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新疆ウィグル自治区

◆7月13日

 ここ数週間、新疆のウルムチでの暴動が報じられている。多民族国家の中国はこの少数民族問題が毎年のように噴出している。今回のウィグル族と漢族との衝突・暴動は、中国政府の不安をかきたてた。胡錦濤国家主席はG8を欠席し対策のため急遽帰国した。ウィグル族のような不満は他の民族も共有しているものであり、このような民族間の衝突が起きれば、それが他の地方・民族に飛び火することも考えられるからだ。

 このような動きは、近代の歴史発展と相似性を持つものである、と指摘しているのが、日本国家戦略研究所のサイトに載っている、「近・現代史の相似性とその教訓」の中の中国編だ。
 その教訓としては、「どんなに軍事力を現代化して覇権国家を目指しても、その精神における現代化すなわち人権や自由民主主義的な体制を無視し続ければ、結局社会矛盾を解消することはできず国の内側からの騒乱が国家を揺るがすことになりかねないであろう」としているが、同感だ。「このように中国が真なる近代化を果たすまでは中国内部に根本的問題を抱えていることになり、それが中国の命取りになる可能性があると思われるのである」と結論を出しているが、今回のウィグル族弾圧のような動きはこれから大きくなりこそすれ、小さくなることはないであろうから、我々はやがて「第2辛亥革命」のようなものが、起きるものと考えておくべきであろう。

 特にウィグル地域には豊富な資源が埋蔵されていて、それがパイプラインで東部産業地帯に送られ、そこの発展は素晴らしいものがあるが、ウィグル人から見れば、自分たちの父祖の残した財産が勝手に奪われている、としか映らないであろう。
 その石油の精製所で昨日爆発があったという。単なる街中に繰り出すデモ・暴動から、中国の大動脈を狙った破壊工作、という次元に闘争がエスカレートしだしたのかもしれない。これが中国共産党独裁政権の瓦解の始まりでない、と誰が言えよう。


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●近・現代史の相似性とその教訓
http://www11.plala.or.jp/jins/newsletter2005-5.files/senryaku.htm

2.中国編

■清国の太平天国の乱と洋務運動および軍事力拡大

 時代は120年目より更に30年遡った150年ほど前になるが、清国に太平天国の乱が起きた。広東省の客家(はっか)出身の洪秀全はキリスト教的色彩を持つ宗教結社上帝会を創始し、1851年に挙兵した。彼等は太平天国の建国を宣言し、洪秀全自らは天王と称した。「滅満興漢」をスローガンとし清朝打倒を目指し南京を占領し首都とし天京と名づけた。結局この太平天国の乱は鎮圧されることになるのだが、その後も彼等の残党やその他の宗教結社、例えば白連教系結社の会党、あるいは小刀会など、あるいは民族系のグループの反乱などが継続しておきた。これら宗教結社による騒乱は1900年には義和団事件となって再び世界史を揺るがすようになる。
 太平天国の乱の鎮圧に活躍した曾国藩、李鴻章、左宗棠などの郷勇は軍需産業を中心とする近代的工場の設立、海軍の創建、鉱山の開発、鉄道の敷設、外国語学校の設立などを推進し、特に李鴻章は北洋艦隊、左宗棠は福建艦隊を創設し、時の清朝政府が進めていた「洋務運動」に貢献した。この運動は度重なる西欧諸国の侵略からの教訓として排外主義を転換して、外国との和親や西欧の進んだ技術の摂取に努め近代産業の育成と富国強兵をもって国家体制の再建を図ろうという試みであった。これら一連の近代化の動きは「中体西用(中国の伝統文化と国制を本体とし、これを支えるために西洋の技術を利用するという意味)」をモットーとした。従って、近代的議会政治や自由民権などの日本の動きとは異なる内容であった。ただし北洋艦隊の定遠、鎮遠の2隻の装甲艦が当時世界最大の戦艦であったように、軍事面では大いに力をつけ日本にとっても一大脅威となっていった。


