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カブールのケシ御殿

◆5月12日

 アフガンの米軍司令官が交代した。
 産経新聞では「経験不足」が原因のように書いてある。しかしCNNは、「ゲーツ米国防長官は11日、ここ7年間のアフガン政策を見直す必要性がある、ので解任する」としているし、「これまでのアフガン政策が成功していないことを認めており」として、今までのアフガン戦略の全面的な見直しが必要、という判断だとしている。毎日新聞では、「オバマ政権は軍事力だけでは勝利できないとのアフガン新戦略を示しているが、マキャナン司令官は軍事力重視の姿勢を維持しており、交代はやむを得ないと判断した」とあるから、その戦略上の違いも交代の原因の一つといえそうだ。オバマ大統領は以前語ったように、穏健派のタリバンを説得する、というような外交的側面をも重視する戦略である。
 これを踏襲しようとするゲーツ長官と現場のマキャナン司令官の違いは、毎日新聞では、たとえば「2010年にも米軍1万人の追加増派を求めており、それ以上の増派に慎重な姿勢を示しているゲーツ長官と対立していたとされる」というように示されている。
 それは、軍事力で推し進めても、人々の生活の糧がタリバンが支配する地域ではケシの栽培であり、それからできる麻薬であり、ヘロインだから、その生活を保障してくれるケシ栽培を守るタリバンを掃討するということになかなか賛同できないという面があるからだ。
 まして、オバマ政権では今までのブッシュ政権とは違ってネオコン的な武断政策は極力控え、対話を重視するスマートパワー方式を主導外交姿勢としていこうとしているのだから、無人爆撃機などで無差別に攻撃し、民間人を多く殺傷するようなやり方は取りたくない、というのが本音であろう。

 アフガン問題は、根が深い。9月11日同時多発テロで何の根拠もないままブッシュ政権はこれを、ビン・ラディンらアルカイダの仕業とし、そのビン・ラディンをかくまうタリバン・アフガン政権を打倒するとしてアフガンへ侵攻しアメリカの傀儡であるカルザイ政権を打ち立てた。
 これはブッシュ大統領(当時)の石油・天然ガス利権などの絡んだ政治的な動機が中心の軍事作戦だった。しかしもう一つの要素として見逃してならないのが、麻薬利権である。
 タリバン政権時、アフガンのケシ栽培は禁止され殆ど生産されるようなことがなくなったのだが、カルザイ政権になってからまたアフガンでのケシ栽培と麻薬製造が復活し、今やアフガンのカンダハル地方からのヘロインだけで、世界に流通する量の3分の2で、アフガン全体では世界のヘロイン生産量の93%になるという。つまり今やアフガンが世界のヘロイン生産の大方を担っているわけだ。
 しかもこのビジネスには、言われるようにタリバンが製造しているばかりか、アフガン政府自身でも麻薬ビジネスに深くかかわる者が多く、政府の職員は上は大臣から下は一般公務員まで麻薬ビジネスに手を染めていない者の方が少ない、という現状がある。 
 それが今アフガンの首都カブールで見られる「ケシ御殿」である。大体3階から4階の、警備員小屋まであり有刺鉄線で囲まれている邸宅で、政府職員や政府関係者らの住居となっている。彼らの給料は月数百ドル程度というからこの立派な御殿は彼らのサイドビジネスからの収入で建ったものであるという。
 
 ここでオバマ政権が目指すのは、タリバン掃討という軍事的な目標だけでなく、実はこの麻薬ビジネスの元となるケシ栽培の禁止を徹底させ、正当な農業を奨励発展させることにある。これが彼が目指す「スマートパワー」の具体的な内容の一つであろう。
 しかし麻薬ビジネスの甘い汁の味を知った者たちが、おいそれとその利権を手放すわけもなく、政府の正式な「麻薬根絶チーム」は現地入りすると、当地の警察から発砲を受けるような状況がある。また米軍やNATO軍もどうやらそれを見過ごしているようで、この傾向は全般的に言えるようだ。カルザイ大統領もまた、ケシ栽培を行っている地方の有力者らの協力を得ようとして「麻薬根絶」には消極的なのだ。
 
