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イスラエルのイラン攻撃ルート

◆4月23日

 4月14日号で、アメリカのイスラエル離れが顕著になってきたこと、そのためイスラエルのイラン単独攻撃の可能性が出てきたが、その選択肢が困難なものであると指摘したが、以下のウォールストリートジャーナル紙の論説も、同様の視点で書かれている。

 イスラエルはアメリカをイラン攻撃に巻き込みたいが、アメリカはそれにノーと言い始めているから、イスラエルは単独でイランを攻撃するしかない、とする意見がある一方、そんなことをやってアメリカから反発されたら、イスラエルの国益に却ってマイナスとなる、というような意見があり、政権内でもまとまりがないようだ。

 何度も書くが、ブッシュ政権と違い、すくなくともオバマ大統領はその信念においては、今までの武断的ネオコン的発想は取りたくないとしているはずであるから、イランの核問題も、できるだけ外交的手段によるべきというスタンスは保持するだろう。最近、アメリカはイランへの軍事的選択肢は考えていない、と発言している。
 これはイスラエルのイランに対する単独攻撃があった場合には、明確に反イスラエルへと転換する要素となる。

 イスラエルが中東で存続できてきたのは、膨大なアメリカの支援があったからで、それは金銭面だけでなく、技術面でも支援があったから、軍事的優位を中東で保てたのだ。しかしアメリカの反発を買えば、それら一切がストップする可能性が出てくるから、結局イスラエルの存続の危機に直結するようになるだろう。
 それは冷静な頭を持つものならば理解しているはずだから、イスラエルのイランに対する単独攻撃というシナリオは相当困難な選択肢とならざるを得ない。つまり、馬鹿でなければ取らない選択肢である。

 そうすると、イスラエルは別の生き残りの戦略を考えていかねばならない時期に来ている、ということになる。今までとは違う方向と道をとる必要性を理解すべきなのだ。
 そして彼らが唯一生き残れる道は、1967年の第3次中東戦争前の国境線に戻ること、パレスチナ国家の建設を支援、そのパレスチナ国家と平和条約を結ぶこと、パレスチナ国家に金銭的支援を初め、友好国としての支援をできるだけすること、である。

 それ以外にイスラエルの生き残れる道は存在しない。


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イスラエルはイラン単独攻撃で議論が分かれる
http://online.wsj.com/article/SB10001424052748703757504575194223689622084.html?KEYWORDS=iran
【4月21日 Charles Levinson】

 イスラエルの安全保障分野の権威筋は、アメリカのイランに対する制裁決定がなかなか決まらず、その間、イランは核の能力を更に拡大しているので、イスラエルがイラン攻撃する決定をした際、アメリカの賛同を必要とするかどうかで意見が分かれている。

 ベテランのイスラエル高官は、イスラエルが受け入れることのできない核武装したイランというものをアメリカは受け入れて、そのイランと一緒にいくつもりかもしれないというサインを見ていると、インタビューの中で語っている。イスラエルの懸念を増幅させているのは、先週アメリカが行った、軍事的選択肢に対するアメリカの反対を明確にした声明である。ロバーツ・ゲイツ国防長官は18日、新しい戦略が必要である、とするジェームズ・ジョーンズ安全保障アドバイザーに対するメモについて議論をした。そのメモでは、外国勢力が阻止しないままイランが核能力を獲得することを示唆するかのように、アメリカは核(武装)のイランをいかに封じ込めるかという点が語られている。

 マイク・マレン統合参謀本部議長は18日、イランに対するアメリカの軍事的攻撃は「最後の手段」である、と改めて表明した。
 イスラエルは、イランに対するアメリカ主導の新しい経済制裁を支持すると語った。しかし、イスラエルの高官は、実際に制裁を課す動きに対する外交的努力が遅いことにますます苛立ちを隠せないでいる。

 中東和平のための努力に水をさす行為だとアメリカの言っている東エルサレムにおける入植者用住宅建設に対し、それを凍結する圧力を掛けているオバマ政権の要求を、ネタニヤフ政府が拒否する動きをしているため、米・イスラエルの関係は、最近数週間悪化している。

 両国の分裂を示すその他のサインについて、イスラエルの破壊を呼びかけている大統領を持つイラン(それは真実ではない)は、もし決意すれば、1年内に核弾頭を開発しうると彼らは考えている、とイスラエル高官は語っている。しかしイスラエル以外の専門家はイランがそのような点に到達するにはまだ数年を要すると見ている。イランは彼らの核計画は平和的利用のためだとしている。