■中国の法輪功問題と開放政策および軍事力拡大
 今から13年ほど前の1992年5月、法輪功の創始者である李洪志により法輪大法なる宗教的教義が世に出た。教えを実践すると病気治療、健康保持に高い効果があるということと、「真・善・忍」の提唱により、多くの人に伝えられ、瞬く間に中国大陸に広がって96年には数万人の学習グループとなった。そのため中国政府から危険視され1996年には禁止され関連書物の出版も禁止された。これに対して北京で1万人ほどの抗議デモが起こり、これに対して中国政府は1999年に全面禁止を決定したため李洪志氏はニューヨークに亡命した。現在法輪功は中国共産党を倒すことを目指して活発な活動を世界中で行っている。
 1978年12月の11期3中全会において、改革と対外開放政策が鄧小平のリーダーシップの下で決定された。この改革政策は農村部から始めら経営自主権を保証し、生産意欲向上を目指すことが決定されている。都市部の改革は、80年代半ばから始まり、企業自主権の拡大など経営形態の改革が進んだ。90年代に入ると経済成長はさらに加速したが都市と農村、沿海部と内陸部の地域格差は逆に深刻化し農民の不満は増大している。外資の積極利用が奨励され広東の深セン、福建省の厦門などに経済特別区が設置され、続いて、上海、天津、広州、大連などの沿海開放都市が設置された。華僑や欧米資本を積極的に導入することで、資本や技術の移転など成し遂げようとしている。
 これと平行して80年代から「量」から「質」へ軍事力の転換が進められている。陸軍を中心とした兵員の削減を進めると同時に核、ミサイル戦力、海、空軍を中心とした全軍の近代化が進められている。80年5月には大陸間弾道ミサイルを発射実験に成功し82年10月には、潜水艦に搭載して、潜航した状態で弾道ミサイル(SLBM)を発射する実験、数年後には原子力潜水艦(SSBN)からの発射実験に成功した。さらに84年には静止衛星を打ち上げた。また台湾を威嚇し攻撃できる移動式の短距離弾道ミサイル(SSBM、「東風11」「東風15」)、日本をはじめとして中国周辺諸国を威嚇し攻撃できる移動式の中距離弾道ミサイル(「東風21」)を配備するところまで進んでいる。東シナ海で海洋調査活動を実施している背景には、海底石油開発のほかに、中国海軍の原子力潜水艦が東シナ海から太平洋に進出する通行ルートを求めている現実がある。国防費は2004年(約2100億元)には1994年(約550億元)の4倍近くになり大幅な増加が見られる。しかしこれとて実際の総額から見ると一部と考えられている。

<教訓>
■中国編
 清国は洋務運動を通して軍事力を拡充し朝鮮に対する介入を強めたが、そのために朝鮮の独立主権問題を中心として日本との間に戦争が起こり敗北したように、朝鮮半島問題で北朝鮮や韓国に対する接し方を間違えるとアメリカの厳しい対応に遭遇するかもしれない。アメリカの脅威の当面の対象国として中国が挙げられていると言われる状況があるのだから、中国本土以外の場所に対する中国の著しい進出はアメリカの注意を喚起するであろうし、場合によってはそれを阻止する目的でアメリカの中国に対する軍事行動があるかもしれない。日清戦争で清が負けたのは、外的な軍備は近代的なもので装備してあったとしても、それの扱い方またそれを扱う人間、つまり提督、将校、兵士などが軍備と同じような近代化された精神や文化、ノウハウを持っていなかったからと思われる点、根本的には「中体西用」という考え方自体が間違っていたわけである。
 これは現代に当てはめれば、どんなに軍事力を現代化して覇権国家を目指しても、その精神における現代化すなわち人権や自由民主主義的な体制を無視し続ければ、結局社会矛盾を解消することはできず国の内側からの騒乱が国家を揺るがすことになりかねないであろう。
 かつて義和団事件が起きたが、これは西欧の特にキリスト教の宣教師などの影響からそれに反発する農民などが主体となっての宗教的グループによる騒乱であった。現代風にみれば、西欧からの投資などで急激に金持ちになった層に対する反発が農村部などに存在し、頻繁に反政府的な騒乱が生じている姿に似ていると言えよう。また法輪功は世界各地で活動を展開しており、最近彼らが発表した「九評共産党」によって共産党の問題点が明らかにされ、ために共産党を脱退するものたちが後を絶たない状況と言われている。
 また100年前の中国では清朝政府の中から袁世凱を中心とする新軍が大きく勢力を伸ばし、1911年には孫文の辛亥革命がおこり、そこから動乱の中国が現出し軍閥の盤踞する分裂の時代へ入って行った。これは人民解放軍に対する中国共産党の統制があまり利かなくなり解放軍自体が独立的な勢力となり、さらに日本やアメリカなどに亡命していた孫文のように、アメリカに亡命している法輪功の指導者である李洪志などが革命家として孫文のような働きをするようになることを予想させるものである。そうするとその後は中国が再び分裂するような事態も考えられる。
 このように中国が真なる近代化を果たすまでは中国内部に根本的問題を抱えていることになり、それが中国の命取りになる可能性があると思われるのである。