 このドラッグ・ビジネスの闇が存在する限り、アフガンの復興は到底おぼつかないだろうし、カルザイ政権も不安定なままであろう。米軍やNATO軍がこの麻薬ビジネスにかかわっていないという保証もなく、特にCIAはアフガンのイスラム戦士をソ連に対抗させるためにアヘン製造を黙認、その流通にもかかわったいきさつがあるから、今日でも継続している可能性が高い。
 こうしてみれば、アフガンにかかわる全ての勢力がケシから始まり、アヘン、ヘロインとその流通という麻薬ビジネスにかかわっている可能性がありそうで、これにどう対処していくのか、オバマ政権の今後の動きを注視していきたい。

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●米軍司令官 異例の更迭 タリバン掃討「経験不足」
【5月12日産経新聞】

 ゲーツ米国防長官は11日の記者会見で、アフガニスタン駐留米軍のマキャナン司令官(陸軍大将)を更迭する方針を明らかにした。マキャナン氏は18カ月から24カ月間司令官を務める予定だったが、11カ月間しか務めておらず、この時期での更迭は異例だ。 米紙ウォールストリート・ジャーナル(電子版)によると、米軍内にはこれまでアフガン勤務のなかったマキャナン司令官の武装勢力掃討作戦における経験不足を懸念する声があったという。
 ゲーツ長官は司令官を交代させる理由について「新大統領の下で新戦略を打ち出した。軍も新しい指導者が必要だ」と述べるにとどまったが、オバマ大統領が重視するアフガンでのイスラム原理主義勢力タリバンなどの掃討作戦を遂行するにあたり、更迭に踏み切ったとみられる。


●米国防長官、アフガン駐留米軍司令官を解任
【5月12日CNN】
 ゲーツ米国防長官は11日、ここ7年間のアフガン政策を見直す必要性があるとして、アフガン駐留米軍のマッキャナン司令官を解任すると発表した。
 マッキャナン司令官は就任から1年未満での解任。後任には特殊作戦を主導した経験を持つマックリスタル中将が指名された。マックリスタル氏の指名が上院の承認を得るまで、マッキャナン氏が司令官に留まる。
 米政府はこれまでのアフガン政策が成功していないことを認めており、ゲーツ長官はアフガン戦略転換を受け、軍事面でも新たな指導者が必要だとしている。



●民間人犠牲に遺憾表明=アフガンと合同調査実施へ-米
【ワシントン6日時事】クリントン米国務長官は6日、アフガニスタン西部で米軍主体の駐留連合軍が行った空爆で多数の民間人死者が出たことについて、「心の底から遺憾に思う」と哀悼の意を表明するとともに、米国とアフガン両政府による合同調査を行う方針を明らかにした。
 アフガンのカルザイ大統領、パキスタンのザルダリ大統領との3者会談の席上、語った。(


●米軍機の空爆、死者数147人 大半が民間人
【5月8日産経新聞】
 アフガニスタン西部ファラー州当局者は8日、同州バラバロク地区での米軍機の空爆による死者数が147人に上ったことを明らかにした。大半が民間人で、アフガン政府などが誤爆の原因究明を進めている。
 空爆は反政府武装勢力タリバン掃討のため、4日から5日にかけて同地区の2つの村で行われた。州当局者によると、それぞれ90人と57人が死亡し、多くが女性や子どもだった。アフガンでは米軍主体の外国部隊による民間人への誤爆被害が頻発。反米感情が高まる原因となっている。(共同)


●欧米の別の見方:アフガンのドラッグ貿易が拡大
West looked the other way as Afghan drug trade exploded
【5月10日 McClatchy Newspapers 】
http://www.mcclatchydc.com/world/story/67722.html

