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軍人ラビが配布したパンフレット

◆9月23日

 昨年暮れから今年はじめにかけてのイスラエルのガザ侵攻で、軍人ラビが前線でイスラエル兵を鼓舞し、それが問題となっている。
 旧約聖書を見れば、モーセの後を継いだヨシュアが現在のパレスチナ地方に侵入する時、そこに以前から住んでいた住民をことごとく殺したことが書かれている。旧約の神がそれを命令しているからそうなってしまったのだが、現在でもそのようなことをイスラエル軍に求めるのが、このイスラエルの軍人ラビである。

 イスラエルでは、非宗教人が30%くらい存在している(現在はもっと多いかも)しイスラム教徒やキリスト教徒、ドルーズ教徒もいる。つまりイスラエル人の多くは非ユダヤ教徒なのだ。そこにユダヤ教の教えで聖戦思想を吹き込む動きが強まっているというから、これはイスラエル内部でも問題とならざるを得ないであろう。

 しかしいずれにしてもイスラエルの建国自体が、いわばシオニズムという聖書的な概念を背景にして建国された経緯があるのだから、どうしても宗教的な急進派が力を持つようになるのは避けられないのではないだろうか。

 そうすると今後は、イスラム教徒の急進派(原理主義・根本主義)と、イスラエル・ユダヤ教徒の急進派とのガチンコの衝突になることが懸念されるのだ。まさしく宗教戦争だ。これをイスラエルの職業軍人も恐れている。狂信的になったら、その行き着く先は破滅であろう。それは狂信的になれば破滅するまで戦い、妥協を知らない、ということになるからだ。


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●イスラエル軍に増えている軍人ラビ(ユダヤ教教師)
http://news.bbc.co.uk/2/hi/programmes/newsnight/8232340.stm
【9月7日 BBC Newsnight】
 イスラエル軍は変貌している。かつてはその世俗性を持っていた戦闘部隊には、イスラエルの戦争は“神の戦争”と信じる人々が増えている。
 
 軍人ラビは一層影響力を増してきている。宗教の訓練に加え戦争で鍛えられて、軍規は彼らを新しい軍のエリートにしている。
 彼らは士官学校を卒業し、軍司令官の近くで活動している。彼らの主要な義務の一つは兵士らの士気を高め最前線でも鼓舞することだ。
 
 イスラエルの将軍は戦争をジハード(聖戦)にしてしまう危険性を警告している。この問題はイスラエルの中で相当の論議を呼んでいる。軍の士気というものは、神に仕える人間によって与えられるべきものなのか、それとも国家に対する信念とそれを保全せんとする思いからくるべきか?

 軍人ラビは今年のガザ侵攻の期間中、目立つようになった。彼らのいくつかの活動は、軍における政治・宗教的影響力に関しいくつかの疑問を投げかけている。
 非宗教的兵士であるガル・エイナブ氏は、基地、兵舎、戦場でも隅から隅まで宗教的論理が溢れていると語った。
 兵士が銃を受け取ると、すぐさま今度は聖書の中の一編である詩篇の本を与えられる、という。そして彼の小隊がガザに侵攻していった時、彼らには民間のラビと軍人ラビが両サイドについていた、と言う。
 「あれでは戦争が聖戦のようになる、まるで十字軍のように。戸惑いました。宗教と軍は完全に切り離すべきです」と彼は語った。

 
◆光の子ら
 しかしシャミエル・カウフマンのような軍人ラビは、この変化を歓迎している。以前は、戦争では軍人ラビは前線から離れた場所にいた、と言う。ガザの侵攻時には、兵士に同伴するように命ぜられた。
 「我々の任務は兵士の戦闘心を鼓舞することにある。聖書の時代からメシアの到来に至るまでの永遠のユダヤ人の精神だ」
 彼の小隊がガザに行く前に、ラビ・カウフマンは、彼らの司令官がカウフマン師に角笛を吹くよう要請したという。「ちょうど聖書に出てくるヨシュアがカナン(現在のパレスチナ地方)の地を征服した時のように。あれは戦争を聖なるものにする」と語った。
 ラビらは、何百もの宗教的な小冊子をガザ戦争時に配布した。
 そのことが知れ渡ると、イスラエルで大きな問題となった。いくつかの小冊子には、兵士のことを「光の子ら」と呼び、パレスチナ人を「闇の子ら」と呼んでいるのだ。他の箇所では、パレスチナ人のことを聖書の中でユダヤ人の憎い敵であったペリシテ人になぞらえている。
 イスラエル軍はこの小冊子の発行には直接かかわってはいないが、その本の中には軍のスタンプが押されている。
 軍の指導者らは、ラビに軍の規範を守るよう要請しているし、彼らラビの信念は信念として別にしてほしいとしている。彼らはこの新しいい民族主義的宗教兵士がイスラエル軍に入ってきている動きにも同様の姿勢であたるとしている。

