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アメリカのイラン攻撃の可能性

◆11月11日

 中間選挙で共和党が勝利したことで、イランに対する政策に変化が生じてきそうだ。アフガン戦争やイラク戦争を始めたブッシュ政権は共和党政権であったが、オバマ大統領の民主党政権も経済復興のためにはイランに対する戦争、という危険なカードを振り回し始めた。

 要するに、金のための戦争である。実はこれがアメリカを牛耳る勢力、国際金融勢力の今までのやり方だったのだから、珍しくもないのである。議員やコラムニストが戦場で死ぬわけではない。若い兵士が死んでいくだけだ。だから彼ら、国際金融勢力とその者たちの走狗である議員やコラムニストらは戦争を煽り支持する。

 しかしこのような勢力は徐々にその力を失いつつある。以前の記事にもあったように、内部抗争で熾烈な戦いをしている彼らは、お互い潰しあっているからだ。従って彼らの勢力がそう長いこと保つことはない、と見ていいだろう。だから、これからの数年間が最後の絶頂期を形成するだろう。

 オバマ大統領に対する見方として、彼が前の大統領たちと同様、この国際金融勢力の走狗である、という見方が一般的かもしれないが、そうとばかりは言えない要素がある。ただ、実際上、走狗のごとき動きしか取れない環境下にある、とは言えそうだ。そのようにしなければ、今頃は殺されていた可能性が高い。

 しかし、彼が第2期も大統領職を続けられるようになった場合、つまり2012年以降になれば、新しい動きを始められるようになるかもしれない。その間、イランとの間、あるいはその他の地域で、なんとか戦争を回避することができれば、チャンスは大きいだろう。


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●アメリカの対イラン開戦の脅威が増大
【11月8日 by Bill Van Auken】

 共和党のリンジー・グラハム上院議員は中間選挙後、イランに対する全面的な戦争とそれによってイランを無力化し抵抗を不可能とするよう呼びかけることで、アメリカのイランに対する強硬姿勢が高まってきていることを示した。

 グラハム議員は6日、カナダのハリファックスで開催された国際安全保障会議の席上で、イランの核計画との関係で「封じ込めは選択肢にない」と宣言した。

 アメリカ政府と同盟国はイランが核兵器開発のため核計画を進めていると非難してきた。イラン政府はこの非難に対して、彼らの核計画は平和的で民生用であるとずっと否定してきている。

 1930年代ドイツであった全面戦争のレトリックを使いながら、南カリフォルニアの共和党議員はアメリカの攻撃は、「単にイランの核計画を無力化するだけでなく、彼らの海軍を沈め、空軍を破壊し、革命防衛隊に決定的なダメージを与えるだろう。つまり、あの政権を無力化するということだ。反撃の能力を破壊する」ために行われるであろうと断言したのだ。

 グラハム議員は、民主党の敗北にも拘わらず、オバマ大統領が、「イランに対して制裁を超える強硬姿勢で臨むならば、イランが核兵器を開発するのを許すわけには行かない、という考え方である共和党の支援を感じるようになるだろう」と言っている。

 このファリファックスの会議で、グラハム議員に同調したのは、コロラド州のマーク・ユドール民主党議員である。彼はイランに対する制裁の継続を擁護すると同時に、「あらゆる選択肢がある」と婉曲な表現で軍事行動を支持した。

 同じ会議の席上で、イスラエルのエフード・バラク国防大臣は、イランを「世界の秩序に対する主要な脅威」と表現した。彼は、イラン政府は「軍事的核能力を獲得する決意をしている」と述べ、それが、「考えられるあらゆる非拡散制度の終わり」であろう、と述べた。

 国連の核非拡散運動を無視し、中東で唯一の核兵器保有国であるイスラエルは、イランに対し軍事攻撃を掛けると何度も脅している。先月、イスラエルのユバル・ステイニッツ金融大臣は、もしイランがアメリカ政府の要請を受け入れなかった場合、イランに対する軍事行動となる海上封鎖をすべきであると述べた。、

 こういった最近の脅しは、イランと、米、英、中、仏、ロ、それにドイツを加えた5カ国プラス1諸国との次の交渉の1週間前に出てきたものだ。この会議はウィーンで開かれることになっている。

 中間選挙における共和党の勝利は、アメリカの外交政策を大きく右 寄りに傾けるだろう。そしてイランに対する戦争の脅威は強くなるだろう。下院外交委員会の議長はイリーナ・ロスレチネン議員である。彼女はイランとの外交交渉に反対し、キューバに対する政策で強く支援したようなある種の経済的封鎖を推奨している。

 ロスレチネン議員はまた、ムジャヒディン・ハルク(MEK)の熱烈な支援者である。彼らはイラン内部でテロ攻撃を行っていると言い、アメリカ国務省に外国テロ組織と指名されているグループである。
  
