てきた。これは我々両政府が共に関わって行く必要があるものだ」と、クリントンは語った。

 クリントンは共にシリアの反政府勢力を支持するエルドアン首相とグル大統領と会談する予定でいる。 

 アメリカはシリアに民主的移行のための土台作りを目指している。この会談はダマスカスで衝突が起きているという報道がなされている時に行われた。

 11日早朝、シリア国営テレビはダマスカス郊外での衝突を報じている時、武装ゲリラが三人のシリア人ジャーナリストと運転手を拉致したと報じた。彼らは親政府系テレビ局で仕事をしている者たちである。

 中東歴史政治学のジェレミー・ソルト教授によれば、反政府勢力は欧米同盟側からの支援がなければ紛争に勝利することはできない、という。

 「現在のところでは、ダマスカスでは反政府勢力がほぼ一掃された。アレッポは一掃されつつあるところだ。シリア軍は戦略を持っている。彼らはサラ・アルディン地区を2日間で一掃した。そしてそのやり方で他の地区をやっている。従って反政府勢力がより多くの重火器を支援してもらわねば、彼らは負け戦をすることになるだろう。それがためクリントンはイスタンブールに行ったのだ」とソルトは語った。

 その間も、反政府勢力側は戦場となっているアレッポを制圧できないでもがいている。

 激しい砲撃のため南西地区のサラ・アルディン地区から7日、撤退せざるを得なくなったアレッポにいる反政府勢力はシリア軍に対する反撃を準備している。

 アレッポは欧米諸国の深刻な懸念材料となっていると、外交問題アナリストのリチャード・ヘイダリアンはRTに語った。

 「欧米は首相の亡命を含む最近の出来事の為、流血の惨事を今現在、予感している。クリントンがやろうとしていることは、トルコと共に、そしてイスラエルとアラブ諸国の支援で何らかの軍事的対応をすることである。それはアレッポの拠点を維持するチャンスがあると考えているからだ」と、ヘイダリアンは語った。

 しかしながらトルコは、会合に参加したのには別の独自の動機からだ。5万人になるトルコに流入したシリア人難民に対する対応で、トルコは自国自身の人道的危機が深まっているのに対処しているところなのだ。クリントンはトルコ領内に流れてきたシリア人のため550万ドルの支援を発表したところだ。 

 「トルコは二つの側面を持っている。一つはこの悲劇と流れてくるシリア人に強い懸念を持っている。トルコはシリアからの難民の最大の受け皿の一つである。他方、クルド人の反乱の増大がある。これはシリアとイランのクルド人と連携がある。トルコはクルド人が独立運動をはじめやしないかと恐れている」とヘイダリアンは語った。 

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トルコの救急車がシリア内に武器・弾薬を運んでいる

◆8月11日

 シリアでの反政府勢力に対するトルコの支援は早くからなされてきたが、トルコの野党議員はトルコの救急車が、シリア内に武器と弾薬を運ぶために使用されている、と指摘し政府を非難した。またトルコ兵も40人ほどもシリアに拘束されている、という。

 トルコについて押さえておくべきことは、首相のエルドアンは隠れユダヤであり、トルコ軍の創設者であり、近代トルコの父と言われているアタチュルクも隠れユダヤだったということだ。このためトルコ軍もこの隠れユダヤ勢力が支配的であり、その関係から今のトルコがイスラエルと対立しているシリアに対して敵対的姿勢にあることを指摘しておきたい。

 今回のトルコ政府のシリアに対するこのような姿勢のため、トルコの将来が暗いものになっている。何らかのやり方でそのツケは支払わさせられるであろう。

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●トルコは救急車で武器をシリアに密輸
http://www.presstv.ir/detail/2012/08/09/255390/turkish-ambulances-take-arms-into-syria/
【8月9日 Press TV】

 トルコの野党議員は、政府が救急車を武器と弾薬をシリア内にいるシリアの反政府勢力に密輸するために使用していると非難している。

 人民共和党のメヴルト・ドゥドゥ議員は、最近シリアとの国境地帯への訪問をし状況を視察してきた。

 この訪問中、住民はトルコの救急車がアサド政府に対する反乱を起こしている者たちに武器を運び、負傷したメンバーをトルコに帰すために使用されていると、議員に情報提供した。

 ドゥドゥは、国境にある住宅が反政府勢力の基地に使用されていると語った。またその人物はこの地域の武装勢力に対するトルコの軍事支援に対する驚きを表明した。

 「もしも真実ならば、これは全く受け入れがたいことだ」とドゥドゥは語り、政府にそのようなシリアに対する侵略行為に対して厳しい結果が生じることを警告した。

 トルコの野党議員は、シリアの内政に介入することでトルコを窮地に陥らせた責任がエルドアン首相にあると語った。

 8日、トルコのいくつかのメディアは、シリアのラタキア市で反乱者と共にトルコ軍の10名の兵士が戦っている写真を公開した。アメリカのメディアもまた、反シリアのコーカサス民兵らが600名ほど、トルコ経由でシリア領内に侵入したと報じた。

 シリア政府はいくつかの中東国家、トルコ、サウジアラビア、カタールを武装勢力に資金と武器の調達をしている、と非難してきた。

 7日、100名以上のトルコ軍兵士がロケットその他の精密兵器で武装し、シリアのクルド人地域のコバニのセラブロに侵入した。

 国境地帯のクルド人民兵のスポークスマンは、トルコ軍の役割がシリアの反政府勢力に対する武器と弾薬の供給にあると語り、メディアは40名ほどのトルコ人兵士がシリア内に拘束されている、と言っている。

 先週、トルコ軍戦車はシリア国境からたった2㎞しかないマルディン州のヌサイビン区で演習を行った。

 NBCニュースは7月31日、トルコによってシリア内の武装勢力に対して2ダースのMANPAD(携帯対空ミサイル)が供給された、と報じた。

 人民共和党党首のケマル・キリクダログルは以前、シリアに対する侵略的姿勢によってトルコを「中東の泥沼」に引き込むことになると政府に警告したことがあった。

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