◆宗教的義務
 西岸のヘブロンの近くにある正統派ユダヤ教神学校を訪ねてみよう。そこは今増えている宗教学校の一つで、そこでは聖書を前線に持参することを奨励している。
 この神学校は西岸のユダヤ人入植地にある。神学校の学生らは皆、戦闘部隊に入隊することを選択するが、思想的にあまり熱心でない学生らは入隊を避けることが統計的に示されている。これがイスラエルの新聞の見出しを飾った。
 19歳の学生は、宗教的兵士は軍の態度を改善するし軍がより“道徳的”になる、と語った。
 彼らはイスラエルの市民を守ることを宗教的義務と考えている。主(神)がそれを命令している、というのだ。
 もしオバマ大統領がやり通すことになれば、イスラエルは最終的には殆どの入植地から撤退することになるだろう。
 入植者らは国際法からみれば、違法となるし、パレスチナ人は将来の彼らの国土となる領土だと主張している。しかしイスラエルの宗教的兵士らにしてみれば、西岸は神がユダヤ人に与えた領土なのだ。
 ガル・エイナブ氏は、多くの兵士は入植地を閉鎖することには反対するだろうと語る。この入植問題は軍を分裂させる可能性がある、と彼は語った。そして多くの士官らがこの入植者であると言う。
 「もし、イスラエル政府からの命令とラビのメッセージとの間に矛盾が出てくれば、入植者と宗教的右翼兵士らはラビに従うでしょう」と彼は語った。


◆「ジハード」の脅威
 イスラエル軍指導部はジハードの考え方には強く反対している。エリ・シャーマイスター准将は、軍の教育総監だ。彼は過去いくつかの過ちがあったと認めた。しかし今は軍人ラビとの関係で良いバランスが保たれていると言う。
 彼は、イスラエル軍の司令官が唯一、兵士らの士気の責任を持っている者だと強調した。
 「イスラエル軍の規範コードは明瞭だ。我々は兵士をこの規範コードに照らして審査するのであり、宗教的なものを使うことはない」と語った。
 シャーマイスター准将の前任者は、軍の内部で警戒すべき変化があったことを証言している。
 ネヘミア・ダガン予備役将軍は、軍におきていることはイスラエル人の多くが思うよりはるかに危険なものであると語る。
 「我々兵士は、我々自身の考え方は脇において、やるべきことをやることができた。我々自身が宗教的かキブツ出身かは問題ではなかった。しかしもうそういうわけにはいかなくなった」と言うのだ。「戦場での士気は宗教的権威からもたらされることはない。もしそれがなされれば、それは“聖戦”となってしまう。私は人々がこの言葉を好まないだろうということを知っている。しかし現実はそうなりつつある。一旦聖戦となれば、限界がなくなる。多くの宗教的なユダヤ人は、ガザ侵攻時なされた説教の内容に反対だ。彼らはユダヤ教の正しい教えを曲解させると共にイスラエル軍の規範コードと矛盾する考え方を押し付けている」と語った。

 日々、イスラエル軍は市民のいる領域、ガザや西岸、東エルサレムで任務についている。イスラエル兵がさらされている影響力は大変重大な内容を持っている。
 ここに住んでいるパレスチナ人に対する彼らの姿勢は、彼らが使用する武力と兵器に影響を与えることになりそうだ。

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経済から宗教まで、時代の先を読み解くための作業を人間活動のあらゆる分野にメスを入れて行います。
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