 このような分裂状態は、もしアメリカのイランに対する制裁がうまく効果的に働かねば、イスラエルとアメリカの対イランに対する立場の違いは急速に拡大し、イラン攻撃を決断するとすれば、イスラエルは単独でそれを行わねばならなくなるという恐れを抱かせるに至っている。

 アメリカ軍の司令官たちは、イランを攻撃すれば、中東におけるアメリカの利害関係ヶ所への反撃が予想される、あるいはイランの代理勢力であるヒズボラやハマスによる拡大されたテロ攻撃が予想されると語る。マレン議長は18日、イラン攻撃は「意図しない結果」をもたらしかねず、イランに隣接するイラクやアフガンにアメリカが軍を展開させているこの中東地域を不安定化させかねない、と警告してきたと語った。

 アメリカの高官は、イスラエルの一方的な行動に反対する旨を明言してきたが、それでも米政権内にはアメリカの反対にも係わらずイスラエルがイランを攻撃するのでは、という懸念を持っていると語った。

 イスラエルの高官の中には、イスラエルが単独で攻撃することでアメリカとの関係を決定的なものにしてしまうのでは、ということを怖れる者もいる。そしてそれは、核武装したイランよりもイスラエルの国益にとってマイナスになると考えている。

 アメリカと一緒に行うそのような攻撃を調整してきたイスラエルの記録はさまざまな内容を含んでいる。イラクのオシラク原子力発電所に対する1981年のイスラエルの攻撃は、アメリカを驚かした。2007年、シリアの核施設への奇襲攻撃をした時、アメリカ高官によれば、アメリカは事前の警告を受けていたと言われている。
 イランを攻撃するかどうかの決定は、ネタニヤフ首相の胸の内にある。しかしながら過去は、このような決定には上級の軍司令官らの意見があったものである。イスラエル国防軍スポークスマンは、イランに関する審議内容についてはコメントを控えている。

 イラン攻撃をするために飛行するイスラエルの爆撃機のルートにはいくつかの選択肢がある。そのいずれもが、イラクやサウジアラビア、トルコなどアメリカの同盟国の空域など、イスラエルにとって深刻な政治的結果をもたらしかねない、アメリカがコントロールする管制空域を通過することが必要となっている。
 イスラエルの軍の専門家の多くは、イラン攻撃によるいかなる軍事的反撃にもイスラエルは容易に対処しうると言っている。イランの中距離ミサイルはイスラエルに一定のダメージと犠牲者をもたらすだろうが、それらのミサイルはそれほど精確ではなく、イスラエルの精密な防空システムはそれらのミサイルの多くを空中で破壊できるだろうとしている。
 イスラエルはヒズボラやハマスの攻撃もうまく対処してきたことを示している。イスラエルはアメリカ軍のレーダーシステム部隊を抱えていて、侵入してくるミサイル攻撃に対する早期警戒で支援を受けることになっている。

 イラン攻撃案を練っている軍関係者に近い、最近退職した高官によれば、イラン攻撃シナリオを練っているイスラエルの戦略面での立案者らが心配していることは、アフガンやイラクでアメリカ軍と戦っているグループに対する支援をイランが強化する可能性であるという。もし、イスラエルの一方的な攻撃が原因でアメリカ兵の死亡率が高まれば、アメリカは反イスラエルになるだろう。
 イランはまた石油輸出をペルシャ湾で阻止することで、国際的石油市場を混乱させることで、世界の石油供給を混乱させることができる。

 「もしイスラエルがアメリカが望まない戦争に引きずり込んだら、アメリカはなんと言うであろうか?あるいはイスラエルが原因で突然ガソリン代として1ガロン10ドルを支払うことになったら、どうだろうか?」と、前イスラエル戦略計画師団長のシュロモ・ブロム退役将軍は語る。

 イスラエル国防関連機関の前責任者らは、議論の両サイドに重きを置くようになってきている。
 「我々はアメリカの許可を持っているわけではないし、許可を必要としているわけでもない」と、エフード・オルメルト政権で、国防副大臣を務めたエフライム・スニー氏は語った。しかし、前国家安全保障アドバイザーのギオラ・エイランド陸相補は、イスラエルはイランへの軍事攻撃をアメリカの承認なしに行うことでアメリカとの関係を損なうようなことはしないだろう、と語る。
 先月、イスラエルのバラク国防大臣は、政権内では意見の一致がないことを公に認めたようだった。「イスラエルの安全と運命については我々が排他的責任を持っている。イスラエルの運命に間する事柄については我々とユダヤ人だけが決定することができる」と、バラク氏は語った。「しかし、我々はこれらのアメリカとの関係、あるいは共同して一致してアメリカと動くことができるという能力がいかに重要かという視点を決して失ってはならない」と語った。
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