「ケシ御殿」と彼らは呼んでいる。有刺鉄線と警備員小屋の背後に3階から4階のローマ風の柱と大理石で覆われた住宅がアフガンの首都のカブールにいくつも建っている。
多くはアフガン政府職員や政府関係者らのものだ。彼らは数百ドルの月給だが、数十万ドルする装甲SUV車の車列に護られた車で移動する人々だ。
カブールの不動産産業の興隆は戦争で破壊された南方とはかけ離れた世界だ。しかしこれらの多くの住宅はヘルマンドとカンダハル地方のケシ栽培で得れる利益で建てられたものだ。
「これらの建物を見れば分かるように、尋常な金ではない、ドラッグ・マネーさ」と、2007年以来、カンダハル地方にある都市の市長であるハイダー・ハミディ氏は語る。
「ドラッグ業者の背後に大臣や県知事らがいる。時には彼ら自身がドラッグ業をする場合さえある」
去年、ヘルマンドとカンダハル地方はアフガンでのケシ栽培の75%を占めたし、ヘルマンドだけで、世界のアヘン供給のトップになっている。
アメリカとNATO軍がこのドラッグ問題にこの6年間真剣に対処してこなかったためだ、とアフガンとヨーロッパの高官は言う。
「NATO軍は、禁止とか根絶とか一切したがらなかった」とブッシュ政権時、麻薬対策の担当者であったトーマス・シュウェイチ氏は語る。
現在では、ヘルマンドとカンダハルは復活したタリバンの支配するアフガンの麻薬州の中心になっている。
ドラッグはそこでは主要な収入源だ。そして大方の政治家や警察官僚はドラッグ業者とつながっている。「カンダハルで最近2年間、よい警察官を見たことがない。」という。
西ヘルマンド地方のナド・アリでは、数千エーカーの政府所有の土地が、ケシのプランテーションとして灌漑され、耕作され、井戸も掘られて、大型機械で畑が耕されている。
その地方の警察は、昨年政府の「根絶チーム」に発砲したことがあった。
アメリカやNATO軍がこの麻薬とヘロインが市場に流れることを止めるために何をしたのか、という質問に、アフガンの麻薬対策担当大臣であるコダイダド大佐は、即座に「何もしなかった」と答えた。
アフガン政府も大したことはしてこなかった。・・・
・・・
 ヘロインがカンダハルの主要な問題となり始めたのはいつ頃かとの問いに、ヘロイン患者のアハマドゥラ氏は、「欧米の軍隊が来てカルザイが大統領になった、その後しばらくしてからだ」と答えた。
・・・以下略


●アフガニスタン再建の躓きの石-麻薬取引のグローバル化
 http://www.ritsbagakkai.jp/pdf/435_03.pdf

・・・
2. 対ソ戦に導入されたアフガニスタンのアヘン
黄金の三日月地域におけるアヘン取引は,ソ連のアフガニスタン侵攻,及び,ソ連と戦うCIAの行動と密接な関係にある。ソ連のアフガニスタン進駐は1979 年から1989 年まで続いた。
 1979 年時点では黄金の三日月地帯のアヘン生産は大きなものではなかった。せいぜい,局地的な取引が行われていたに止まる。高度な化学的処理を必要とするヘロインなどは,パキスタンやアフガニスタンではまったく生産されていなかったのである(McCoy[1997])。
 麻薬の汚染地帯でなかった黄金の三日月地域でアヘン生産が増加した背景には,ソ連に対抗すべく,反ソ・ゲリラ組織のムジャヒディン(Mujahideen)にCIA が梃入れしたことがある。
 「地対空携帯ミサイル」(stinger missile)をはじめとした武器を彼らに買わすべく,CIA は,アヘン生産に彼らが手を染めることを黙認し,アヘン販売で得た資金を合法化するための「資金洗浄」(money laundering)に各種金融機関を利用した。この疑惑は,イラン・コントラ(Iran-Contra)スキャンダルではしなくも明らかになった。

・・・

 CIAがアフガニスタンのアヘン取引に大きく関与していたことを示す証拠はかなり多くある。にもかかわらず,国連のUNODC はそのことについて完全に黙殺している。いわんや,アフガニスタンにおけるアヘン生産の歴史についてまったく触れてはいない。現状のアヘン生産の膨大さを撲滅する必要があると指摘するだけである(http://www.unoc.org/pdf/publications/afgopium-economy-www.pdf)。
 上記で引用したチョスドフスキー(Chossudovsky)は,別のウェブサイトで,アフガニスタンのアヘン収益がCIA の中央アジアにおける工作資金になったし,アルカイダ支援にも使われたと指摘している(Chossudovsky, Michel, “War and Globalization, The Truth behind September 11,”
Global Outlook, 2002; http://globalresearch.ca/globaloutlook/truth911.html)。
・・・以下略
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経済から宗教まで、時代の先を読み解くための作業を人間活動のあらゆる分野にメスを入れて行います。
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