 下院の共和党員のほぼ3分の1がイスラエルがイラン攻撃をする際に明確な支援をするという7月の採決を支持した。

 オバマ政権と議会の民主党員は既にイランに対する脅しを強化してきている。国連安保理による新たな制裁をイランに対して施した後、オバマ政権は7月アメリカ独自の制裁案を可決した。これはイラン経済を弱体化させることを狙ったもので、人々の生活を困難に追い込むことで、政権の不安定化を進めようというものである。

 これらの制裁はアメリカ市場への参加やアメリカ政府との間の契約の機会を奪うことにより、イランに投資する銀行や貿易をする企業を罰するものである。この制裁は特にイランのエネルギーセクターを標的にしている。

 先週ニューヨーク・タイムズ紙のデイビッド・サンガーの記事によれば、来週のウィーンでの会談にイランが来るとしても、アメリカ政府は交渉の進展を調べるだけであると言う。会談に参加する主な目的は、「新しい、しかも驚くほどに広範囲な経済制裁がイランの核計画に変化をもたらしているのかどうか」を計るためである、という。

 この記事は、新しいアメリカの提案は、「昨年最高指導者のアヤトラ・ハメネイ師が拒否した一件より更に面倒なもの」であると指摘している。この提案では、核燃料製造を停止することを要求し、1年前の会議で試験的に合意した定められた量の3分の2以上のウラニウムを破棄するよう要求しているのだ。

 タイムズの記事は、アメリカ政府は、制裁措置は今のところなんら見るべきものはない、と考えているとし、そのことで、「ホワイトハウス内では、軍事的な選択肢についてオバマ大統領が公で話すことで、何か効果があるのか却って逆効果ではないのか、との議論が起きている」と言う。

 オバマ大統領の中東アドバイザーのデニス・ロスは、アメリカの主要な親イスラエル・ロビーである、アメリカ・イスラエル公共問題委員会(AIPAC)の10月25日の会議の席上で、同様の内容の話をしている。

 アメリカの制裁がイラン内に山のような経済的危機、インフレ、失業をもたらしていると自慢した後に、ロスレチネンは暗黙の内に戦争の脅威を示唆している:「最終的には、イランが直面している厳しい圧力によって彼らがその態度を変更することを希望する。交渉の余地はまだ開かれているし、我々も勿論平和的な解決を望んでいる。しかしイランが増大する経済的ダメージや孤立化にもかかわらず、懲りずに今の姿勢を続けるのならば、オバマ大統領が、イランが核兵器を保有するようになることを阻止するつもりである、と何回も語った言葉をイラン指導部は注目すべきである」

 イランに対する最も衝撃的な軍事的脅しを増大させる呼びかけは、「戦争復興?」のタイトルのコラムであった。中間選挙の前日に、いわゆる「ワシントン・プレス部隊」の部隊長と言われるワシントン・ポスト紙のコラムニストであるデイビッド・ブローダーによって書かれたものだ。

 深まるばかりの経済危機がオバマ大統領が2012年の二期目の選挙に勝つ為には「弱気にさせる状況」を生み出していることに不満を述べ、民主党の大統領の臆目もない支持者のブローダーは、この問題を克服するための二つのシナリオを書いた。1番目は、経済危機はビジネスサイクルの変化によって克服されるだろうという他愛もない希望的観測だ。ブローダーは「市場は行くべきところに向かっている」と結論付け、そのような結果は頼りにならないとしている。彼は激動の20世紀の歴史を鑑みて別の解決策を示唆している。「フランクリン・ルーズベルトと大恐慌を見つめ直すべきだ」として、「結局何があの経済危機を克服させたのか、それは第2次世界大戦だ」と書いている。

 「ここに、オバマ大統領が生き残る道がありそうだ。イランが核大国にならんとする野望に対抗するため議会における共和党の強い支持を受け、2011年、2012年を通してイランの神権政治権力との対決劇を演出することができる。これは、政治的に彼を助けることになるだろう。それは、野党は彼を支持するからだ。そして緊張が高まれば我々は戦争準備を促進し、経済は改善されるだろう」

 ここに一つの問題がある:経済復興と再選キャンペーンのための穏当な提案は、もしも数百万人でなければ数十万人の人命の損失を伴う、ということだ。このような血なまぐさい提案の根底にあるものは、アメリカの二つの右翼的・親帝国主義的政党のどちらかの、単に皮肉っぽい政治的計算であるばかりでなく、アメリカ資本主義の歴史的衰亡と1930年代の大恐慌以来の世界資本主義システムの最大の危機というものだ。

 軍国主義は両政党に歓迎されている。これは、アメリカ資本主義の経済的衰亡を、地政学的に決定的なエネルギー地帯である中東と中央アジア地域にアメリカの覇権を構築するために軍事力を行使することで解消することができるという、支配階級のコンセンサスを反映している。 

 オバマ政権の動きと共に、ブローダーと共和党員の言葉は、、新しい、世界的大災害を引き起こす危険を伴う、今まで以上に悲惨な戦争の脅威を強調している。

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経済から宗教まで、時代の先を読み解くための作業を人間活動のあらゆる分野にメスを入れて行います。
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