●ウルムチ市の石油精製所で爆発 公安局は違法集会を禁止
【7月12日 CNN】
 中国新疆ウイグル自治区ウルムチ市にある中国石油天然ガス集団公司の石油精製所で、12日午前に爆発があり、消火活動で正午前に鎮火した。国営新華社通信が伝えた。
爆発の原因は不明。死傷者は出ておらず、当局は現在爆発について詳しく調査中という。 一方ウルムチ市の公安局は11日、警察の許可なく集会を開催することを禁止した。集会や公道でのデモ行進、屋外の公の場所での集会を許可なしに開催することを容認しないとしており、騒乱から1週間を前に現地には厳戒態勢が敷かれている。


●新疆:中国のエネルギー玄関口
http://www.atimes.com/atimes/China_Business/KG10Cb01.html
【7月10日 AsiaTimes】
 ソ連崩壊後の中央アジアとカスピ海地域に向けた地理経済的な影響力の発信点である中国の西部地域の新疆で、とりわけ首都ウルムチで、15年にわたる開発と変化の後、騒乱が起こった。
 カリフォルニア州の3倍以上になる広大で、中国の核実験の基地として知られているこの地域は、隣国からのパイプラインが敷設されているため、また、自国の東部工業地帯のためのエネルギー・鉱物資源の産出地であることで、より重要さを増してきている。
 中国政府はこの新疆ウィグル地域に向けて漢族の移住を促進してきた。
 自治区となっているこの地域の資源開発のため、原住民であるウイグル族には中国の他の地域に移るよう経済的なインセンティブが与えられた。
 西部の高地を貫く新しい高速道路が、国際的な貿易を促進し、同時に政府の締め付けも強化された。アフガン、カザフスタン、キルギス、タジキスタン、およびインド・パキスタンの両サイドのカシミール停戦ラインと新疆は国境を接している。その他にはモンゴル、ロシア、チベット自治区と接している。
 中国石油天然ガス総公司(CNPC)は、新疆には確認埋蔵量17.4兆立方フィートの天然ガスがあるという。ただし地理的に困難でしかもしばしば大変な深度にあるため、どれだけの量を採掘できるかはっきりしない。1990年代、欧米のエネルギー関連会社が高い試掘料を支払って喧伝された石油を試掘してみたが、何も噴き出さなかった。
 それでも、中国の関係筋では、新疆は中国で生産している石油生産量の7分の1になり、原油埋蔵量の4分の1になるという。また石炭の5分の2が存在している。
 2005年に運転が開始された西東ガスパイプラインは、新疆のタリム盆地の資源を4000km先の上海に送っている。これにより中国は石炭に依存する度合いを減らすことができ、現在の住宅用電気を発電している石炭をガスに換えることを目指しているが、新しい石炭発電所が急速に建設されているのは、低価格なのと需要が大きく、待っておれないからだ。 昨年の公式の統計上の推定では、中国国内でのガス需要量は、990億立方メートル(bcm)と見られいてるが、国内生産量は800(bcm)である。天然ガスは世界では、2007年のエネルギー消費量の平均25%を占めているが、中国ではたった2.5%を占めているに過ぎない。
 インドは、イラン・パキスタン・インド天然ガスパイプライン構想から辞退したのだが、中国は、イラン・パキスタン・パイプライン構想に興味を示し、パキスタンを通過させ、新疆に連結するルートを提案している。
 西東ガスパイプラインは 12 bcm /年の量を運んでいる。この量は17 bcm/年に増大することが計画されている。第2パイプラインは、9000kmの長さで、新疆の北西部から2008年の始めに建設が開始された。第1パイプラインと並行して建設され、甘粛省に連結され、更にその先では広州に向かう。
 この第2パイプラインは30 bcm/年が予定され、そのほとんどはウズベキスタンとカザフスタンを経由する建設中のトルクメニスタン・中国パイプラインから供給される。第3、第4、第5までのパイプライン構想が持ち上がっている。
 これらの開発は10年前発表された「ゴー・ウェスト」計画に沿ったものだ。この計画では、新疆だけでなく、チベットも開発する計画にいれている。このチベット高原には驚くべき鉱物資源が眠っていて、この地域に昨年鉄道が敷設された。これを今後数十年にわたる中国の経済発展の推進力になりうるものだ。
 このゴー・ウェスト計画は、もともと  1989年の天安門事件の10周年で導入された年間を通じて行われた治安対策キャンペーンの「強打作戦」と並行して導入されものだ。このところ数週間続いているウイグル族の抗議運動は、新しいものではないし、鎮圧されもしない。
 中国政府はこのような不満をこの地域での移住政策で悪化させている。これは第2次世界大戦中にスターリンがチェチェンで行った強制移住とは違うが、公式的ではなく程度において多少緩和されたものという違いだけがあるだけだ。
 東部の漢族の本拠地での騒乱の脅威があることを考えれば、最近の156人の死者を出したウイグル族と漢族との間の暴動は、当局の人心の不満に対する不安を更にかきたてることになるだろう。
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